2017年01月16日
アイデアよもやま話 No.3601 自動車をめぐる新たな動き その6 自動運転車がもたらす様々な影響!

2017年の年初にあたって、主に昨年後半にあった自動車をめぐる新たな動きについて8回にわたってご紹介します。

6回目は、自動運転車がもたらす様々な影響についてです。

 

5回目で自動運転車についてお伝えしましたが、自動車の完全自動運転化は自動車の利用者にとって劇的な変化をもたらすだけでなく、様々な業界に大きな影響をもたらします。

そのいくつかを以下にご紹介します。

 

昨年12月1日付けのネットニュースで完全自動運転車は自動車業界と損保業界などに大きな影響を与えると報じていたのでその一部をご紹介します。

自動運転車の実用化が現実的な段階に入ってきました。

自動運転車の普及は、自動車業界だけに関係する話ではなく、IT業界や保険業界、そして行政の分野にも大きな影響を与えることになります。

 

また、昨年12月5日(月)放送のニュース(TBSテレビ)では、自動運転車の普及がトラック輸送にも大きな影響を与えると報じていました。

仮に日本でトラック輸送が自動運転となった場合、一番のメリットは運輸コストの引き下げです。

運送費の38.8%が人件費といいます。(全日本トラック協会調べ 2014年度)

ネット通販の増大などから宅配便などの取扱量が増える一方、ドライバーの人数は2015年はおよそ80万人と2年連続で減少しています。

また、40歳以上のドライバーが70.8%(2015年)と10年間で急激な高齢化が進んでいて、今後更なる人手不足が懸念されています。

こうした中、トラックドライバーは仕事が無くなるのではという不安を抱えています。

一方、専門家の中にはトラックドライバーの仕事は無くならないという見方もあります。

その理由は、前回もお伝えしたように地方にはガードレールのない狭い道、消えかかった白線など、センサーで周囲を認識して走る自動運転車にとって厳しい道路状況があることから一般道での自動運転は相当難しいという指摘です。

 

また、昨年6月15日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、日本の自動車の稼働率は3%ほどなのでカーシェアリングが普及すれば自動車の販売台数は激減すると報じていました。

 

そして、昨年9月19日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で安全運転機能を持ったカーナビについて取り上げていたのでご紹介します。

昨年3月に発表された2016年度国内新車販売台数の見通しは約525万台でしたが、昨年9月15日に発表された販売台数の見通しは約484万台と大幅に下方修正され、前年度実績比1.9%減でした。(日本自動車工業会調べ)

このように新車販売は厳しい状況が続いていますが、その一方でカーナビの販売は好調といいます。

大画面化など要因はいろいろと指摘されていますが、今注目を集めているのは道路に潜んでいる危険を先読みして安全運転を支援する新たしい機能です。

カーナビの出荷台数(昨年4〜7月)は176万台と前年実績比11.3増と伸びているのです。(JEITA調べ)

中でも注目されているのがカロッツェリア製のカーナビ(AVIC-CZ900)に追加された安全運転支援機能です。

このカーナビに追加されるユニットは運転席の下に設置、バックミラーには前方の車両の位置を捉えるカメラ、画像認識技術が搭載されています。

前方の車両との距離が3mを切るとすぐさま警告音で知らせてくれます。

また、交差点では右折する時の“つられ発進”に対して注意を喚起します。

“つられ発進”とは、前の車両が右折するのにつられて対向車の確認をせずに発信することです。

対向車と衝突する事故が多いのです。

カーナビは、蓄積されたデータから、この交差点は右折時に“つられ発進”する可能性が高いと判断し、搭載されたカメラが前の車両の動きを捉えて前の車両が発進して2秒後に音で注意を喚起したのです。

その意味は、前の車両が発進してからおよそ2秒の間に対向車を確認すれば事故を防げる可能性が高いというものです。

なぜ2秒なのかですが、“つられ発進”した時に前の車両が発進してから1.5〜2.5秒の間に急ブレーキを踏む確率が高いというデータをパイオニアは持っていたのです。

パイオニアのデータセンターでは2007年から累計65億kmに及ぶ自動車の走行データを収集しているのです。

ブレーキを踏む頻度やその強さによって危険度を判断し、このデータセンターのパソコンの画面上には急ブレーキが踏まれたポイントを赤、そしてブレーキが緩かったポイントを薄い色と色分けして点で表示されています。

その赤いポイントは全国におよそ7600ヵ所存在します。

パイオニアでは、今後自動運転車の時代が到来してもこのビッグデータがカギを握ると考えています。

パイオニアの山下 元之さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「(自動運転の流れはカーナビメーカーにとってチャンスなのかという問いに対して、)そうですね。」

「地図がより高度化していかなければいけないと。」

「リアルタイムの道路の変化を捉えるということでいうと、画像のデータや実際のお客様の走行の結果とか、パイオニアじゃないと中々分からないんじゃないかなと思いますね。」

