2016年02月01日
アイデアよもやま話 No.3301 廃炉時代の到来 その1 先送りされる廃炉作業 !

先週、行き場を失った原発事故のゴミについて3回にわたってお伝えしてきました。

そうした中、1月26日(火)放送の「クローズアップ現代」(NHK総合テレビ)で廃炉に関する積み残された課題について取り上げていたので2回にわたってご紹介します。

1回目は、先送りされる廃炉作業についてです。

 

福島第一原発事故に伴い、昨年国内5基の原発の廃炉が決定されました。

今、その5基の解体に向けた作業が始まろうとしています。

日本で原発が運転を開始してから今年でちょうど50年、原発を解体した時に出る放射性廃棄物をどこに処分するかまだ決まっていません。

今、地元からは不安の声が上がっています。

 

なぜ、処分場は決まっていないのか、NHKの取材で見えてきたのは国も電力会社も原発の運転を優先し、問題を先送りしてきた現実です。

原発から出る放射性廃棄物をどうするのか、溜まり続ける使用済み核燃料や使用済み核燃料を再処理した際に出る核のゴミ、そして寿命を迎えた原発を解体した時にも出てくる放射性廃棄物など処分場の問題を先送りしながら原発が作り出す電力を使い続けています。

 

原発の運転期間は原則40年です。

今後、全国で老朽化した原発が相次いで廃炉を迫られます。

廃炉作業が既に始まっているもの、あるいは既に廃炉が決まっている炉の数は14基、今後10年の間に廃炉の判断を迫られる原発は15基に上ります。

 

原発の解体によって出てくる放射性廃棄物は全体の3%程度で以下の3つに分類されます。

L1:直接核燃料に触れていた制御棒など放射能レベルが最も高い

地下深く10万年の隔離が求められる

 L2:圧力容器

L3:主蒸気配管やポンプなどの周辺機器で、最も放射能レベルが低いものの、量が最も多い

 

このL3の放射性廃棄物の処分場は電力会社が責任を持って決めることになっていますが、

廃炉が実際に始まり、この廃炉の時代が本格的に近づいているにも関わらず、最も放射能レベルが低いL3ですらどこにどう処分するのか決まっていないのが現状です。

処分場が決まらないかぎり、廃炉作業が行き詰まるのは確実です。

福島第一原発の事故後、原発への不信感が高まった中で、処分場の立地に向けた合意形成をどのように作り出すのか、極めて難しいのがこの問題です。

 

6年前から先行して廃炉に伴う解体工事が進む中部電力の浜岡原発(静岡県御前崎)では、今年建屋内の解体に着手、初めて放射性廃棄物が出る作業が始まる予定です。

しかし、その処分場の選定は全く進んでいないといいます。

廃炉作業を開始した当初、処分場は建屋内の解体に着手するまでに定めるとしていました。

ところが昨年3月、中部電力は処分先を未定とし、先送りにしたのです。

 

なぜ処分場を決められなかったのか、当初中部電力は他の電力会社と協議したうえで処分場の選定を進めようとしていました。

しかし、廃炉を開始した後に、福島第一原発の事故が起き、国民の間に放射性廃棄物への不安が高まりました。

こうした状況下において、一社の一存だけで決められないという判断のもとに、処分場の選定は完全にストップしたといいます。

 

処分場が決まらない中、昨年9月、中部電力が発表したのは建屋内にL3廃棄物を一時的に保管するという計画でした、

あくまで仮置きとしていますが、いつまで仮置きを続けるのか見通しは示されていません。

こうした事態に、地元では不安が高まっています。

浜岡原発がある御前崎市の石原 茂雄市長は、一時保管した敷地がそのまま処分場になるのではないかと懸念しています。

 

