登山は遭難や雪崩などのリスクを伴いますが、自然の中で体力や判断力など様々な力を身につけることの出来る場であるということから、国は去年から8月11日を「山の日」と定めました。
そして、今年の記念行事は那須町で行われることになっています。
そうした中、報道によると、3月27日午前9時20分頃、栃木県那須町のスキー場で春山登山の安全講習会を受けていた高校生たちが雪崩に巻き込まれ、栃木県立大田原高校・山岳部の生徒ら8人(生徒7人と教員1人)が死亡するという痛ましい事故が起きました。
インターハイの常連の登山部を指導するなど、経験が豊富なはずの教師たちが引率していたので雪山での雪崩など事故へのリスク対応策はそれなりに取られていました。
しかし、4月3日(月)放送の「あさチャン」(TBSテレビ)でこの事故を人災と思わせるような内容を報じていたのでご紹介します。
関係者によると、今回の訓練の中で座学が初日にあり、山の魅力をテーマに学ぶことになっていましたが、雪崩に巻き込まれた際の対処法の説明はなかったといいます。
雪の中に埋まってしまった場合、呼吸の確保をする方法として、両手で口を覆うなどして空間を作って窒息を防ぐ方法があります。
また、今回の事故で生き埋めになって救出された大田原高校の16歳の男子生徒の父親は朝日新聞の取材に対して、次のようにおっしゃっています。
「息子は片手だけが動かせたので、少し空間をつくり、口の周りの雪を食べて溶かし、呼吸が出来るようにしたようだ。」
「とっさの判断で、その後1、2時間ぐらい待って、助け出された。」
なお、この生徒は救出後に他の生徒を掘り出すのを手伝ったといいます。
また、4月3日(月)放送の「時論公論」(NHK総合テレビ)によると、生徒や教員は、雪に埋もれたときに居場所を発信する「ビーコン」という機器を持っていませんでした。
主催者は、今回の訓練はそもそもビーコンが必要になる危険な訓練ではないという認識だったということです。
今回ご紹介した、実際に雪崩にあって雪の中に埋もれてしまった場合の対処法は、まさにコンティンジェンシープランです。
せめて事前の講習会で雪の中に埋まってしまった場合の呼吸を確保する方法を教えていればと悔やまれます。
雪山登山に限らず、どんなに現場の状況を確認しても、時には判断の誤りが発生したり、気象の激変など想定外の状況が起こり得るものです。
そうした状況への対応策を事前に教えておくことによって多くの命を救うことが出来るのですから、少なくともコンティンジェンシープランも含めた必要最低限の対応策について、登山にあたっての安全講習会では取り上げるべきだと思います。
また、こうした災難は登山に限らず、海においてもあります。
例えば、海では場所によって潮の流れがあります。
そうしたところで泳いでいると、沖に向けた潮の流れに流されてしまうことがあります。
そうした時に、パニック状態になってしまうと、体力を消耗して溺れてしまう危険性があります。
このように、私たちの暮らしの中でレジャーやスポーツを楽しむうえで、様々なリスクが存在しています。
ですから、学校教育などで海や山のシーズン前に基本的なリスク対応策やコンティンジェンシープランを教えることによって、貴重な命を救う可能性を高めることが出来ると思うのです。