昨年12月18日(日)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で世界が注目する”和”の職人技について取り上げていたので2回にわたってご紹介します。
1回目は、魚の調理法を極めた魚屋さんについてです。
2013年に、ユネスコの無形文化遺産に登録された和食、 海外での人気はますます高まっています。
海外の日本食レストランの数は、この10年余りで4倍近くに増えました。
こうした中、和食文化を担ってきた職人の技に、海外から注目が集まり、新たなビジネスの動きが広がろうとしています。
世界がほれ込んだ和の職人技とは、どんなものでしょうか。
世界の高級料理店が集まる香港、 激戦区で唯一、ミシュランの3つ星を獲得しているすし店に魚が届きました。
この魚が水揚げされたのは、静岡県焼津市、 江戸時代初期から漁業で栄えてきた港町です。
香港に魚を送ったのは前田 尚毅さんです。
前田さんのもとには今、香港のほか、シンガポールやニューヨークなどの高級店から注文が舞い込んでいます。
すべてのレストランのメニューを把握しているという前田さん、その調理方法に合うように、一匹ずつ魚をさばいて各国に送ります。
しかし、輸送時間が長い海外へそのまま送ったのでは鮮度が落ちてしまいます。
ここで前田さんの技がさえ渡ります。
前田さん、魚に塩を振りました。
すると、いきなり魚の身が動き始めました。
塩で水分が抜け、身が収縮するのです。
この脱水締めと呼ばれる技、腐敗につながる水分を抜いて、長持ちさせるとともに、うまみを封じ込めるのです。
魚の状態や料理の種類によって、塩の振り加減を微妙に変えます。
魚の切り身に塩を塗すと塩分で水分が抜け、魚の味が体内に封じ込められるのと同時に、細胞が痙攣を起こし、ヒクヒクとあたかも生きているがごとくに動くのです。
こうした効果が最も働くためのまな板の角度まで研究を重ねてきました。
まな板の角度にまで気を配り、抜き出す水分を自在に操ります。
7年の歳月をかけて、伝統的な塩の締め方を独自に進化させた前田さんですが、まだもの足りないといいます。
前田さんは、魚の目利きにも妥協を許しません。
ある日、数十匹のハナダイの中から、ある1匹に目を付けました。
なんと1匹のために、ほかの魚と一緒に箱ごと競り落としました。
さばいた魚は空輸され、翌日香港に。
前田さんの魚にほれ込んでいる料理長、 魚へのこだわりを進んでお客に伝えます。
前田さんは今、地元の料理人たちに自らの技を伝え、静岡の魚を世界のブランドにしたいと考えています。
前田さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「記憶に残る魚にしたいですね。」
「日本の鈴岡というところからから来た魚がおいしかったっていう海外の方から印象に残る、記憶に残る魚を伝えていきたいと思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
まず、魚の切り身に塩を塗すだけで、魚の味が体内に封じ込められること、そしてまな板の角度にまで気を配り、抜き出す水分を自在に操ることが出来る前田さんの技に驚かされます。
しかも、伝統的な塩の締め方を独自に進化させた前田さんはまだもの足りないといいます。
こうした前田さんの魚の調理にかける熱い想いには、こうした方こそプロフェショナルなのだと感じてしまいます。
機会があれば、是非前田さんの調理した魚を味わってその美味しさを実感してみたいと思います。