2015年10月04日
No.3198 ちょっと一休み その509 『確実に進んでいる地球温暖化 − 溶け出すアルプス氷河』

現在、異常気象により世界各地で大災害が発生しており、地球温暖化の進行が世界的に注目されています。

そうした中、8月25日(火)放送の「国際報道2015」(NHKBS1テレビ)で世界の異常気象について取り上げていたのでご紹介します。

 

この夏、世界各地で干ばつや猛暑などによる被害が相次いでいます。

インドやパキスタンでは40℃を超える熱波で3000人以上が死亡、中米のパナマ運河では6月の雨量がこの100年間で最も少なく、通航制限が出されました。

また、アメリカでは記録的な干ばつで大規模な山火事が多発し、アメリカの海洋大気局はこの7月は観測史上最も暑く、地球温暖化が進んでいるとしています。

この異常な暑さはヨーロッパでも深刻です。

影響は農作物にも及んでいます。

ドイツ東部では7月から8月上旬にかけてほとんど雨が降らず、全日猛暑日が続きました。

とうもろこし畑では高温と水不足で成長が止まってしまいました。

こうした中、今年の収穫は例年の半分以下になる見通しです。

小麦やライ麦などの穀物も不作で収穫量が20%も落ち込みました。

農業協同組合の代表者によると、ここ30年でこんな極端な天候は初めてで、このような状況が何年も続けば農業が出来ないといいます。

 

猛暑の影響は標高の高い場所にも広がっています。

1年を通して山頂が雪に覆われているアルプス最高峰のモンブランですが、周辺の山々では暑さで氷河が大量に溶け出しています。

フランス最大の氷河、全長11kmのメールドグラス氷河でも深刻な問題が起きています。

氷河は毎年溶け続け、かつて氷河の表面があった場所から今の表面にたどり着くには階段を200段以上下りなければいけません。

地元の人たちは氷河を日光から守るためにシートで覆うなどの対策に乗り出しましたが、氷河全体を覆うことも出来ず、毎日太陽が上がるたびに熱で溶けていくといいます。

氷河の研究者、リュック・モローさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「この25年ほど毎年氷河は12〜14m溶けています。」

「今年の夏は15mほど溶けて薄くなるかもしれません。」

 

気温の上昇は登山客の安全にも影響を及ぼしています。

永久凍土が溶けて地盤が緩んだ結果、落石が増え、スイスのマッターホルン周辺では8月に落石で登山客2人が死亡しました。

 

更に、氷河が溶けることに大きな脅威を感じている町もあります。

アルプスの麓の町、フランスのサンジェルベレバンでは、標高3000mの氷河の内部に大量の水が溜まっているというのです。

水の量はおよそ4万トン、そのまま放っておけば重みで氷河が割れ、氷交じりの水が土石流のように流れ出し、町を襲う恐れが出ています。

町は大規模な排水作業を続けてきましたが、対策には限界があります。

専門家は、アルプスだけでなく氷河の減少は世界各地で進んでいると指摘しています。

世界氷河モニタリングサービス研究者のイザベル・ゲルトネールさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「氷河が溶けるスピードは加速していて2000年以降が特に著しい。」

「(気温の上昇が)止まったとしても氷河はこの先数十年にわたって溶け続けるでしょう。」

 

番組ゲストの女性登山家、田部井 淳子さんは、今から40年前の厚い雪に覆われていた標高5350mのエベレストのベースキャンプ地点がたった24年後の1999年にはかなり岩が露出するまでに変わっていた写真を見せてくれました。

また、以前、氷河湖はなかったのが1999年にはあちこちに沢山できていて驚いたといいます。

更に、今年の夏に行った時には、20年前には氷河が下までずうっと続いていたのがどんどん岩が露出してきたと地元のおばさんから聞いたといいます。

このまま氷河が溶け続けていくと氷河湖が決壊して下の村に大洪水が起きるのではと心配しています。

 

また、シェルパの人たちは登山客を山に案内することで生計を立てています。

なので、氷河がどんどん少なくなったり、クレバスという氷と氷の間の裂け目が広くなってくると渡れなくなってくるので危険が増し、登山客が来なくなったら自分たちの生活が立ちいかなくなるとかなり危機感を持っているといいます。

 

また、以前、田部井さんたちが登山に行っていた時にはそれほどカラスを見かけることはなかったのが、最近は標高5300mのベースキャンプまでカラスが沢山来て登山者の残していった食べ物などを啄んでいるといいます。

 

このように、アルプスのような高い山々でも確実に地球温暖化の影響が出てきているのです。

そして、世界各地の氷河が溶け出して大量の水が海に流れ込めば、海面の高さも増していきます。

そうすると、以前お伝えしたようにキリバス共和国のような海抜の低い国は存続出来なくなってしまいます。

しかも、今すぐに対策を講じてもしばらくはこの流れを止めることは出来ないといいます。

ちなみに、今世紀中の海面上昇量が1〜2mを超える可能性が複数のグループによって指摘されているといいます。

ですから、私たちはもっともっと地球温暖化問題に真剣に取り組まなければならないのです。

 

異常気象という言葉が一般化していますが、異常気象が常態化しつつあり、地球温暖化の進行に伴い、地球規模の気候のステージが変わりつつあると認識すべき時に来ているように思うのです。


 
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