 

自動運転の実現に欠かせない次世代の地図を日の丸連合で作成しようという動きも始まりました。

昨年6月に設立されたダイナミックマップ基盤企画株式会社には、三菱電機や地図会社のゼンリン、大手自動車メーカー9社などが出資、2017年度中に自動車専用道路2万kmの3Dマップ作製を目指します。

 

自動運転の時代を見据えて、カーナビの時代は新しい段階に入っています。

この新時代におけるカーナビの要件として、番組では3Dマップ+アルファを挙げています。

3Dマップは絶対条件で、単なる道案内ではなくて道路の状況をより細かく把握する必要があるといいます。

問題はこれを満たしたうえで、プラスアルファをどこで違いを出すかですが、一つは情報提供といいます。

既に、カーナビには渋滞情報、注意喚起、観光情報、あるいは周辺のガソリンスタンドの位置など様々な情報が提供されています。

番組では、将来的には自動車が自宅に駐車してある時にも以下のような情報が送られてくるのではと予測しています。

・そろそろドライブに行きませんか

・今週末は天気が良さそうですよ

・ガソリンが今日は安いので給油したらどうですか

 

こうした情報提供も含めたカーナビ競争になってくるのでグーグルやアップルなどの情報提供プロバイダー参入してきているといいます。

 

以上、自動運転車の関連記事の一部をご紹介してきました。

 

ご紹介した内容からもお分かりのように、完全自動運転車時代到来のカギを握るのはリアルタイムで更新される精密な道路地図を搭載したカーナビなのです。

こうしたカーナビの搭載なしには、完全自動運転車の実用化はあり得ません。

ですから完璧な道路地図を制する者が自動運転車開発競争の戦いを制すると言えます。

ですから、こうした観点からのカーナビ業界、自動車業界、地図業界、センサー業界を巻き込んだ開発競争はこれから増々激しさを増すと思われます。

 

一方、完全自動運転車時代の到来を待たなくても、自動運転車の普及により自動車事故の発生件数は激減しますから、自動車保険の保険料もグンと安くなるはずです。

ですから、損保業界に及ぼす影響は大変大きいと思われます。

更に、自家用車のみならずバスやトラックなど全ての自動車が完全自動運転化されると、衝突事故はほとんど皆無になります

また、万一衝突事故が起きたとしても、ドライバーはいませんから事故責任は自動車メーカーが負うことになるはずです。

ですから、損保業界からすれば、自動車の完全自動運転化社会においては、契約者は自動車メーカーになり、衝突事故はほとんど皆無になりますから、契約金額は更に激減してしまいます。

 

次に、完全自動運転車時代の到来により、タクシー業界やバス、トラックなどの運送業界のドライバーの失業を招いてしまいます。

更には、こうした自動運転技術はやがて船舶業界や航空業界にも展開されていくと思われます。

一方利用者の立場からすれば、タクシー業界やバス、トラックなどの運送業界のコスト削減からタクシー料金や運送に係わる様々な商品の価格が安くなることが期待出来ます。

 

また、完全自動運転車時代の到来は、レンタカーやカーシェアリングを利用する際に、自宅に限らず利用者が希望する時間、場所まで来てくれるようになり、利用後も利用者の希望する場所に駐車することが出来るようになりますからこうした利用の際の利便性は飛躍的に高まります。

ですから、一人でのドライブや家族でのドライブなど用途に応じた車種を選んで乗ることが容易に出来るようになります。

例えば、一人でのドライブでは、行きは自らハンドルを握って運転を楽しみ、帰りは自動運転モードで自宅までゲームや映画を楽しむというような光景が目に浮かんできます。

更に、自動車免許が不要でも自動車を利用出来るようになりますから、特に高齢者にとっての移動手段として欠かせない存在になります。

また、レンタカーやカーシェアリングの運営も人手を介さずにITにより完全にコントロールされるようになりますから、利用料金も安くなるはずです。

ですから、完全自動運転車時代の到来は間違いなくレンタカーやカーシェアリングの流れを加速させるはずです。

一方で、こうした流れは自動車の販売台数を激減させると報じられています。

そうなると、下請け企業も含めた雇用の喪失、そしてGDPなど経済に与える影響はかなり大きくなります。

 

ここで思い起こされるのは、江戸時代の篭屋から明治時代の人力車、そしてその後の現在の自動車、電車、あるいは飛行機などへという移動手段の変遷です。

こうした時代の流れの中で、そのたびごと多くの人たちが仕事を失う一方で、新たな職業が誕生してきました。

ですから、完全自動運転車時代の到来も、多くの人たちが仕事を失う一方で、完全自動運転車を活用する新たなビジネスが誕生し、それ伴い新たな職業が誕生すると思うのです。


 
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