2016年09月07日
アイデアよもやま話 No.3489 AIの活用事例 その3 酪農の効率化!

最近、AI(人工知能)の活用事例が次々に報道されています。

そこで、そうした中から5回にわたってご紹介します。

3回目は、AIによる酪農の効率化についてです。

 

8月5日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でAIによる酪農の効率化について取り上げていたのでご紹介します。

 

牛の健康管理にAIを活用することで効率的な搾乳などにつながるという取り組みが8月5日から本格的にスタートしました。

これは農業のITベンチャーが手がけるもので、生産性が大幅にアップするといいます。

ここ10年で4割も減っている酪農家ですが、その救世主として期待されています。

 

北海道の帯広市、市の中心部にある帯広信用金庫で記者会見が開かれました。

政府系金融機関の日本政策金融公庫などは、帯広市のベンチャー企業、株式会社ファームノートに3億円の融資をすると発表しました。

日本政策金融公庫が北海道のベンチャー企業に融資するのは極めて異例だといいます。

ファームノートの小林 晋也社長は、記者会見の場で次のようにおっしゃっています。

「我々は全ての牛をインターネットにつなげ、人工知能を活用して最適な牛の管理を出来るようにしようと。」

 

帯広市からおよそ40km離れた鹿追町にファームノートの取り組みで進化したカントリーホーム風景という名の牧場があります。

150万平方メートルで東京ドーム32個分の広大な土地を持ちます。

生産した牛乳などを加工・販売する6次産業の実践をしています。

この牧場では、およそ500頭の牛を飼育しています。

こちらの牛の首には装置のようなものが取り付けられています。

これはファームノートが開発した1台約3万円のウェアラブル端末です。

このウェアラブル端には、加速度センサーが入っていて、牛の活動量を測定しています。

牛が動いている、休んでいる、一定の間隔で餌を食べているなどの様子を判別します。

ウェアラブル端末で測定したデータはインターネットのクラウド上に送られます。

そして、得られたデータは発情を示しているのか、病気の状態を示しているのかなどをAIは瞬時に分析し、その結果を牧場の従業員のスマホなどに通知することで、従業員は牧場のどこにいても牛の変化を知ることが出来るのです。

 

牛の乳は発情後に妊娠・出産させることで搾乳することが出来るようになるのです。

しかし、牛の数が多くなればなるほど管理が難しくなり、これまでは搾乳の機会を逃していたこともありました。

しかし、この仕組みを使えば、誰でも効率良く牧場経営が出来るようになるといいます。

更に、これまで手書きの台帳で牛の餌や体調の管理をしていましたが、クラウド上に自動的に情報を蓄積することも出来るようになります。

 

小林社長は、この取り組みを続けることにより更に牧場は進化すると考えており、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「僕らが目指しているのは、(牧場経営を)自動的にコンサルティングしてくれるような仕組み、次こうだよ、次ああじゃない、こうした方がいいよ、ということを次々にアドバイスしてくれるような存在を僕らは作ろうと。」

 

そして、番組の最後に、番組コメンテーターであるモルガン・スタンレーMUFG証券チーフエコノミストのロバート・A・フェルドマンさんは次のようにおっしゃっています。

「これ(AIによる酪農の効率化)は(経済)活性化のチャンスだと思いますが、やっぱりいろんな既に存在している部品を新しく組み合わせて新しいことが出来るという、これまでの典型的な例ですけども、今の業界の一番大きな問題は後継者ですしね。」

「で、後継者の代わりになる新しい人に入ってもらうことは、やっぱりこの機械がすごいサポートになりますね。」

「で、反対するのはやっぱり既得権益ですけども、ITの波に乗らない会社、組織は消えてしまう例がいっぱいありますから、この歴史を考えてこの技術に反対しないで欲しいね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきましたが、まず驚くのは酪農家がここ10年で4割も減っている現状です。

その背景には仕事の厳しさやそれに見合う収入の少なさがあると思います。

このような状況が続けば、いずれ日本の酪農業は消滅の危機を迎えてしまいます。

しかし、今回ご紹介したように人手に代わってAIやIoT(Internet Of Things)などテクノロジーの活用により作業効率の大幅な向上が見込まれるのです。

そして、作業効率の大幅な向上は収入アップにつながります。

ですから、酪農家の集約化による酪農家ごとの規模の拡大、およびAIなどのテクノロジーの活用という酪農業の量の拡大と質の向上という、これまでとは異次元のやり方に変革することにより日本の酪農業は復活すると期待出来ます。

この基本的な考え方は農業など他の産業の復活においても通用すると思います。


 
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