ネット社会を背景に、”一人企業”は今やかなり普及しているようです。
そうした中、”一人企業”について２つの番組で取り上げていました。
そこで、番組を通して５回にわたってご紹介します。
４回目は、女性”一人企業”による大活躍の中で、驚異的な開発スピードの謎についてです。
ちょっと古い情報ですが、３月８日（火）放送の「ガイアの夜明け」（テレビ東京）のテーマは「“革命児が家電を変える！」で女性”一人企業”による大活躍について取り上げていたのでご紹介します。
前回、１７種類もの家電をわずか２ヵ月で完成させた株式会社ＵＰＱ（アップ・キュー）による驚異的な短期間での商品開発についてご紹介しました。
その社長は３１歳の女性、中澤 優子さんの”一人企業”というのですから驚きです。
今回は、その驚異的な開発スピードの謎についてご紹介します。
中澤さんは、週１回は中国との間を往復しています。
そのため、社長といえども片道１万６千円の格安航空（ＬＣＣ）を利用しています。
中澤さんのしょっているリュックは試作品でテストを兼ねて使っています。
重さ２０ｋｇで、毎日歩いて、中国にも行って、大丈夫となれば大概のことは大丈夫という考えです。
なぜ頻繁に中国に行くのか、そこに中澤さんのモノづくりの秘密があります。
中国・深圳、モノづくりの工場が集まるこの街に昨年１２月２８日にやって来ました。
朝一番にやって来たのは、オフィス代わりに使っているというカフェです。
席に着くなり、パソコンを開いて仕事、そこに一人の女性がやって来ました。
スマホを生産する会社の営業担当といいます。
新しいスマホの打ち合わせで、部品を手に細かい箇所を次々と決めていきます。
その交渉中、別のテーブルで待つのは次の取引相手です。
終わるやいなや次の交渉開始です。
持ってきたのはリュックのサンプル品です。
携帯電話を充電出来る機能付きです。
素材や縫製の出来を細かくチェックします。
次に来るまでに直してくれるよう約束しました。
こうした商談の仕方について、中澤さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「必ず結論を出すんですよ。」
「ペンディング（保留）は絶対にしないです。」
「ものを進める立場として、決めないと何も進まないんです。」
「あとは度胸ぐらいですかね。」
３０分ほどで２つの商談をまとめ、次の場所へ向かいます。
深圳から車で１時間半、やって来たのは様々な音響製品を専門に作っている会社、逸音電子科技の工場です。
世界中のメーカーから注文を受けてヘッドフォンやイヤフォン、スピーカーなどを生産しています。
中澤さんは、今年２月に第二弾の製品を一斉に発表したいと考えていました。
ここで作るのはスマホなどの音楽をワイヤレスで聞けるヘッドフォンです。
カラーサンプルを当てながら細かく確認していきます。
音も大事だけど、自分のブランドは色も重要だと、簡単に妥協しません。
小さなブランドのＵＰＱ、商品を手に取ってもらうためには色が重要なポイントであることを訴えます。
１月中にサンプルを作ってもらうことで決着しました。
中澤さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「普通の日本の家電メーカーでいうと、１０万台作らないと作る価値がないと捉えられちゃうところを、今中国の工場は２００個とか１５０個でも作ると言ってくれたりとか、エンジニアたちも「こういうモノを作りたいんだよね」と言うのに対してモノを作ってくれる。」
１２月２９日、中国・深圳、次に向かった会社、集得栄精密科技の工場、そこには２月の製品発表会でどうしても目玉にしたいモノがありました。
それはとてもスマートな電動バイクです。
超小型で、折り畳んで持ち運びが出来ます。
早速、その試作車に乗ってみます。
電気で動く乗り物がもうちょっと簡単に手に入ると世の中が変わってくるし、面白いんじゃないかという想いで製品化を進めているのです。
この工場の本業は、メッキなど金属製品の加工、主に下請けで自動車の部品を作っています。
しかし、ここ数年中国の経済成長が鈍り、メーカーからの注文が減って来て、動いていない機械も見受けられます。
