2016年08月21日
No.3474 ちょっと一休み その556 『宇宙人の高度文明 その4 知的生命が高度な文明を築き上げることの困難さ!』

4月7日(木)放送の「コズミックフロント」(NHKBSプレミアム)のテーマは「ついに発見!?宇宙人の高度文明」でした。

とても興味のある内容でしたので5回にわたってご紹介します。

4回目は、知的生命が高度な文明を築き上げることの困難さについてです。

 

半世紀前から地球外文明の研究を続けてきたロシア科学アカデミーの天文宇宙研究センター(モスクワ)のニコライ・カルダショフ所長が研究を通じて感じたのは、知的生命が高度な文明を築き上げることの困難さです。

カルダショフ・スケールを発表した当時、世界は冷戦の真っただ中でした。

自ら作りだした核兵器によって、人類が滅亡の瀬戸際まで追いつめられるのを目の当たりにしました。

半世紀経った今、文明の進化には科学技術の発展だけでなく社会の成熟も必要だと考えています。

カルダショフさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「大切なのは、より進歩した科学技術を用いてどのように社会をより良くしていくのかを子どもたちに教えていくことです。」

「今の時代は他人と協力し合うことよりも、他人と競争し、抜きん出ることを教えています。」

「そんなことでは社会がより成熟し、文明が次の段階に進化する前に自ら滅びてしまうでしょう。」

「テロや戦争、貧困など現在世界で起きている悲惨なことがここまで世界中に広まることなど誰にも予想出来ませんでした。」

「より進んだ文明に進化するためには、他人を尊重し、協力して問題を解決する術を私たちは学ばなければなりません。」

 

電波による地球外生命の探査に研究人生を捧げてきたカリフォルニア大学バークレー校SETIセンターの所長、アンドリュー・スィミオン博士は、宇宙人の信号を電波望遠鏡で捉えるプロジェクト「SETI:Seach Extra Terrestrial Intelligence」が私たちの文明のあり方についても問いを投げかけているといいます。

半世紀前に提案されたドレイク方程式(銀河系で電波を使っている文明の数を様々な条件を付けて導き出す方程式)の”L”は文明が存続する年数を示しています。

例え高度な文明があったとしても、すぐに滅んでしまえば見つけられません。

スィミオンさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「地球外文明の探査を通して私たち自身が遠い未来まで生き残るためには、この限りある惑星で何をしなければならないのかを考える必要があります。」

「今のところ人類にとっての状況はあまり良いとは言えません。」

「対立する代わりにもっと協力し合い、遠い未来にまで生き残ることの大切さを地球外文明の探査は教えてくれるのです。」

 

天の川銀河の片隅で起きた奇妙な現象、そこから地球外文明探しの物語は始まりました。

私たちはこの宇宙で独りぼっちなのか、その答えを見つけ出せるかどうかは私たち自身にかかっているのかもしれません。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

カルダショフさんのおっしゃるように、まず大切なことは、より進歩した科学技術を用いてどのように社会をより良くしていくのかということです。

自動車にアクセルとブレーキがあるように、文明の進化には科学技術の発展だけでなく、他人を尊重し、協力して問題を解決するというような社会の成熟も必要なのです。                                       

 

今、私たちはAI(人工知能)やロボット、あるいはIoT(Internet Of Things)などテクノロジーのすさまじい速さの変化の中にいます。

しかし、これらの活用によって、どのような社会を築いていくのかという観点については、IS(イスラム国)によるテロが世界各地で立て続けに発生したり、ウクライナ・クリミア半島併合をめぐり危うくロシアが核兵器を使用しそうになったり、あるいは南シナ海の領有権問題をめぐり国際司法裁判所の判断を中国が無視したり、というように世界情勢は不安定な状態のレベルが高まっているように思われます。

 

このような情勢下でAIなどのテクノロジーだけがどんどん進化していけば、いずれ紛争などの場でこれらのテクノロジーを駆使した兵器が投入されることは明らかです。

ですから、こうしたことの起きないようなブレーキの機能として社会の成熟がとても重要なのです。

テクノロジーの進化と同様に国際社会の成熟についても世界中の英知を結集して何をなすべきかを真剣に検討することが求められているのです。

そういう意味で、今回の中国による国際司法裁判所の判断の無視は、大国の武力や経済力を背景とした暴走をいかに食い止めるかという観点でとてもいい検討の対象になると思います。

 

ということで次回は、こうした問題を解決した延長線上の未来の宇宙の最新モデルについてご紹介します。


 
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