2016年08月07日
No.3462 ちょっと一休み その554 『宇宙人の高度文明 その2 高度文明の巨大建造物の目的とは!』

4月7日(木)放送の「コズミックフロント」(NHKBSプレミアム)のテーマは「ついに発見!?宇宙人の高度文明」でした。

とても興味のある内容でしたので5回にわたってご紹介します。

1回目では宇宙人の巨大建造物仮説についてご紹介しましたが、2回目はその高度文明の巨大建造物の目的についてです。

 

ケプラー望遠鏡が見つけた奇妙な現象が本当に宇宙人の巨大建造物だとしたら、その建造物とはいったいどんなかたちで、そもそもどんな目的で作られたのでしょうか。

実は、この宇宙人の巨大建造物という仮説は半世紀も前に科学者たちが考えていたことでした。

 

米ソの熾烈な宇宙開発競争が始まった1960年代初頭、両国の科学者たちはお互いをライバルとしながらも地球外文明の可能性について真剣な議論を行っていました。

議論の口火を切ったのは、地球外知的生命研究所(アメリカ・カリフォルニア州)の研究者でした。

フランク・ドレイク博士は85歳の今も現役の研究者として地球外知的生命探査の必要性を訴え続けています。

ドレイクさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「この広い宇宙のどこかに知的生命が存在していることは間違いありません。」

「私たち人類がその証拠です。」

「人類のような知的生命を探し出すためには、地球のような惑星がある恒星系を探し出して詳しく調査すればよいのです。」

 

1960年代、ドレイクさんは世界最大級の電波望遠鏡があるグリーンバンク天文台で研究をしていました。

ある日、人類が使っている電波がどこまで届いているかを計算したところ、太陽系を遥かに超えていることが分かりました。

知的生命がいるのなら、人類と同じように電波で通信しているに違いない、ドレイクさんは宇宙人の信号を電波望遠鏡で捉えるプロジェクト「SETI:Seach Extra Terrestrial Intelligence」を始めました。

 

更にその後、ドレイクさんはある野心的なモデルを提示しました。

銀河系で電波を使っている文明の数を様々な条件を付けて導き出す方程式です。

ドレイク方程式と呼ばれています。

地球外文明の数は、1年に誕生する星の数、惑星を持つ割合、地球型惑星の数、生命を持つ割合、知的生命に進化する割合、高度な文明を持つ割合、文明の持続年数、これらを掛け合わせた値に等しいという方程式で、観測事実や仮説から導き出された値を入れます。

実際に数値を入れて、地球外文明の数を割り出した結果、銀河系に存在する地球外文明の数は約2万でした。

ドレイクさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「2万もの数の地球外文明といえば多く聞こえるかもしれませんが、決してそんなことはありません。」

「銀河系の中では1000万分の1の割合です。」

「一つ一つの恒星を様々な周波数を使って丹念に調べるため時間はかかりますが、決して不可能なことではありません。」

 

アメリカで発表されたドレイク方程式は当時のソ連の科学者たちにも大きな影響を与えました。

ロシア科学アカデミーの天文宇宙研究センター(モスクワ)のニコライ・カルダショフ所長は当時から地球外知的生命探査をリードしてきました。

カルダショフさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「ドレイク方程式のような情報がアメリカから伝わって来て、地球外知的生命に対する好奇心を大いにかき立てられました。」

「宇宙開発よりももっとすごいことが出来る気がして、今にも地球外文明を発見出来るのではという機運が高まっていったのです。」

 

カルダショフさんは、地球外文明の進化の度合いを分類する方法を考えました。

尺度は、文明が必要とするエネルギーの量、それを3段階に分けます。

カルダショフ・スケールと名付けられました。

第一段階は、タイプ1の惑星文明、すなわち惑星レベルのエネルギー量で成り立つ文明です。

地球の場合は、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料、ウランなどの原子力が主なエネルギー源です。

 

しかし、惑星から採取する天然資源はいずれ枯渇、次の段階へと進まざるを得なくなります。

第二段階は、タイプ2の恒星文明、すなわち恒星規模のエネルギーを必要とする文明です。

資源の乏しくなった故郷の惑星を離れ、宇宙空間に人工的な生活空間を作り、移住している可能性が高くなります。

 

そして、最終段階がタイプ3の銀河文明、すなわち銀河一つ分のエネルギーを丸ごと利用する高度な技術力を持った文明です。

沢山の恒星のエネルギーだけでなく、銀河の中心にある巨大ブラックホールのエネルギーも利用している可能性があります。

平均的な銀河の大きさは数万光年なので、エネルギーを求めて旅するには光速を超えて移動する必要があります。

時空を歪めて瞬間的に移動するワームコープ、もしくは私たちが考えもしない何らかの方法で移動する技術を獲得しているはずです。

カルダショフさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「文明が消費するエネルギーの量は、その文明の能力レベルを評価するのに最も適切な指標だと思います。」

