2017年02月17日
アイデアよもやま話 No.3629 個人間の仕事をマッチングする「エニタイムズ」!

シェアリングエコノミーについてはこれまで何度かご紹介してきました。

そうした中、昨年12月10日(土)放送の「クロスロード」(テレビ東京)で個人間の仕事をマッチングするコミュニティサービス「エニタイムズ(ANYTIMES)」について取り上げていたのでご紹介します。

 

「エニタイムズ」の歌い文句は「あなたの近所で「得意」を売り買いしましょう」で、犬の散歩やサンタクロース代行までどんな「得意」でもお小遣い稼ぎが出来る日本最大級のスキルサービスといいます。

例えプロでも副業なので価格はリーズナブルです。

運営するのは創業4年目、社員数11名(番組放送時)のベンチャー企業で、代表はこの仕組みを考案した角田 千佳さん(31歳)です。

パソコン相手の業務なのでWi−Fiさえあれば席を決めずとも仕事が出来るので、角田さんも含めて社員の席は自由です。

これには何かあった時に気軽に相談出来るといったメリットも角田さんは期待しています。

 

「エニタイムズ」は創業から4年目で会員数は増え続け2016年11月末時点で2万人に迫る勢いです。

その分ニーズもどんどん膨らみ新たな種類の依頼も増えています。

 

そのシステムは、英会話やメイクアップなど得意なスキルをサイト上で販売、これを買う人がいれば契約成立となります。

一方、家事代行やぺットの世話など仕事を頼みたい人は金額を設定してお願いします。

 

意外だったのは、プロのメイクアップアーティストが依頼者としてメイクと撮影をセットにした新たなサービスを始めるに当たり、格安でそのモニター募集に「エニタイムズ」を使っているのです。

その仕事を請け負う人がいれば契約が成立します。

そして、「エニタイムズ」には15%の手数料が入る仕組みです。

サイトにはこれまでの仕事の総合評価なども掲載されているのでリスクは最小限に抑えられます。

 

こうしたサービスは今注目を集めているシェアリングエコノミーの一つです。

場所、乗り物、モノ、人、お金など使っていない資産をシェアして有効活用する新しいビジネスのかたちなのです。

 

ちょっとビックリしたのは、経営者の角田さんご自身も週に1,2回は依頼者として、あるいはサポーター(依頼者からの仕事を請け負う人)としての仕事をしているのです。

こうしたことについて、角田さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。

「自分自身が使う立場になるユーザー自身というのは、こういうサービスを作っていくうえで非常に重要で、その気持ちにならないと出てこないアイデアだったりとか改善点とか分からないと思うんですよね。」

 

さて、角田さんは1985年に東京都杉並区に生まれました。

小学生の頃、日本人初の国連難民高等弁務官として世界をつなぎ、国際貢献を果たした緒方貞子さんに影響を受けました。

このことについて、角田さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。

「自分もやっぱり開発援助とか人道支援の仕事がしたいな。」

「こういう世界に影響を与えるような(人のためになる)事業をしたいなと思うようになって・・・」

 

いつか人の役に立つ事業を起こしたい、ビジネスの仕組みを学ぶために大学卒業後に大手証券会社に入社しました。

その後IT企業に転職、その時一人暮らしをしていて、あることに気付いたのです。

このことが「エニタイムズ」創業のきっかけとなったのです。

角田さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。

「便利屋さんとか頼んだりすることがあって。」

「私の周りの友人でも家政婦の方に来てもらっていて、個人の方だと会社に頼むのと違ってだいぶ安く頼めているを見ていたんですね。」

「その時思ったのが、もっと家政婦さんだったりとか、家具の組み立てとか出来る人って近所には沢山いるだろう。」

「そこを依頼したい人と空き時間で何か得意なことを活かして仕事をしたい人を合わせるようなマッチングするようなそういう仕組みって出来ないかと考えて・・・」

 

