2011年01月20日
アイデアよもやま話 No.1726 ネイチャー・テクノロジーで究極のエコ社会が実現!?
12月12日(日)放送の夢の扉〜NEXT DOOR〜(TBSテレビ)で「自然はテクノロジーの宝庫」をテーマに、驚くべきネイチャー・テクノロジーについて取り上げていました。
ネイチャー・テクノロジーで実現する究極のエコ社会の一旦をでご紹介します。

自然界の生き物は、みな生き抜くために優れた知恵を持っています。
自然の知恵、すなわちその仕組みを私たちの生活に生かす研究、それがネイチャー・テクノロジー(Nature Technology)です。
そして、そのネイチャー・テクノロジーの提唱者、すなわち第一人者が東北大学大学院・環境科学研究科教授の石田 秀輝さん(57歳)です。

石田さんは、番組の中で次のようにおっしゃっていました。
「冬になると葉の根っこにある”離層”という細胞にスイッチが入り、落ち葉は落ちる。」
「そのメカニズムが材料にあれば使える。」
「今、リサイクルとか言っているが、結構力任せにネジをはずしたりしているが、ある条件さえ与えたらぱらぱらっと分解してしまう。」

「みんなが当たり前に思っていることが実は今の材料科学からすると、最先端の材料科学の知識を使っても理解出来ないくらいすごいものが自然の中に山ほどある。」
「地上に当たり前に大量にあるカルシウムと困っているCO2を使って車のボディが出来ました、橋が出来ました、と言ったらすごいでしょ。」
「そういうふうに思ったら、自然なんて本当に宝の宝庫なんですよ。」
「僕たちはそれを見る目を持っていないだけ。」

「僕たちも本来生物の一種なんだから本当はその中に入らなきゃいけないのに、我々だけが違うということをやってきてしまった結果、どうしようもなくなってしまった。」
「我々人間も自然の中の一つだし、我々が作るテクノロジーも自然の中の成果なんですよ。」
「それが全部つながってる。」
「命がつながって初めて循環が起こるわけですから。」

石田さんの研究からは、生き物の生態からヒントを得た、例えば次のような成果があげられます。
・カタツムリの殻からどんな汚れも水だけで落とすタイル
 カタツムリの殻は、どんな汚れも雨だけでキレイになる
 油性マジックで汚しても水をひと拭きするだけでキレイになる
 カタツムリの殻には、表面にミクロ単位の細かい凹凸が無数にあり、その凹凸で汚れが強く付着するのを防いでいる
 そのため、雨水さえあれば殻と汚れの間に水が入り込み、汚れをはがすことが出来る
 水だけで汚れを落とすタイルは、洗剤も化学薬品も必要ないので環境にも優しい
 既に、ビルの外壁用に商品化され、半永久効果があり、メインテナンスフリーなので特に掃除が難しい高層ビルで威力を発揮している (ただし、商品化されている製品は油性マジックは落ちない)
 油汚れを落とすので、通常ステンレスが使われるキッチンのシンクにも採用されている (INAXエクセラガードキッチン)  
・トンボの羽からほとんど風のない状態でも回る風車
 トンボの羽は、すごい弱い風でも羽で風をきちっと受けて浮力を作ることが出来る構造を持っている
 それを裏返して考えると、弱い風でも回る風力発電機が出来るのではないか
 従来の風車は、風速数メートル必要だが、風車の羽にトンボのような凹凸を付けることによって、軽くウチワを扇ぐ程度の風速0.7m/秒で回り始めた
 風速0.9m/秒を越すと勢いよく回転し、数wの発電も確認出来た

ネイチャー・テクノロジーは、今世界中に広がりをみせています。
そして、「エコで粋?! 自然に学ぶネイチャー・テクノロジーとライフスタイル展」が国立科学博物館(東京・上野)で2月6日(日)まで開催されています。
世界中で行われている研究を一同に集め、広く人々に知ってもらおう、というものです。

展示物の一部は以下のとおりです。
・時速約100キロで泳ぐマグロをヒントに作られた水着
 マグロが速く泳げるのは、体内から分泌液を出し、身体全体に滑りを出すことで水の抵抗を少なくしているからです
 この仕組みを応用した水着は、表面にわずかな凹みを作り、そこに水を入り込ませ膜を作ることで同じ仕組みを実現している
・超撥水素材
 蓮の葉は、葉の表面に無数にある凹凸のおかげで水をはじく
 この仕組みを傘などに応用している
・テープ
 ヤモリは壁や天井を自在に歩くが、その秘密は足の裏にある無数に生えた体毛にある
 細かい毛が密集しているため、体毛が壁などに絡みつくことにより落ちないで歩ける
 この仕組みを応用したのが、表面に無数の毛をつけた、べた付かずに繰り返し使えるテープです
 この技術が進めば、ヤモリのように壁や天井を自在に歩けるようになるかも知れない

ネイチャー・テクノロジーの可能性は無限だ、と
石田さんはおっしゃいます。
また、石田さんの番組の最後の次の言葉は、まったくそのとおりだと思いました。
「環境をどうとかではなくて、とにかく僕たちの暮らし方を変えないことには今の地球環境問題の解決は出来ない。」
「そういう暮らし方、ものづくり、あるいは新しい文化、文明っていうのを作っていかなきゃいけないんでしょうね。」
ネイチャー・テクノロジーの可能性は無限にある。」
「地球を救う可能性だもん。人類を救う可能性がある。」
「それはだって自然しか完璧な循環を持っているものないんだもん。」
「そこに学ばないでどこに学べばいい。」

石田さんのマイゴールは、次のとおりです。
「2015年までに心豊かな暮らしを創るテクノロジーをたくさん生み出すぞーー!!」

石田さんのいろいろな言葉に接し、アイデアは発見するものである、ということを思い出しました。
自然の摂理を深く理解し、そこから人類の生活に役立つ方法を見つければ、自然に負荷をかけることなくより快適な生活を実現することが出来るのです。
そうしないと、自然に負荷をかけるいろいろなものを作り出してしまい、結局現在のような持続不可能な社会が出来上がってしっまたのです。
ですから、人類の暮らしを限りなく自然本来の仕組みに近づけていけば、人類も自然の一部として自然と一体化した状態で生存することが出来るようになるのです。

ということで、人類がライフスタイルを変えれば、地球環境問題も化石燃料の枯渇問題も解決できるのです。
逆に、このまま化石燃料を使い続ければ、人類の未来だけでなく、地球の未来も悲惨な状況になることは間違いありません。
人類に地球環境をそこまで追い込む権利があるのか、はなはだ疑問を感じてしまいます。
人類は、遅ればせながら持続可能な社会を築くべきなのです。
そして、今回ご紹介したネイチャー・テクノロジーは、エコで最も自然の理に適った方法なのです。
ですから、人類はもっともっと自然に学ぶ必要があると思います。

そういう意味で、ネイチャー・テクノロジーという学問を新たに切り開いた石田さんは、長い目でみれば素晴らしい貢献をした人物として人類の歴史に残る、と私は思います。

 
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