2017年03月04日
プロジェクト管理と日常生活 No.478 『アメリカの”入国禁止”大統領令の即時停止に見る三権分立の重要性』

世界に波紋を広げるアメリカのトランプ大統領による“入国禁止”の大統領令についてはいろいろと報道されています。

ここでは、2月4日(土)と2月5日(日)放送のニュース(NHK総合テレビ)での内容をご紹介します。

 

1月27日、署名した大統領令で中東など7ヵ国の入国を一時的に禁止するなどしていたトランプ大統領、各地で反発が強まる中、ワシントン州の連邦地方裁判所がこの大統領令について全米で即時停止するよう命じる仮処分を決定しました。

これに対し、入国禁止令はテロ対策としての必要性をあらためて強調し、アメリカ政府はただちに仮処分の効力を停止するよう申し立てる考えを明らかにしました。

トランプ大統領は、公の場で次のようにおっしゃっています。

「アメリカ国民の安全を確保することが私の責任だ。」

「それがテロリストを国に入れないための大統領令に署名した理由だ。」

 

「アメリカは国境の管理を取り戻す。」

「犯罪者がこの国で大混乱を引き起こす日はもう終わりだ。」

「激しい入国審査を行い、少しでも問題があれば入国は認めない。」

 

この大統領令をめぐっては、全米各地で提訴の動きが相次ぎました。

その一つが西部ワシントン州です。

1月30日、州自らが連邦地方裁判所に即時停止を求めました。

ワシントン州は、IT企業が集まる地域として知られ、マイクロソフトやアマゾンなど大手企業が本社を置いています。

ワシントン州は訴状の中で、企業に多くの移民や難民が雇用されているが、高い専門性を持つ労働者が確保出来なければ世界での経営に痛手になるとしています。

2月3日、連邦地方裁判所はこれを認め、全米で大統領令の即時停止を命じる仮処分の決定を出しました。

連邦地方裁判所は決定の理由について、大統領令は雇用や教育、経済活動に悪影響を与えており、被害は重大で今も続いているとしています。

訴えを起こしたワシントン州のファーガソン司法長官は、公の場で次のようにおっしゃっています。

「法廷で最終的に重んじられるのは憲法だ。」

「トランプ大統領の憲法に反した大統領令を差し止めるものだ。」

 

連邦地方裁判所の仮処分の決定について、ホワイトハウスのスパイサー報道官は、次のような声明を発表しました。

司法省は早急に裁判所の決定の執行停止を求め、大統領令を守るつもりだとして、裁判所に不服を申し立てるとともに仮処分の決定の効力が既に生じていることからただちに効力を停止するよう求める考えを明らかにしました。

 

大統領令は最高裁判所が違憲と判断すれば無効になりますが、今回の決定はワシントン州の裁判所による仮処分です。

なお、この仮処分の決定を受けて、トランプ政権はカリフォルニア州の連邦控訴裁判所に効力を停止するよう申し立てていましたが、2月4日、控訴裁判所はこれを退ける決定を出しました。

従って、大統領令の停止は続くことになりました。

今後の行方を握るのは首都ワシントンにある連邦最高裁判所です。

申し立てをこの連邦最高裁判所が認めれば、大統領令は再び効力を持つことになります。

今回のケースでは、最終的に最高裁判所まで争うことになると見られています。

 

こうした状況について、アメリカ政治に詳しい慶応大学の渡辺 靖教授は番組の中で次のようにおっしゃっています。

「これ(仮処分の決定)は、政権にとっては打撃になると思いますね。」

「行政府と司法府の対立につながる可能性はあると思いました。」

「アメリカは三権分立ですので、司法が行政をチェックする役割を担っていますので、トランプ大統領といえども大統領令を通して様々なことを実行するといってもそこにはやはり司法の壁が存在するんだと。」

 

さて、アメリカ国内ではこの“即時停止”の仮処分の決定に喜びの声がある一方で、世論調査によれは国民の約半数が大統領令を支持しているという結果も出ています。

 

トランプ大統領は、大統領令は正当だとしていますが、もたらされた混乱はアメリカの政治と社会の分断がもはや癒しがたいほど激烈になっていることを示す結果となっています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

トランプ大統領は、良く言えば大統領選での公約を就任早々矢継ぎ早に実行に移してきました。

しかし、その極端で乱暴な物言い、そして今回ご紹介した大統領令には多くの人たちが法的にみて疑問を感じるといった状況が続いています。

こうした中で、トランプ大統領の暴走を食い止めているのは三権分立という制度です。

ちなみに、三権分立は18世紀にフランスのモンテスキューにより唱えられ、これを体現したのがアメリカ合衆国憲法といいます。

 

今やいずれの民主主義国家においても、憲法の基本は三権分立です。

そして、今回ご紹介した”入国禁止”大統領令に対して、即座にワシントン州の連邦地方裁判所が全米で即時停止するよう命じる仮処分を決定しました。

このように三権分立の憲法制度がトランプ政権の暴走を食い止めているのです。

 

ということで、アメリカに限らず、いずれの民主主義国家においても三権分立は時の政権の暴走を食い止める法的なリスク対応策と言えます。


 
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