2017年02月21日
アイデアよもやま話 No.3632 失業率に見る定義によって変わる現実!

日頃、私たちは失業率という言葉を耳にしています。

しかし、失業率の詳細な定義について気にする人はあまりいないと思います。

そうした中、2月3日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でアメリカの失業率について伝えていました。

そこで、番組を通して失業率の定義についてご紹介します。

 

マーケットが注目するアメリカの雇用統計がこの日発表されましたが、トランプ政権が発足して初めてとなる1月の雇用者数は市場予想を大きく上回る強い数字でした。

新政権への期待で景況感が改善したことが背景にあります。

1月の非農業部門の雇用者数は前月から22万7000人の大幅増加となり、市場予想の17万5000人を大きく上回りました。

ほぼ完全雇用に達して、20万人の大台に乗ることはないと見られていただけに、ポジティブ・サプライズと言えます。

そして、1月の失業率は前月より0.1%ほど増えて4.8%となりました。

しかし、賃金はあまり伸びていないといいます。

 

さて、トランプ政権になって雇用統計が少し変わるかもしれないという話があります。

実は、トランプ大統領はアメリカの失業率はもっと高いはずだと主張していて、選挙期間中には次のような驚きの発言をしておりました。

「失業率が4.9%とか5%なんて数字はうそっぱちだ、信じちゃいけない。」

「本当は42%だという話さえ聞いた。」

 

つまり、現在の失業率はアメリカ経済の深刻な実態を示していないと主張しているわけです。

ただ、こうした論争は以前からあるもので、最大の争点はどのような人を“失業者”と見なすかです。

アメリカの労働省は、公式の失業率データでは「過去4週間職を探したが見つかっていない16歳以上」を失業者と見なしています。

ですから、例えば職探しを諦めてしまった人たちは含まれていません。

トランプ政権はこうした人も含めた失業率を採用するかもしれないと言われていて、今日(放送日)の発表を見ると5.8%となっています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

トランプ大統領は「本当(の失業率)は42%だという話さえ聞いた」という過激な表現をしていますが、職探しを諦めてしまった人たちを含めた場合の失業率も無視出来ないと思います。

なぜならば、こうした見えないかたちの失業者が現状打破を期待して先の大統領選でトランプさんに投票したと思われるからです。

 

格差社会の問題解決を図るうえでは、職探しを諦めてしまった人たちを含めた場合の失業率を把握したうえでの取り組みが必要です。

そういう意味で、トランプ大統領の問題意識は当たっていると思います。

ただ、その解決策として、製造業の国内回帰、あるいは海外の輸出メーカーへのアメリカへの呼び込みという単純な図式では、本来のグローバル化の狙いから外れてしまいます。

 

ですから、トランプ大統領には「アメリカ第一主義」を掲げて短期的な成果を追い求めるだけでなく、経済のグローバル化を前提にしたうえでの失業率の低下、および格差社会の改善に取り組んでいただきたいと思います。

そういう意味で、暴走するトランプ大統領にうまく軌道修正を提言する閣僚の力量に期待がかかります。

 

なお、今回ご紹介した失業率の扱いについては、日本においても検討課題だと思います。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています