2015年05月04日
アイデアよもやま話 No.3067 最先端の宇宙太陽光発電技術!

宇宙太陽光発電についてはこれまで何度かご紹介してきました。

そうした中、2月15日(日)放送の「夢の扉」(TBSテレビ)で最先端の宇宙太陽光発電技術について取り上げていたのでご紹介します。

 

成功すれば“人類初”となる壮大なプロジェクトが今日本で進行しています。

日本が世界をリードする宇宙太陽光発電で、この産学官連携プロジェクトを率いるのは京都大学生物圏研究所の篠原真毅教授(46歳)です。

なお、生物圏研究所のメインテーマは人類が生き延びるために必要な環境です。

また、篠原教授はこれまで24年間宇宙太陽光発電の研究を続けられてきました。

 

高度3万6000kmの宇宙空間に一つ2.5km四方という巨大な太陽光発電パネルを設置して太陽光を集め、宇宙で発電するというのです。

地上と違い、宇宙では天候や昼夜に左右されることなく太陽光が照り付けます。

なので、地上での年間稼働率15%以下に比べて95%という高効率で太陽光エネルギーが集められ、その発電量は原発1基分に相当するといいます。

ここで発電された電力はマイクロ波という電波に変換して地球へと送られます。

電力を受け取る側の設備も直径4kmという広さです。

 

マイクロ波は雨や雲などの影響を受けずに通り抜ける特性があります。

そのため3万6000kmもの距離を送電するにも係わらず、ロスがほとんどないといいます。

ところが、マイクロ波には広がって伝わるという性質があります。

そのため狙った方向に飛ばすにはある工夫が必要です。

それが、送信するアンテナの数を増やすことです。

アンテナの数を多くすることでそれぞれのアンテナから出るマイクロ波が影響し合い、特定の方向に向けることが出来るのです。

更にマイクロ波を出すタイミングを微妙に変えることで伝える向きをコントロールすることも出来ます。

この技術のお蔭で送信アンテナが動かなくても送るマイクロ波の向きを自在に変えられるのです。

こうして、3万6000km離れた宇宙からでも地球に向かって正確に電波を送ることが出来るので受信する設備を整えれば、送信先は東京でも大阪でもどこでも可能になります。

 

また、太陽光発電パネルを沢山打ち上げれば、エネルギーで争うことのない世界が実現出来るかもしれません。

その夢に不可欠なのが発電と送電が同時に出来るパネルの開発です。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)では既にその試作品が開発されています。

送信アンテナの裏側に太陽光発電パネルが付いた発送電一体型モジュールです。

これをいくつもつなぎ合わせて2.5km四方にしたのが太陽光発電衛星(SPS)の完成品です。

ところが、未だこれをロケットに載せて打ち上げることは出来ません。

現状では大き過ぎるので、30cmほどある厚さをもっと薄く軽くしなければ宇宙へ打ち上げることは出来ません。

ところが、マイクロ波への変換、そして送電というそれぞれに必要な装置を一つのモジュールの中に詰め込むには30cmほどの厚さが必要なのです。

更に実際の発電にはこれに発電装置本体が加わります。

 

そこで、共同開発している三菱電機、および一般財団法人 宇宙システム開発利用推進機構と共に篠原教授はこの難題に挑みました。

厚さ30cmの段階で当時の先端技術の全てをつぎ込みました。

そして遂に、第二歩目の開発には6年を費やし、性能は今まで通りのまま厚さ2.5cmのモジュールが完成しました。

テレビや携帯電話がどんどん薄くなったように大幅な技術革新がこれを可能にしたのです。

ところが宇宙太陽光発電の実用化までには安全性やコストなど、まだまだ超えなければならない壁があります。

でも篠原教授は、“決して夢を止めてはならない”と誓っています。

 

篠原教授の研究者としての人生を決めたのは、恩師である当時の松本 紘教授、元京都大学総長で現京都大学名誉教授(72歳)の「地球だけで暮らすには限界があるんだよ」という言葉でした。

篠原教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「人類を宇宙太陽光発電を使って1万年でも生き延びさせると。」

「地球の上で閉鎖している限りはきっと誰かが我慢しているんだろうなと。」

「みんなが我慢しなくてもよいようにするには宇宙まで行かないといけないなと思ってます。」

 

「現実だけ見ていると世知辛い一方ですし、夢だけ見てたら現実離れしたっていう話になるので、やっぱり夢っていう本当にフワフワしたものに近づくためには現実があって、それの架け橋が重要なんだろうと思ってますけど。」

「夢と現実の架け橋的なところが私の中では科学なんですけど。」

 

こうして、恩師である当時の松本教授の描いた宇宙太陽光発電という夢はやがて篠原教授の教え子たちへ引き継がれるのです。

 

宇宙太陽光発電は、クリーンかつ安全で枯渇しないエネルギーであることから、エネルギー問題と地球温暖化問題を解決する将来の基幹エネルギーとして期待を集めています。

 

将来のエネルギー源の有力候補として宇宙太陽光発電は大きな可能性を秘めていると思います。

ちなみに、以前ご紹介した赤道直下に人工島を作るという「グリーンフロート」プロジェクトでも宇宙太陽光発電をエネルギー源の最有力候補として開発が進められているようです。

 

ということで、番組では実用化の時期について触れていませんでしたが、“脱原発”、“脱化石燃料”の促進の観点からも1日も早い実用化が待たれます。


 
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