「より進んだ文明を築き上げるためには、新しいテクノロジーを創造することが必要になります。」

「そのためには、より多くのエネルギーやスペース、原材料が必要ですからエネルギー消費量の増大は不可欠なのです。」

 

アメリカの研究者たちもカルダショフ・スケールに大きな刺激を受けました。

天文学者で作家のカール・セーガンさん(1934〜1996)もカルダショフ・スケールを基に文明レベルを測る計算式を開発しました。

現在の地球が消費しているエネルギー量は石油に換算すると年間およそ130億トン、それを基に計算すると0.73という文明レベルがはじき出されました。

地球はタイプ1の中でも未熟な文明に分類されるというのです。

ちなみに、もう少し詳しく知ろうとネット検索した結果は以下の通りです。

セーガンさんは指数が増加するたびに0.1ずつ増加させて 文明の段階を細分化しました。

例えば、エネルギーの消費量が100ペタワットの文明は1段階、1エクサワットを消費する文明は2段階に分類する方法です。

これによると現在の文明は先ほどの0.73段階になります。

数字だけ見ればタイプ1の段階にかなり接近したものですが、この定義によるとエネルギー消費量が今よりも1000倍多くならなければタイプ1の段階の文明に到達することが出来ないといいます。

 

巨大建造物のかたちや目的も当時活躍した研究者たちのアイデアから生まれていました。

半世紀前、巨大建造物の具体的なかたちを示した研究者がいます。

プリンストン高等研究所(アメリカ・ニュージャージー州プリンストン)、アインシュタインやオッペンハイマー、湯川秀樹などが籍を置いた世界トップクラスの研究所です。

この研究所の名誉教授、フリーマン・ダイソン博士です。

電子や光子の振る舞いを理論としてまとめ上げるのに貢献した世界的な物理学者です。

タイプ2の文明は、どれほど高度なものなのか、巨大な建造物は何を目的として作られるのか、ダイソンさんは具体的なモデルを示しました。

ダイソンさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「恒星の放射エネルギーを丸ごと活用するには、星全体を何らかの巨大構造物で覆う必要があります。」

「そのためには、恒星の周囲に大量の人工物を配置します。」

「それで光のエネルギーを吸収し、電気のように利用出来るエネルギーに変換するのです。」

 

恒星は360度全方位にエネルギーを放射していますが、そのほとんどは宇宙空間に消えてしまいます。

惑星が受け止めることが出来るのは全体のほんの一部です。

エネルギーを全て利用するには、恒星全体を覆うように光を吸収する装置を配置する必要があります。

以下はその具体的な方法です。

最初に光を吸収するパネルをリング状に配置、そのリングをどんどん増やしていきます。

最終的に恒星全体を覆うようにすれば完成です。

ダイソンさんの名を取って、ダイソン球と名付けられました。

ダイソンさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「人々がダイソン球と呼んでいる巨大構造物はカルダショフ・スケールのタイプ2の文明の具体的なかたちです。」

「恒星の周りを覆うことでエネルギーを調達し、余った熱を廃棄しています。」

「その熱の痕跡を探せば、高度文明を見つけることが出来ます。」

「物理学者だから考え付いたわけではありません。」

「夜空を見上げて、この広い宇宙には何があるのか、他に文明はないのか、不思議に思っただけです。」

「これは物理学の問題ではなく、人類共通の問題です。」

「宇宙人はいるのか、あなただってその答えを知りたいでしょ。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

まず、ドレイク方程式に基づくと銀河系に存在する地球外文明の数は約2万という仮説ですが、具体的にそれぞれの文明がどのようなものなのかにとても興味が湧いてきます。

また、カルダショフ・スケール、およびそれを基にセーガンさんが開発した文明レベルを測る計算式にあてはめると、私たち人類の文明はまだまだタイプ1の段階の文明に到達していないのです。

しかし、恒星の光を吸収するパネルをリング状に配置するダイソン球は超巨大で、以前ご紹介した現在開発中の宇宙太陽光発電とはまるで比較になりませんが、それでも宇宙太陽光発電の延長線上に位置します。

ですから、人類の文明は間違いなくタイプ1の段階の文明を目指していることになります。

 

ということで次回は、人類を遥かに凌ぐ高度文明についてご紹介します。


 
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