2012年10月12日
アイデアよもやま話 No.2267 京大山中教授のノーベル賞受賞で加速する再生医療!
様々な種類の細胞に変化出来るiPS細胞について今まで何度となくお伝えしてきました。
iPS細胞は医療のあり方を根本から変えると変えると期待されています。
そうした中、10月8日(月)、iPS細胞を作成した京都大学 iPS細胞研究所 所長の山中伸弥教授(50歳)がノーベル生理学・医学賞を受賞されました。

体の細胞を人為的な操作で受精卵のような発生初期の状態に戻すことが出来ることを実証し、再生医療や難病の研究に新たな可能性を開いた点が高く評価されたのです。
2006年8月のマウスのiPS細胞作成の論文発表からわずか6年でのスピード受賞です。

以前、山中さんの講演を二度ほど拝聴したことがありますが、研究に対する情熱、そして日本人として研究の成果を上げることへの強いこだわりを感じました。
また、関西人らしい、ウィットに富んだ語り口もとても印象的でした。

人の身体は60兆個もの細胞で出来ていますが、2006年に4種類の遺伝子を細胞に入れるだけの簡単な方法で皮膚の細胞を受精卵に近い状態まで若返らせることに成功し、
2007年には人間のiPS細胞の作製にも成功しました。
iPS細胞は、全身のあらゆる細胞に変化出来る多様性があり、ほぼ無限に増やすことが出来ます。

ちなみに、共同受賞されたイギリスのガードン博士は、50年ほど前にオタマジャクシの細胞の核を、核を除去した卵子に移植することで同じ遺伝子を持つオタマジャクシを誕生させました。
こうして、成熟した動物の体細胞にも全ての細胞に変化する能力が残っていることを示し、iPS細胞作製への道を開いたのです。

また、アメリカ留学時の恩師の言葉「明確な展望を持って、一生懸命働け(Vision and hardwork)」の実践がスピード受賞に結びついたといいます。

山中さんは、
ノーベル賞受賞後の会見で次のようにおっしゃっています。
・野球は3割打つと大打者ですが、研究は1割バッターだったら大成功です
 1回成功するためには9回失敗しないとその1回の成功はやってこない
 何十回とトライしても失敗ばかりということもしょっちゅう起こる
 止めたくなる、泣きたくなる、そういう二十数年だった
・まだ仕事は終わっていない、研究はこれからが勝負である
・iPS細胞技術を完成させる必要があるので、舵取り、牽引役を私がする
・2020年を目処に臨床応用を目指している

iPS細胞で期待されているのは再生医療だけでなく、病気のメカニズムの解明と治療薬の開発です。
難病の患者から皮膚などの提供を受けてiPS細胞を作れば、病気がどのように発症するのか観察することが出来ます。
更に、様々な薬を試すことで治療薬の開発につながる可能性があります。
ですから、これまで根本的な治療法のなかったパーキンソン病やアルツハイマー病、糖尿病、がん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などなど、難病の治療法として大いに患者の方々から期待されています。

山中さんのノーベル賞受賞関連記事に接してあらためて以下のように思いました。
・アイデアは多くの人たちのつながりの中でかたちになる (アイデアは既存の要素の組み合わせである)
・アイデアをかたちにするためには開発資金も必須である (人や技術だけで、資金なしにはアイデアをかたちに出来ない)
・アイデアはかたちになり、人の役に立ってこそ価値がある

さて、iPS細胞の研究支援として今後10年間で200億〜300億円の資金が政府より提供されるといいます。
一方、iPS細胞の研究者の9割は有期雇用の不安定な立場にあるといいます。
ですから、10年間は有期雇用の研究者も安心して働けるのです。
今回のノーベル賞受賞の陰にはこうした有期雇用研究者による貢献も大きいはずです。

こうしたより多くの研究者が働ける場を少しでも多くするためにもより多くの画期的なアイデアをかたちにすることが必要なのです。

 
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