そのため新たな分野に進出しようとバイクの開発を進めていました。
そこに中澤さんが目を付けたのです。
工場にとっても大きなチャンスでした。
女性のＣＥＯ、万 華さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「日本人の安全や品質への要求はとても高いわ。」
「だから日本市場に進出することが出来れば、世界のどこでも受け入れられると思うんです。」
しかし、問題がありました。
ナンバープレートがしっかり固定されていません。
また、ウインカーの間隔は３０ｃｍ以上離れていないと日本の法律では走れません。
すぐに改良してもらうことにしました。
２月６日、東京・秋葉原、中国で交渉してきたヘッドフォンの試作品が届いていました。
しかし、あれだけ話し合ったのに、サンプルで送った色と違っていました。
２月２２日、再び中澤さんは中国・深圳に乗り込みました。
このままでは新製品発表会に間に合いません。
ヘッドフォンの担当者を呼び出し、どうにか間に合わせてくれるように念押ししました。
その足で、電動バイクの工場を訪れると、こちらも作業が大幅に遅れていました。
一つずつ細かくチェックしていきます。
新製品の発表会まであと１週間、中澤さんは気が気ではありません。
２月２９日、東京・秋葉原、ＵＰＱの新製品発表会がありました。
この日、ブランドの新たなカラーをまとった１２種類の新製品を発表しました。
あのヘッドフォンも間に合っていました。
イメージ通りの色です。
しかし、目玉商品である電動バイクは間に合わず、コンセプトだけの紹介に止まり、３月に正式に発表することにしました。
たった一人でのモノづくり、今こそチャンスだといいます。
中澤さんは、番組の最後に次のようにおっしゃっています。
「「日本のモノづくり、低迷しているよ。頑張っているけど無理だよ。」とマイナスに向いても、いやいや違うよと旗を振って、もっと面白い仕掛けをしていくかを考えていかなきゃいけないなと思っています。」
ちなみに、番組では、総合家電メーカーの三洋電機がパナソニックに買収され、やがて洗濯機や冷蔵庫など一部の部門が２０１２年に中国の家電メーカー、ハイアールに売却されてできた新会社、アクア株式会社による新製品の開発状況についても取り上げていました。
洗濯機では、オゾンの力で除菌・消臭する水や洗剤を一切使わない洗濯機、筒状の世界最小の洗濯機、あるいは透明な洗濯機です。
また冷蔵庫では、世界初の移動式ロボット型冷蔵庫、あるいはドアの全面が液晶パネルになっている冷蔵庫です。
そのどれもが今までにない斬新なアイデア商品です。
以上、番組の内容をご紹介してきましたが、ＵＰＱの驚異的な開発スピードの謎の一端を垣間見ることが出来ました。
開発商品に対する品質やカラーに対する妥協を許さないこだわり、適切な開発計画、開発期限へのこだわり、会議の進め方、即断即決など、これから“一人企業”やベンチャー企業を立ち上げようとしている人たちには大いに参考になると思われます。
番組で取り上げられていた電動バイクにちょっと興味が湧いたので、ＵＰＱのホームページで確認してみました。
既に販売されており、フル充電での後続可能距離はカタログ値で約３５ｋｍといいますから、実際の走行距離は２５ｋｍ前後だと思います。
ですから、天気の良い日のちょっとした外出には適していると思います。
また、持ち運びし易い超小型＆超軽量のボディなので自動車のトランクに入れて、旅先などでの移動手段としても楽しめると思います。
ちなみに、価格は１２万７千円（税抜き）です。
さて、中澤さんの驚異的な活動について、いくつか疑問が湧いてきました。
なぜ一人の若い女性がいくつもの魅力的な商品のアイデアを思い付いたのか、どのように生産を委託する中国の工場を探し出したのか、どのように開発資金の手当てをしたのか、あるいは使用方法や修理などの問い合わせ窓口対応はどのように処理しているのかなどです。
いずれにしても、番組を通して感じられた中澤さんのアイデアと行動力からすれば、まだまだこれからもＵＰＱブランドの魅力的な家電商品が市販化されると思うので、どのような商品が生まれてくるのか楽しみです。