浜岡原発よりも早く15年前から廃炉が始まっている東海原発(茨城県東海村)ではより差し迫った状況に直面しています。

解体工事でよりレベルの高いL2に相当する廃棄物が出ています。

3年後にはL1も発生する見込みです。

しかし、解体は処分場が決まらないまま進められてきました。

解体で出た廃棄物は敷地内の倉庫で一時保管を続けています。

その数、ドラム缶でおよそ1000本分、倉庫の容量は残り20%を切り、処分場の確保に迫られました。

昨年7月、事業者の日本原子力発電(日本原電)はL3の処分場を原発の敷地内に建設する計画を打ち出しました。

国の基準に従い、容器に入れたL3廃棄物を敷地内の地下4mの深さに埋めて50年間管理する計画です。

日本原電は、東海村や周辺自治体で30回住民説明会を開き、安全性について説明してきました。

しかし、最も低いレベルとはいえ、不安を感じる住民も少なくありません。

こうした状況の中、NHKの取材に対し、東海村の山田 修村長は、L3に限っては処分場を容認する考えを初めて明らかにしました。

しかし、一方で今後発生するL1やL2まで敷地内で処分することは受け入れられないといいます。

山田村長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「このまま処理処分地が決まらない状況が続いて、解体作業がストップしてしまうことも避けなければなりませんので、本当に他にも選択肢がない中ではL3であれば「やむなし」というところは今感じているところであります。」

「当然、炉心近くではL1、L2の問題が出てきますので、その時にはやっぱり大きな問題になりますが、廃棄物が出てからでは遅いので、きちんと国や電気事業連合会も含めて関係者で方向性を決めて欲しい。」

 

こうした山田村長の判断についてNHKの取材記者は、東海村は国内初の原子炉が運転を始めて多くの原子炉施設があるということから、住民にとっては長年原子力が身近な存在だったので、山田村長は住民説明会の結果を踏まえて、これであれば住民の理解が最終的に一定程度得られると考えたと見ています。

 

一方、これから廃炉に本格的に直面しようとする地自体では東海村とは事情が異なってくると見ています;

全国34の自治体に、仮に敷地内に埋め立て処分をしたいという申し出があった場合の対応についてアンケート調査を実施した結果、その時点では容認するという回答はゼロだったといいます。

また、将来廃炉で出る廃棄物をどこで処分するかについて、原発の建設時点から何らかの説明を受けたかについても廃炉が決まる以前に説明があったという自治体もなかったといいます。

つまり、これまで処分場が必要になるという認識さえ自治体側にはなかったと見ています。

 

ちなみに、実際にL3という低レベルの放射性廃棄物がどの程度危険なのかということについてですが、番組では廃棄物の表面の放射線量を例に挙げて以下のように説明しています。

例えば、日本原電によると、東海原発の敷地内で出るL3では1時間当たり0.3ミリシーベルト(mSV)未満になるといいます。

つまり、仮に人間が廃棄物に身体をピタッと密着させた状態で1時間いた場合に、0.3mSHの被ばくをするということで、これは1年間に浴びても差し支えないとされている国際的な基準が1mSVなのですが、そのおよそ3分の1未満になるということです。

 

そもそも廃炉で出る放射性廃棄物の処分方法については“発生者責任の原則”に基づいて、電力会社が確保するということは決まっているのですが、それ以外のことは決まっていないといいます。

ちなみに、先ほどのアンケート調査では、処分場の確保について、国の関与・主導が必要という回答が49%、現状通り電力会社が進めるべきという回答は7%という結果でした。

 

国は原発を進めてきたという責任から、処分場の確保についても一定の役割を果たすべきだと取材記者はいいます。

 

以前、小泉元総理が原発反対の理由として“原発はトイレのないマンション”と比喩していましたが、今回ご紹介した内容からしても現実はまさに小泉元総理のおっしゃっていた通りだと思います。

また、福島第一原発事故後の状況からしても、原発事故に伴う賠償責任を一企業に負わせることにはとても無理があります。

そもそも原発は国策としてこれまでもこれからも進められているのですから、NHK取材記者のおっしゃるように、国が放射性廃棄物の処分場の確保や原発事故に伴う賠償責任についての議論をリードしていく責任があるのです。

 

ところが、これまで国や電力会社、そして原発の稼働している自治体の間での責任や役割が曖昧にされてきたのです。

これこそが原発関連の政策の誤りの元凶と言えます。

 

次回は、こうした問題を抱える日本が参考にすべきアメリカの対応策についてご紹介します。


 
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