2016年11月04日
アイデアよもやま話 No.3539 世界初の歯周病治療!

これまで再生医療について何度かご紹介してきました。

そうした中、9月1日(木)放送の「日経プラス10」(BSジャパン)で世界初の再生医療による歯周病治療について取り上げていたのでご紹介します。

 

成人のおよそ8割がかかっているとされる歯周病は40代から発症するリスクが高まり、放っておくとひどい口臭の元となったり、歯を支えている骨が溶け、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。

ちなみに、歯周病には程度の軽い歯肉炎と重度の歯周炎の2つがあります。

現在の治療法では骨が溶け始めるとその進行を食い止めるのがやっとで、骨を元に戻すことは出来ません。

そんな歯周病にこれまでの常識を覆す世界初の治療法に挑んでいるのが大阪大学歯学部付属病院(大阪府吹田市)の医院長、村上 伸也さんです。

村上さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「(歯周病によって)今進んでいる破壊の時計を逆に動かして何年か前の状態に戻すことに挑戦しています。」

 

その治療法とは、患者自身から細胞を抽出して培養し、それを歯周病によって破壊された骨に移植し、再生させるというものです。

歯周病が進行しても、骨や歯茎の再生により自分の歯を失うことがなくなるかもしれない未来の治療法です。

 

さて、歯周病の進行プロセスはざっと以下の通りです。

歯そのものは歯茎と骨であごのところにしっかり直立していますが、口の中にあるバクテリア(ばい菌)が原因になって歯と歯茎の境い目に汚れを溜めてしまうとだんだん歯茎に炎症が起こって、歯と歯茎の間に隙間ができます。

これを歯周ポケットと呼んでいますが、これができてきて、そのまま放置しておくと次第に歯茎が駄目になって骨がだんだん痩せていって、遂に歯医者さんにかかることになったら歯を抜く治療をするということになります。

 

なお、歯周病を進行させる原因は以下の通りです。

・喫煙、糖尿病

・ストレス

・不規則な食習慣 など

 

ちなみに、糖尿病やストレスは身体の抵抗力が弱まる要因となります。

 

そこで、村上さんが取り組んでいる世界初の歯周病の治療法ですが、その具体的な方法はざっと以下の通りです。

  1. 歯周病の患者のお腹のおへその横辺りに少し切開を入れてお腹から脂肪(20〜30cc)を吸引する

  2. その脂肪の中から幹細胞を抽出・培養する

  3. その細胞を歯茎と骨が駄目になった箇所に移植し、失われた歯茎と骨を再生させる

 

ちなみに、治療手術は時間がそれほどかからず、局所麻酔なので患者さんと話しながら手術をすることが出来るといいます。

また、手術の方法は保険で行われているのと全く同じで、再生医療のために特別に開発されたものではないといいます。

今はまだ臨床研究の段階ですが、歯茎と骨の再生には手術後およそ9ヵ月のフォローアップが必要といいます。

なお、肝心の治療費については、まだ研究段階ということで未定ですが、目標は代替治療法として知られているインプラントの金額が大きな目標になるといいます。

ちなみに、インプラントとの大きな違いは自分の歯を使えるところにあります。

 

さて、歯周病の再生医療法として、従来から人工の保護膜を使用するGTR法、および豚の歯由来のタンパク質を使用するエムドゲイン法などいろいろありますが、こうした治療法よりも重度の患者さんに対して効果が発揮出来るようなものを目指したいと村上さんは考えておられます。

なお、実用化の目標は2,3年後といいます。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

自分自身の細胞を使った治療法が保険の適用内で歯周病に使われるようになればどれだけ多くの人たちが救われるか知れません。

ですから、是非ともこうしたかたちで国民病とも言える歯周病の治療法として少しでも早く今回ご紹介した治療法の実用化を目指していただきたいと思います。


 
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