ネット社会を背景に、”一人企業”は今やかなり普及しているようです。
そうした中、”一人企業”について2つの番組で取り上げていました。
そこで、番組を通して5回にわたってご紹介します。
2回目は、”一人企業”でも可能な画期的な商品開発についてです。
7月26日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で”一人企業”での画期的な商品開発について取り上げていたのでご紹介します。
”一人企業”という新たな働き方は広がりを見せています。
元ソニーの技術者、野口 不二夫さんもその一人です。
野口さんは、ソニーの電子書籍端末「リーダー」(2010年発売)の開発責任者を務めていました。
ソニーの技術陣の中でもトップクラスの実績を誇っていた人物なのです。
ところが2年前、56歳の時に退職し、たった一人で起業しました。
仕事の拠点は自宅とシェアオフィスです。
野口さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「人をいっぱい雇ってしまうと、その人のために仕事を作らないといけない場合があるので、それをやっていると非常に動きが悪くなるだろうなと思った時に、参考にしたのがハリウッド映画の作り方なんですけども。」
イメージしたのは、企画ごとに一流のスタッフを集めるハリウッド方式です。
ソニー時代に手掛けた製品を超えることが新たな目標です。
長野県安曇野市、野口さんは独立後最大のプロジェクトに乗り出していました。
訪れたのは、かつてソニーのパソコン部門だったVAIO株式会社です。
ちなみに、VAIOの赤羽副社長はソニー時代の元同僚です。
共同で取り組んでいるのは、これまでにない電子楽譜の試作機です。
まるで紙の楽譜のように折り畳ねる電子楽譜、2つの端末をつなぐ部分にはVAIOの高い技術が使われ、見た目は1枚の板のような美しい仕上がりです。
商品名「GVIDO(グヴィド)」で価格は未定ですが、2017年初旬に発売予定といいます。
ある日、野口さんは、寺田倉庫本社(東京都品川区)へ世界的指揮者で作曲家でもある鈴木 優人さんを訪ねました。
野口さんは世界レベルの音楽家に電子楽譜の使い勝手を試してもらいに来たのです。
早速、電子楽譜を見ながら演奏してもらうことにしました。
ピアノを弾きながらでも電子楽譜に触れるだけでスムーズにページがめくれます。
鈴木さんも違和感がないと使い勝手に満足されたようです。
更に、電子楽譜には書き込みと消去も出来るので、演奏の際に役立つと好評でした。
野口さんは確かな手ごたえを感じていました。
実は、野口さんに電子楽譜の開発を持ちかけたのは寺田倉庫の寺田 保信会長でした。
寺田さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「野口さんに会ったのは1年前ぐらいですけど、やっぱりこれ(電子楽譜の開発)はプロに一緒に入ってもらってやんなきゃダメだなと。」
「電子ペーパーのパッドを開発していたのはソニーでこの方(野口さん)しかいないんですから。」
これまでにない電子楽譜は野口さんや音楽に造詣の深い寺田さんなど、プロ同士の関わりで生まれていたのです。
6月上旬にはフランス・カンヌで開かれた国際音楽産業見本市「midem 2016」に試作機を出品し、世界各国の音楽関係者から高い評価を得ました。
野口さんは、7月下旬に南青山のシェアオフィス「FARO」で、年内にも始まる量産化に備え、PRのためのチームを新たに立ち上げました。
野口さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「本当にこれを成功させないといけない。」
「自分が経験したモノづくりを大きな会社でなくても出来ることを証明してみたい。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
野口さんのように、大企業の第一線で活躍されていた技術者の方々は沢山いらっしゃると思います。
そうした方々の中には、勤務先の枠を超えて何かのきっかけでこれまでにない画期的な製品のアイデアに接する機会があると思います。
そうした中から、是非野口さんのように新事業にチャレンジする方々がどんどん現れて来て欲しいと思います。
こうした動きが結果的に国レベルの経済の活性化につながるからです。
よく言われているように、テクノロジーの世界は大変なスピードで進化しています。
そして、そうした進化がこれまではビジネスとして成立しなかった事業を可能にしていくのです。
また、そうした新しいテクノロジーを活用した新しいサービスや製品づくりを展開していくには、小回りの利く小さな組織、すなわちプロジェクトチームが有効なのです。
そして、その核の一つとして期待出来るのが”一人企業”だと思うのです。