そこでお2013年、人と人とをつなげる新たなビジネスを展開すべく自己資金100万円で「エニタイムズ」を起業したのです。

創業から4年目、「エニタイムズ」のビジネスは注目を集め、大手IT企業やファンドなども出資、今や資本金は約3億2000万円にまで増えました。

 

また、東京中心ではなく地方にも「エニタイムズ」を広げたいと思っていた矢先に、市をあげてシェアリングエコノミーに取り組んでいる宮崎県日南市の市長から声がかかり、2016年8月1日に宮崎県日南市とお手伝いサービス協定を結んでいました。

「エニタイムズ」のサイトに日南市のページを作り、子育ての支援やシルバー人材活用のお手伝いをしていたのです。

既にいくつか実績も出ています。

地方への拡大、これが戦略です。

 

しかし、現実はそう簡単に動くものではありません。

「エニタイムズ」の拡大を目指し、ある日、角田さんは北原国際病院(東京都八王子市)を訪れました。

この病院は断らない救急医療や休日簡易ドッグなど患者目線の医療改革で今話題の病院です。

今回は就労支援、すなわち退院した患者さんの仕事を探すのに「エニタイムズ」を活用出来ないかと打ち合わせに来たのです。

「エニタイムズ」についての一通りの説明を聴いた後、北原 茂実理事長から思わぬコメントが出てきました。

「でも現場に入らなきゃだめなんだよ。」

「なぜかというとね、基本的に我々医療の人間には見えていることがあるんだよ。」

「あなたが考えていることは、本質的には幸せな人が考えていることなんだよ。」

「それで現実に何が起こっているか理解しなきゃいけなくてね。」

 

医療の現場を見て欲しい、もっと患者の身になって考えて欲しいと理事長から厳しい指摘がありました。

 

3日後、再び病院を訪ねた角田さんは、就労支援のボランティア活動の現場を初めて訪れました。

そして、自らも脳梗塞を患っている男性の話を聴くのでした。

この男性は、「エニタイムズ」の内容を一通り聴いた後、次のようにおっしゃっています。

「まず書けない、言葉は出ません。」

「この状態で出来ることを探すしかない。」

「(これからやりたい仕事はあるかという問いには、)ないです。」

「(それでも辛抱強く話を続けていくと、)これ集団でならいいの、個人じゃなくてグループでやりますよっていう。」

「もっと活動範囲を広げられる、こんな良い事はない。」

「これお金が発生する。」

 

こうして角田さんは、一人では無理でも仲間と一緒ならいろいろと出来るという前向きな提案を聴くことが出来ました。

このことについて、角田さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。

「今まで本当に困っている人たちのことは、正直何か想像でしか出来てなかったんだなと今日感じて、実際に希望を持てないと一番最初に言われて驚いて言葉が出なくなっちゃうぐらい結構ショックで。」

「でもだんだん話を聴いていけばいくほど、本当に希望を持っていないわけではなくて、こういう人たちを「エニタイムズ」のサービスを浸透させることによってどんどん希望を持ってもらったりとか、浸透させていきたいなと本当に思いました。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

これから日本は高齢化社会が本格化していきます。

また、母子家庭や一人暮らしも増えているといいます。

こうした中にあって、ちょっとしたことを気軽に低下価格で依頼出来るようなサービスがあればとてもありがたいと思います。

一方で、失業中で何とかお金を稼ぎたい人、非正規で働いており足りない分を何とか稼ぎたい人、あるいは正規の仕事に就いていても小遣い稼ぎをしたいと思っている人というような方々もいらっしゃいます。

そうした中にあって、「エニタイムズ」のようなシェアリングエコノミーの場は、何かを求めている側と気軽に収入を得たい側とを容易に結びつけるとても便利なサービスを提供していると思います。

ですから、シェアリングエコノミーは今後とも様々なかたちで普及していくと思われます。


 
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