2016年01月05日
アイデアよもやま話 No.3278 収入と幸福度の相関関係!

私たちは幸せになるための重要な要件の一つとして、より多くの収入を得たいと望んでいます。

そうした中、昨年10月12日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で収入と幸福度の相関関係について取り上げていたのでご紹介します。

 

昨年のノーベル経済学賞を受賞されたアメリカ・プリンストン大学教授のアンガス・ディートンさん(69歳)は、消費による幸福度を解明されました。

ディートンさんは公共経済学の研究で知られ、消費と貧困、福祉の分析が受賞対象となりました。

ディートンさんの研究で有名なのが収入と幸福感の関係を解き明かしたことです。

収入に合わせ幸福感は上昇していきますが、7万5000ドル(約900万円)を超えると収入と幸福の感情が比例しなくなり鈍化するというものです。

要するに幸福感が飽和状態に近づくということです。

 

アメリカでは決済サービス会社のCEO、グラビティ・ペイメンツさんがこの研究をもとに自身の年収を100万ドルから7万ドルに引き下げ、従業員の最低給与を同じ7万ドルに引き上げたことで知られています。

 

ディートンさんの著作「大脱出 健康、お金、格差の起源」は、日本でも今年翻訳出版され大きな話題を呼びました。

ディートンさんの理論が日本経済にも当てはまるかどうかについて、番組コメンテーターの東京大学大学院教授の伊藤 元重さんは、次のようにおっしゃっています。

「経済学の言葉でいうと雇用関数というんですけど、いろんなものを消費して我々はなんとかより幸せになろうとする、その行動パターンみたいなものを関数で表しているわけですよ。」

「だから、子どもがゼロの時と一人の時と二人の時とどの程度違うのかということとか、あるいはビールを飲む方がいいのかウイスキーを飲む方がいいのかとかということをいろんな数値の上で表すことが出来るわけで、理論的にはずうっと言われてきたわけですけども、それを実際にデータに乗せて分析出来るようにするためにいろんな数値的なフレームワークを出したという意味で非常に重要なんですよね。」

「具体的にどういうものを皆さんが求めているのかということについてより踏み込んでみる時にはこういう分析が必要かもしれませんね。」

「勝手に政府の思い込みでこうすればいいというんじゃなくて、何が求められているのかということを知るような時にはこういう研究が当然役に立つと思いますけどね。」

「(国による)環境と幸福の違いみたいなものもこういうものを使って分析出来る。」

「環境をどう変えていったら少ないお金でより皆が幸せを感じるかということもこういう研究の延長線上にあると思いますけどね。」

 

さて、どの程度の収入を得れば幸福感を得られるかについてですが、今でもよく覚えていることがあります。

1973年に大学四年生として入社試験の時期を迎えていた頃、チェーンストア(現在のスーパーマーケット)産業づくりの推進によって近代化し、生活水準の向上を実現することをロマンとして掲げておられた渥美 俊一さんの講演をたまたま聴く機会がありました。

講演の中で、渥美さんは、日々の暮らしをしていく中で、せいぜい500万円の収入があれば十分である、というようなことをおっしゃっていました。

この頃の500万円は今の価値に換算するとざっと1000万円になります。

こう考えると、ディートンさんの研究成果である、収入が7万5000ドル(約900万円)を超えると幸福感が飽和状態に近づくということと見事に符合します。

 

確かに豪邸に暮らしたり、数台のスーパーカーを所有したり、世界中を旅行したりというような欲望は誰にでも少なからずあるかもしれません。

それでも、年収が約900万円もあれば、4人家族程度であれば、大衆車を購入し、ローンで住宅も購入し、多少の贅沢をして暮らすことは出来ます。

そしてこれ以上の年収があっても幸福感は徐々に飽和状態に近づくというわけです。

 

では、年収約900万円の暮らしを得て、経済的な幸福度の飽和状態を脱して更にそれ以上の幸福感を得るためには何が必要なのでしょうか。

それは、以前からよく言われているように“自己実現”だと思います。

たとえ年収が約900万円に満たなくても、自分の目指すべき道が明確に見えており、その方向に向けて一生懸命に取り組んでいれば、人は十分幸福感に満たされた生活を送ることが出来るのです。

一方、年収が約900万円以上であっても、例えば毎日目的もよく分からないような仕事に追われて“自己実現”とは遠く離れた暮らしを送っている人は経済的には満たされても、充実感に満たされた生活を送れるとは限らないのです。

 

ということで、年収約900万円というのは経済的な視点での幸福感の一里塚であって、それだけで人生そのものが充実感に満たされた状態ではないのです。

それよりも、年収は少なくともその範囲内でアイデアを駆使しながらなんとかやり繰りし、自分の納得した生き方をしている人の方が充実した生活を送ることが出来ると思います。

勿論、何かを成し遂げるうえで資金が大きなネックになることがあります。

ですから、年収約900万円以上ある方が“自己実現”を目指すうえでご自分の財産をそのための資金として投入出来ればそれに越したことはありません。

 

ということで、収入と幸福度の相関関係において、年収が約900万円に達するまでは幸福度は右肩上がりで上がりますが、それ以上は徐々に飽和状態になります。

でも、年収が約900万円に達っしていなくとも、“自己実現”に向けて取り組んでいれば、充実した生活を送ることが出来ると私は思うのです。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています