2016年06月06日
アイデアよもやま話 No.3409 地球を動かし太陽を止めたコペルニクスについて その1 地動説がすぐに広まらなかった理由!

3月3日(木)放送の「コズミック フロント☆NEXT」(NHKBSプレミアム)のテーマは「天文学を180度変えた男 コペルニクス」でした。

番組を通してコペルニクスの大発明について3回にわたってご紹介します。

1回目は、なぜ地動説がすぐに広まらなかったのかについてです。

 

時代の常識を打ち破るパラダイムシフトは天文学の世界でも起きています。

20世紀、宇宙は不変ではなく膨張していることが明らかになりました。

遡ること18世紀、太陽系が特別な存在でなく、銀河系の一部に過ぎないことに驚かされました。

そして16世紀、地球は宇宙の中心ではなく太陽の周りを回っているという地動説に衝撃を受けました。

この説を唱えたのがポーランド人のニコラウス・コペルニクス(1473年〜1543年)です。

コペルニクスが出てくるまで地球を中心とする天動説は1000年以上もの間信じられてきました。

コペルニクスが唱えたそれまでの常識を覆す地動説は時代に翻弄され、長らく公にされませんでした。

 

では、なぜ地動説はすぐに広まらなかったのでしょうか。

コペルニクスは天体観測から1年の長さが365.2425日であることを導き出しました。

今と寸分変わらない精度です。

この観測は1517年1月に始められましたが、こうした観測を続けることで地動説は揺るぎないものになっていきました。

コペルニクスは地動説を本にまとめ、出版することを考え始めました。

ところが、大きな問題が立ちはだかっていました。

それは聖書です。

その中には天動説に通じる記述があったのです。

しかもこの頃聖書の教えを絶対とする勢力が台頭し、宗教改革を始めていました。

指揮していた神学者のマルティン・ルター(1483年〜1546年)はコペルニクスの友人に宛てた手紙の存在を知ります。

手紙には、決定的な表現がありました。

地球が宇宙の中心ではなく、太陽が宇宙の中心の近くにあると書かれているのです。

つまり、地球は太陽の周りを回っているという地動説を意味しています。

地動説の考えをこのようなかたちで文章に残していました。

コペルニクスは30代で既に地動説は真実であるという確信を持っていたのです。

ちなみに、この手紙の写しは今もスウェーデンの首都、ストックホルムにある王立科学アカデミーに保管されています。

ルターは聖書の教えに反する地動説を唱えるコペルニクスに非難を浴びせました。

そして、コペルニクスは次のように葛藤しました。

「自分は聖職者だ。」

「その聖職者が聖書の教えに反していいのか。」

「しかし、自分は天文学に精通し、地動説には確信を持っている。」

 

二つの狭間でコペルニクスの気持ちは揺れ動きました。

 

さて、マルティン・ルターといえば、学校の教科書で習った宗教改革がすぐに連想されますが、実際にどのような宗教改革がルターによってなされたのかWikipediaで調べたところ、以下のような記述がありました。

 

宗教改革の中心人物となったことでプロテスタント教会の源流をつくった。聖書をキリスト教の唯一の源泉にしようというルターの呼びかけはプロテスタント諸教会のみならず、対抗改革を呼び起こしたという意味でカトリック教会にも大きな影響を与えた。宗教上の足跡のみならず、ヨーロッパ文化、思想にも大きな足跡を残した。たとえばルターの手によるドイツ語聖書が、近代ドイツ語の成立において重要な役割を果たしたことや、自ら賛美歌をつくったことなどが挙げられる。カタリナ・フォン・ボラという元修道女と結婚したことでプロテスタント教会における教職者、牧師の結婚という伝統をつくったことでも知られる。

 

このように宗教改革を成し遂げたルターと言えども、聖書は絶対でその内容を疑うことはなかったようです。

ましてや当時の一般の人たちは地球が太陽の周りを動いているという考え方にはとても付いて行けなかったと思います。

こうして天動説は1000年以上もの間信じられてきたのです。

肝心のコペルニクスでさえ、聖職者の立場と地動説に確信を持っている自分自身との狭間に長い間悩まされたのです。

 

今の時代を生きている私たちでさえ、恐らくほとんどの人は学校で習わなければ、地球が丸いことさえ分からず、ましてや地球が太陽の周りを回っているなんてとても発想出来ないと思います。

 

このように、新たな発見が従来の常識とかけ離れていればいる程、また多くの人たちに影響を及ぼす程、その発見は世間から非難され、あるいは無視され、世間から受け入れられることが困難なのです。

最悪のケースでは巨大な既得権を握っている組織から抹殺されてしまうことさえ起こり得るのです。

そうした多くの、あるいは巨大な抵抗勢力と闘ってでも、自分の信念を曲げない時代の先駆者の存在が時代のパラダイムを変えていくのです。


 
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