2016年09月17日
プロジェクト管理と日常生活 No.454 『築地市場移転に思う その2 重大決定時に無視出来ない依存関係』

小池都知事は都知事選で公約の一つに掲げていた都政の透明化の一環として築地市場移転計画の見直しを表明されていました。

そうした状況を反映して、連日のように関連記事が報道されています。

プロジェクト管理の観点からそうした記事の中から5回にわたって私の感じたことをお伝えします。

3回目は、重大決定時に無視出来ない依存関係についてです。

 

1回目で、築地市場から豊洲新市場への移転プロジェクトの初期段階で行われるべき調査結果の最終報告が豊洲新市場への移転後に計画されていることの不可思議さ、および移転時期を11月7日から延期することが決定されたことについてお伝えしました。

 

一方、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて選手村や競技会場と都心を結ぶ道路として整備される環状2号線は、全長約14kmのうち約450mが築地市場跡地に整備され、一部が地下化されることになっています。

都によると、地下化は換気塔や照明などを設置する必要があり、通常の道路整備より時間がかかり、このため移転延期は大会前の開通を困難にしかねないといいます。

要するに、今回の築地市場の移転時期延期の決定が大会開催に伴う道路の整備に大きな影響を与えかねないというのです。

 

このように、あるプロジェクトを進める上で、このプロジェクトの進捗遅れが他のプロジェクトに影響を与えたり、あるいは他のプロジェクトの進捗遅れがこのプロジェクトに影響を与えたり、というプロジェクト間の関係を依存関係があるといいます。

一般的なプロジェクト開発において、管理項目の一つとしてこうした依存関係の有無を把握し、問題が発生しないように管理することが必要なのです。

 

小池都知事は今回の移転時期延長の決定に際して、道路の開通が大会に間に合わない可能性に関して「どのような工法で工事出来るか検討する」と、開通と移転延期を両立させる意思を示したといいます。

小池都知事が今回の決定に際して、どの程度のフィージビリティスタディ(実現可能性調査)をされたか分かりませんが、もし今回の移転延期の決定により、大会開催に大きな影響を与えるようなことになれば、小池都知事は責任を問われることになります。

 

このように、特に東京オリンピック・パラリンピック開催のような国家プロジェクトと依存関係のある築地市場移転プロジェクトの進捗を左右するような決定に際しては細心の注意を払う必要があるのです。


 
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