2011年02月01日
アイデアよもやま話 No.1736 太陽光照明−究極の省エネ照明システム!
12月19日(日)放送の夢の扉〜NEXT DOOR〜(TBSテレビ)で「究極の省エネ照明システム」をテーマに取り上げていましたのでご紹介します。

LEDをはじめ、省エネ照明が進化している現在、究極の省エネ照明を実現しようとしている人がいます。
その人とは、金属の卸売り会社である、株式会社マテリアルハウス(東京都大田区)の社長、新井 秀雄(61歳)さんです。
新井さんが取り組んでいるユニークな照明システムとは、電気を使わずに太陽の光を取り込んで室内の照明として使う、という太陽光照明です。
この太陽光照明は、既に沖縄県庁やJAXAなどの公共施設や全日空などの企業に導入されています。

新井さんは、屋上のガラス室、あるいはビルの各階の窓から太陽光を取り込んで特殊な筒(ダクト)でビル内部や家屋の中に取り込む光ダクトというシステムを開発しました。
その原理は、ダクトの中に光を入れて反射させながら光を運ぶ、というものです。
ダクトの内部は、ドイツから取り寄せた反射率の高い鏡です。
光が弱まるのを最小限に抑えながら太陽光を運ぶので離れた場所でも太陽光を照らせる、といいます。

また、太陽光を使うには、太陽光が動き続ける、明るさが変化する、という難点があります。
そこで、新井さんが開発したのが世界初の光ダクトシミュレーターです。
光の入る角度を計算し、ダクトを設置する最適な位置や大きさを正確にはじき出します。
細かい調整は、シミュレーションを行わないと設計不能なのです。

また、L字型やクランク型など、いろいろなかたちのダクトを開発しました。
更に、ダクトの中に円筒状にしたアルミの鏡を敷き詰め光を拡散させ強い光を柔らげる工夫も施しました。
こうして、光ダクトの実用化に世界で初めて成功したのです。

太陽光照明の最大のメリットは、日中の照明用の電力は使わなくて済むので省エネルギーで地球環境対策に非常に効果がある、ということです。
ただし、太陽光照明は天候に左右されてしまいます。
太陽光が弱い場合の対策として、センサーが明るさを感知し、内蔵した蛍光灯が点くことで明かりを補います。
JAXAが太陽光照明システムを導入して7年、その省エネ効果は年間でおよそ25%、金額ベースでは約77万円といいます。(番組による試算)

ところが、開発当初は家族や社員から猛反対を受けました。
それでも新井さんは信念を曲げず、開発に突き進みました。
新井さんは、大学は経済学部だったのですが、光の反射を計算するために必要な三角関数を一から猛勉強し、一人で黙々と試作品を作り続け垂直型の光ダクトをようやく完成させたのです。
その2年後の1997年、初めて沖縄県庁から光ダクトの発注があったのです。
こうして、設置後の現在もその性能は変わらず利用者を驚かせています。

そして、2009年、経済産業省はゼロエネルギービル(ZEB)構想を発表しました。
それは、太陽光発電などの省エネ技術を集め、ビルのエネルギー消費を減らす狙いを持っています。
光ダクトシステムは、その推奨技術の一つに取り上げられました。

新井さんは、番組の中で次のようにおっしゃっていました。
「だれもやったことのないことを初めて何とかするので、お手本はないですから、そこを歩くのは物を作る人たちにとって一番やりたい面白い部分だと思うんですね。」
「ビジネスだけに縛られないで、面白いとかこの道をとことん深めて極めたいという思いのある研究は後で役に立つんじゃないかと思います。」

そんな新井さんは、新たな挑戦として光ダクトを小規模小売店舗の採光装置として活用するための開発を進めています。
想定しているのは、郊外にある平屋建てのコンビニです。
全国のコンビニの3分の1を郊外型として試算すると、その省エネ効果は、一般家庭約40万戸分の照明電力を削減出来るのです。(番組による試算)

しかし、そこにはこれまで以上の難しい課題がありました。
それは、明るさです。
オフィスなどに必要な明るさはおよそ500ルクス、ところがコンビニのように商品を良く見せる照明は倍の約1000ルクスが必要なのです。
そこで、実験を開始し、結果はほぼ成功でした。
ところが、新たな課題が発生しました。
それは、照度に合わせて室内温度が上がってしまうため、夏場は空調負荷を上げる可能性が出てきたのです。
その課題も、角度の違う鏡を組み合わせることにより昼間の太陽光を遮り、夕方にはより多く取り込む、という新たなアイデアで乗り越えることが出来ました。

新井さんは、光ダクトの利用を広めるため植物工場研究会などでの講演活動も行っています。
そんな新井さんのマイゴールは、「2016年までに住宅10,000戸、ビル1,000棟に光ダクトを入れて省エネを進めたい。」です。

アイデアよもやま話 No.1726 ネイチャー・テクノロジーで究極のエコ社会が実現!?
で、自然の知恵を私たちの生活に生かす研究についてご紹介しました。
新井さんの開発した光ダクトや太陽光発電、そしてネイチャー・テクノロジー、など自然や生物の生き方に学ぶ技術は再生可能な社会の実現にとても効果があります。
ですから、これらの技術を組み合わせて普及させれば、それぞれの効果のもたらす限界を超えた相乗効果により今までは考えられなかったような効果が期待出来るはずです。

 
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