2010年05月11日
アイデアよもやま話 No.1508 企業による自然エネルギーの利用!
5月3日(月)放送のワールドビジネスサテライト (テレビ東京)で「進む自然エネルギー利用」をテーマに取り上げていましたのでご紹介します。

ゼネコン大手の鹿島建設が去年稼働させた研究施設、鹿島技術研究所(東京・調布市)では自然エネルギー利用の実用化を目指した技術の検証が行われています。
その対象には、地下水・地中熱を利用した冷暖房システムと共に”PVソルエアパネル”という太陽光と太陽熱のハイブリッドシステムがあります。
”PVソルエアパネル”は、表は太陽電池パネルで、裏側は太陽熱を吸収して放散するフィンがついています。
この発電と熱利用で太陽エネルギーの約90%を利用出来ます。

これらの取り組みの背景には、経済産業省が主催で昨年ZEB(ゼロエネルギービル)という委員会が立ち上げられたことがあります。
そして、鹿島建設では2020年頃にZEBの第一号を出したい、という目標を設定しています。
なお、ZEBとは、自然エネルギーなどを活用し、正味のエネルギー消費量をゼロにする建築物のことです。
また、先月、経済産業省は、資源エネルギー見直しの基本方針で、2030年までに新築建築物全体のエネルギー消費量をゼロにする、という目標を掲げました。
その需要創出効果は年間8千億円と言われ、今技術開発が加速化しています。

今月完成予定のみなとみらいセンタービル(神奈川県横浜市)では、従来に比べCO2排出量32%削減が売りです。
その仕組みは、直射日光を吹き抜けの中に入れる”ティー・ソレイユ”という採光装置にあります。
3種類の鏡を備えており、太陽の位置を追尾する「1次ミラー」で光を反射し、その光を「2次ミラー」が集め、更に吹き抜けの壁面に設置された「3次ミラー」が各階やエントランスにまでまんべんなく運びます。
それが電気照明の代わりを果たすのです。
太陽エネルギーを電気に変換するのではなく、太陽エネルギーを直接利用するのです。
更に、1フロア約1000坪のビルの内側に柱のない壁柱工法により直射日光を遮り空調の節約につながるのです。
また、通常は壁の内側の面積で計算して賃貸するので、従来のビルに比べて約5〜10%増しの面積で借りられる、という借り手のメリットもあります。
環境面と居住性を向上させた複合技術でオフィス不況のなか約80%の稼働を確保している、とのことです。
ちなみに、このシステムを建設したのは大成建設です。

中小企業のマテリアルハウス(東京・大田区)が独自に開発したのは、”光ダクト”という自然の光を人工照明と同じように照明として使えるようにした技術です。
”光ダクト”とは、内側に反射率95%の鏡面板を使用し、天井部分で集めた太陽光をダクトの中で反射させて照明に利用するする、というものです。
また、独自に開発したシミュレーションソフトで日中常に採光する設計を可能にしました。
更に、”光ダクト”内の構造を変えることによって光のシャワーのように光が拡散した照明や木漏れ日のように揺らぐ照明も作り出せます。
反射の原理のみを利用し、最大で日中の照明電力の約85%削減することが出来ます。

今回ご紹介した鹿島建設の取り組みは、太陽光エネルギーなどを電気に変換する、というものです。
また、大成建設やマテリアルハウスの取り組みは、太陽エネルギーを直接利用する、というものです。
太陽エネルギーと言ってもその活用にはいろいろな方法があるのです。
恐らく、今後10年くらいは試行錯誤でいろいろな取り組みがなされると思われます。
その中からどんな技術が定着するのかとても楽しみです。

ちなみに、オフィスビルのエネルギー消費の割合は以下の通りです。 (出典:日建設計総合研究所)
照明・コンセント 27.4%
冷暖房       21.2%
空調        21.1%
給湯        16.3%
その他       13.9%

日本にはさまざまな先進的省エネ技術が既に沢山あります。
これらをパッケージ化して海外に輸出すれば、世界規模でCO2排出量の削減に貢献出来ますし、日本経済の活性化にもつながると思うのです。
とても残念に思うのは、最近の報道によると中国やアメリカによるこのような動きが先行しており日本が出遅れていることです。
是非、官民一体で効率よく取り組んでいただきたいと思います。

 
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