2014年08月04日
アイデアよもやま話 No.2833 鉄より軽くて強いナノセルロース 実用化へ!
6月28日(土)付け読売新聞の夕刊一面に鉄より軽くて強いナノセルロースに関する記事が掲載されていたのでご紹介します。
 
鉄と比べて重さは5分の1なのに約5倍の強度を持つ次世代の繊維、ナノセルロースの実用化に向けて、国内の製紙会社や自動車会社、化学メーカーなど約100社が結集することになりました。
自動車部品や建材、人工血管まで幅広い分野での活用を目指すといいます。
木材などから作るため、環境にも優しいとされる有望な素材なので、政府も成長戦略の一環として支援していくといいます。
 
ナノセルロースとは、木材に含まれる繊維を化学的に処理し、髪の毛の太さの約10万分の1であるナノレベル(1ナノ・メートルは100万分の1ミリ)まで解きほぐして加工した素材です。
軽さと強度を兼ね備える他、熱による変形が少ない特徴もあります。
間伐材や稲わらなど、これまであまり使い道がなかった植物が原料なので、環境への影響が少ないといいます。
炭素繊維と同じように強くて軽い素材でありながら、石油などから作る炭素繊維よりも森林が多い日本にとっては有望な素材といえます。
製品化する際は他の物質と組み合わせるため、水に濡れて腐るようなこともありません。
 
製紙会社は、木材などから繊維を抽出して紙を作っていますが、この技術を応用してナノセルロースの開発を進めており、日本製紙などは試験的な生産を始めています。
ところが、具体的な用途、およびその加工方法、あるいは量産化に向けた品質確保のための基準など詰めるべき課題が多いのです。
そこで、経済産業省は今年6月にナノセルロースを使う可能性があるメーカー側にも呼びかけて、官民連携の研究会を発足させました。
なお、用途が拡がれば、大量生産出来るようになるため、政府は2030年に価格を現在の10分の1程度の1kg当たり500円以下に出来ると見ています。
 
日本は炭素繊維の生産では先行し、世界市場で主導権を握りました。
政府は、ナノセルロースを第二の炭素繊維に育てたい考えで、新たな成長戦略にも盛り込んでいます。
 
これまで何度も繰り返しお伝えしてきましたように、これから目指すべきは持続可能な社会なのです。
そういう意味で、炭素繊維の原料は石油などの化石燃料ですから、いずれ原料は枯渇してしまいます。
一方、ナノセルロースの原料は木材などの植物ですから、枯渇することはありません。
ですから、持続可能な社会実現の観点からみて、今後重点的にナノセルロースの開発・実用化を進めるべきだと思います。
ナノセルロースに限らず、石油などの化石燃料に頼らずとも自然界に存在する様々なモノを原料にした製品作りが求められているのです。

 
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