2010年12月23日
アイデアよもやま話 No.1702 駐車場ビジネスの進化!
 11月14日(日)放送のテレビ番組がっちりマンデー (TBS) のテーマは「24時間貸駐車場 タイムズのヒミツ」でした。
最近、よくタイムズ時間貸駐車場を見かけますが、その数は全国で9500カ所ほどだそうです。
自動車の台数にして計30万台分で、年間売り上げは950億円です。
タイムズはパーク24株式会社(西川 光一社長)によって運営されていますが、今や駐車場ビジネスNo.1の地位にあります。
今回はタイムズ成長のヒミツについてお伝えします。

タイムズの登場は1971年です。
創業社長は現社長の父、故西川清さんで、当初駐車禁止のプレートを売る会社、ニシカワ商会でした。
その後、ニシカワ商会は自動式のクルマ止め、パークロックの代理店販売を開始しました。
売り上げは順調に伸びていたものの、創業社長は、パークロックの販売は売ったらその1回だけ、もうちょっと安定してお金が入ってくるビジネスはないものか、と考えました。
そこで、パークロックを使って自分で時間貸駐車場を作れば儲かるはず、と閃きました。

こうして、1991年、ロック付き24時間無人時間貸駐車場、タイムズ1号店を上野にオープンしました。
なお、この1号店を含め、タイムズの駐車場の99%以上は土地オーナーから借りて運営しています。
土地オーナーはただ土地を貸すだけで、クルマ止めや料金精算機、看板など駐車場を作るための費用はタイムズが負担しているのです。
土地オーナーには、借り賃が支払われるのですが、駐車する自動車が多くても少なくても賃料は毎月一定です。
ですから、土地オーナーは毎月安定して一定額の賃料を得ることが出来ます。
一方、タイムズではたくさん自動車を駐車させることが出来れば、それだけ儲かるのです。

そこで、タイムズではどうやったらより多く駐車してもらえるかを大研究しました。
その結果、タイムズは次のような方針を打ち出しました。
・小さな駐車場を数多く点在させる
 駐車場はお客さんに見つけてもらわないと意味がないが、数が多ければ近辺に来た自動車が見つけやすい
・駐車料金は奥まったところにある駐車場ほど低料金になるように設定している
 常に満車だとお客がいつ来ても満車だということで客離れを起こしてしまうため、必ず1台か2台空いているようにし、いつ来てもタイムズは駐車出来る、という状態を作ることを理想としています。

ということで、パーク24には駐車場に適している空き地を探す営業マンが全国に300人もいます。
また、パーク24にはTONIC(タイムズ オンライン ネットワーク インフォメーション センター)というサポ−トシステムが2003年に導入されています。
全国に設置されている自動精算機が無線ネットワークでつながっていてリアルタイムで各駐車場の利用状況や売り上げなどが分かるのです。
これによって、人気のない駐車場のテコ入れも出来ます。
一方、タイムズの利用客は携帯電話で行きたい場所の近くにあるタイムズの駐車場を簡単に探すことが出来るのです。
TONIC導入によるこのようなメリットにより、タイムズの利益は年間5%以上アップしました。

更に、五反田タイムズコンタクトセンターには80名のオペレーターが無人駐車場のリアルタイムの映像を見ながらお客からの電話を受けています。
東京と広島で総勢250名のオペレーターが24時間体制でスタンバイしているのです。
そして、TONICのサポートにより何と遠隔操作で出口のバーをオープンすることも出来てしまうのです。
以前から、無人駐車場で何か故障が発生した場合、どのように対応するのだろう、と疑問に思っていましたがこれでナゾが解けました。
TONICの導入は2代目社長が周りの反対を押し切って、経常利益が27億円の時40億円を投資して強行したのです。

パーク24では、更に各地の市役所などと契約してタイムズ駐車場として運営し始めています。
 このアイデアもとても素晴らしいと思います。
まさに、駐車場の有効活用です。
従来、施設の営業時間内のみ駐車場としていたのが、TONICのお陰で営業時間外も無人駐車場としてパーク24により運営されるのです。
川崎市役所では、パーク24に駐車場運営を委託したことにより管理運営費を年間5000万円削減出来た、ということです。
そのうえ、土地オーナーとしても年間数百万円の賃料収入が新たに得られるようになったのです。

そして、2006年にはタイムズステーション池袋がオープンしました。
こちらは6種類のお風呂が楽しめる温浴スパや最新のエステ、レストランなどのある複合施設です。
しかも、タイムズがビル自体を所有してスパ施設と駐車場を共に運営しているのです。
スパ施設の利用客は、スパを利用した後にそのままお化粧せずに車に乗り込めるので利用客から喜ばれているそうです。

現在、パーク24が最も力を入れているのがカーシェアリング事業です。
利用客は、車を使いたい時にパソコンや携帯電話で自宅の近くにあるタイムズにある車を予約します。
そして、駐車場の車に会員カードをかざせば車内のグローブボックスに置いてあるキーを取り出して乗ることが出来るのです。

なお、西川社長によると、日本全国で必要とされる駐車場の台数は2400万台で、実際に供給されているのは700万台です。
ですから、国内の駐車場数は需要の30%にも達しておらず、まだまだ足りないのです。

ということで、タイムズのビジネスモデルは、カーシェアリングによる車の有効活用、そして駐車場の利用時間の拡張による土地の有効利用という2つの観点からとても素晴らしいと思います。
タイムズ駐車場の普及に伴い、ドライバーが駐車し易くなり違法な路上駐車の削減も期待出来ます。
そして、周りを見渡してみると、タイムズに限らず24時間無人時間貸駐車場はどんどん増え続けているようです。

さて、ここでアイデアよもやま話 No.843 近江商人の教え! を思いだしました。
タイムズの駐車場ビジネスモデルは、土地オーナー、利用者、そしてパーク24の三者にとってメリットがある、まさに”三方良し”なのです。
ですから、このビジネスモデルは間違いなく各地の銀行や病院、そしてスーパなどの様々な駐車場をターゲットに日本全国を席巻していくはずです。
更には、このビジネスモデルはそのまま海外展開も出来るはずですから、これからもどんどん成長していく可能性を秘めています。
そして、このビジネスモデルを支えているのがIT、すなわちTONICなのです。
ですから、トータルシステムとして同業他社がすぐには真似出来ないと思われます。

最後に、タイムズに対して、私は駐車場での太陽光発電の導入、電気自動車用充電器の設置、およびカーシェアリングへの電気自動車(EV)の追加を提案したいと思います。
これらの実施により、自然エネルギー発電、およびEVの普及に弾みが付き、持続可能な社会へと一歩前進出来るのです。

 
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