2013年12月16日
アイデアよもやま話 No.2635 健康経営で業績アップ!
企業は一人一人の従業員の生産性あるいは効率の向上によって業績が左右されます。
そして、その源は従業員の心身の健康状態です。
そうした中、10月20日(日)放送の「サキどり↑」(NHK総合テレビ)で健康経営について取り上げてたのでご紹介します。
 
健康経営とは、アメリカの経営心理学者、ロバート・H・ローゼンさんが提唱した概念で、企業の持続的成長を図る観点から従業員の健康に配慮した経営手法のことです。
従業員の健康が企業および社会に不可欠な資本であることを認識し、従業員への健康情報の提供や健康投資を促すしくみを構築することで、生産性の低下を防ぎ、医療費を抑えて、企業の収益性向上を目指す取り組みを指します。
そのきっかけとなったのは、「ザ・ヘルシーカンパニー」というタイトルの本(ロバート・H・ローゼン著、1992年発行)です。
 
今、日本国内でもこの健康経営に舵を切る企業が続々と登場しています。
例えば、美容室用スタイリング剤メーカー、中野製薬(京都市)では椅子の代わりにバランス・ボールを使用しています。
筋力トレーニングやストレッチに使われるフィトネス器具、働きながら健康になれるのではと去年導入しました。
従業員用の椅子だけでなく会議室や食堂、更には応接室の椅子までもがバランス・ボールに代えられています。
そのきっかけとなったのは、長年腰痛に悩まされてきた中野 耕太郎社長がバランス・ボールで改善したことです。
その結果、トップダウンで社内に導入することになったのです。
 
一方、三井グループの総合化学メーカー、三井化学では社員みんなが部活動に励んでおり、毎晩のようにスポーツイベントを開催しています。
そこには運動量に応じてマイレージが溜まるという仕掛けがあります。
溜まったマイルで電動歯ブラシや万歩計などの商品がもらえるのです。
マイレージ合戦は全国10ヶ所の事業所で同時開催、2500人が参加するビッグイベントとなっています。
 
この企画を考えたのは産業医の土肥 誠太郎さんです。
きっかけは5年前、精神面の不調を訴え会社を休む社員が急増したことでした。
原因は2008年のリーマンショックです。
世界的な不況がこの会社にも及び、最大952億円の赤字を計上、先行きへの不安が従業員の健康を蝕んでいたのです。
 
危機感を感じた土肥さんが注目したのがアメリカの健康経営です。
1990年代からアメリカでは多くの企業が経営戦略の一環として社員の健康改善に乗り出し、業績アップにつなげていたのです。
そこで、土肥さんは会社の経営陣に直談判しました。
「社員の健康は、会社の健康に直結する」という社内規則を今こそ実行に移すべきだと訴えたのです。
 
こうして会社を挙げてヘルシーマイレージに取り組むこと5年、肥満の人は15%減り、メンタル疾患などによる休業日数も30%減りました。
更に、この取り組みをきっかけに他の部署にまたがる社員同士のコミュニケーションも活発になり、仕事の相談も出来るようになりました。
更に、銀行も評価、なんと170億円の融資を実行しました。
社員の健康改善に努める姿勢が健全な経営だと判断されたのです。
 
一人一人の社員が健康であることが会社の業績を左右する時代、そこで社員の生活習慣を徹底指導する会社も登場しています。
 
また、神戸市では「職場対抗 神戸歩king決定戦」を開催しています。
市内の中小企業を中心に57チーム、262人が参加、同じ職場でチームをつくり、9月から来年2月までの半年間歩いた歩数で競い合うというイベントです。
参加者に配られるのは万歩計、歩数データをパソコンに転送すればチームの順位がリアルタイムに表示されます。
このイベントを企画したのは市の地域健保課です。
係長の丸山 佳子さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「(中小企業は)会社の経営が一番の優先で、社員の健康作りは気になるけど後回しになっていたり、そこを何とか行政が主体となってうねりを作ることで事業所内でも取り組みやすくなるのではないかと・・・」
 
健康経営は従業員の健康促進を図ることにより企業の業績アップにつなげるというのが目的です。
でも考えてみれば、それは従業員のプライベートな生活をも元気にしてくれるし、医療費の削減効果もあります。
そういう意味で、企業による健康経営、あるいは自治体などによる地域レベルでの健康促進活動は長寿社会を生き生きしたものにしてくれます。
ですから、会社勤めの従業員のみならず、退職後の高齢者までを対象としたこのような健康促進の取り組みが今後増々求められると思います。

 
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