昨年11月21日(土)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)のテーマは「「東日本大震災」追跡
原発事故のゴミ」で、行き場を失った原発事故のゴミについて取り上げていたので3回にわたってご紹介します。
1回目は、処分計画の進まない原発事故のゴミについてです。
東日本大震災から4年半(番組放送当時)、福島第一原発事故で発生した廃棄物(ゴミ)が東日本各地にあふれ問題になっています。
福島県郡山市の市街地では、汚染されたゴミが住宅街に留め置かれています。
その数は、道路や庭先など11万ヵ所以上に上ります。
どこで処分するのかすら決まらない、これまで私たちが経験したことのない質と量を持った未知なるゴミにより各地で混乱が続いています。
NHKが行った自治体への大規模なアンケート結果によると、ゴミは東北から関東の周辺にまで広く留まっていることが分かりました。
その総量は920万立方メートルといいます。
東京都で1年に出る量の4倍といいます。
中身は、焼却灰、稲わら、汚泥など多岐に渡っています。
中でも際立って多いのは除染と呼ばれる作業から出た土や草木で全体のおよそ9割を占めています。
そのほとんどが集中する福島県、中でも最も多く量を抱えるのは飯館村でした。
飯館村では今も全住民の避難が続いています。
ここではいち早い帰還を目指して国による大規模な除染が行われています。
住宅や山林から放射性物質を取り除くため、連日5千人が作業に当たっています。
飯舘村で特に力を入れているのは農地の除染です。
農業の再開が帰還のカギとなるからです。
そこから出る大量のゴミは、村全域で1立方メートルの袋が100万個にもなる計算です。
そこで持ち上がったのが大量のゴミの保管場所がないという問題です。
国は、まず当面の策として村内に仮置き場を設けました。
しかし、確保出来たのは3ヵ所、必要な面積の5分の1でした。
仮置き場はすぐに一杯になり、国はいずれ新たな仮置き場を作るとして各集落に仮仮お置き場の設置を要請することになりました。
それでも空き地や道路脇など村のいたるところにゴミが点在しています。
仮仮お置き場にも運びきれず、現場保管というかたちで留め置かれているのです。
昨年9月の豪雨で流出したのは、この現場保管のゴミでした。
福島県全域で除染が進み、汚染された土の行き場が今待ったなしの課題になっています。
国は、事故当初からその検討を続けてきました。
4年前(番組放送当時)に打ち出されたのが中間貯蔵施設の建設でした。
福島県内のゴミ、最大2200万立方メートルのゴミを集め、当面の間保管する計画です。
予定地は、大熊町と双葉町にまたがる福島第一原発の周囲、16平方km、東京渋谷区とほぼ同じ面積です。
様々な技術を駆使し、30年にわたって管理する、史上例のない巨大プロジェクトです。
当初の計画では2014年の夏には建設が始まっているはずでした。
しかし、昨年11月現在、その見通しすら示されていません。
以上、処分計画の進まない原発事故のゴミについてご紹介してきました。
福島第一原発事故から既に5年が経過しようとしている中、直接的な影響を被っていない人たちの記憶は徐々に薄れつつあるように思います。
でも、原発事故のゴミの処分計画は当初の予定から1年半あまり経っても未だ中間貯蔵施設の建設は始まっておらず、しかもその見通しすら立っていない状況なのです。
ですから、福島第一原発周辺の住民の方々をはじめ多くの方々にとっては、まだまだ悩み多き大変な状況が続いているのです。