2009年10月30日
アイデアよもやま話 No.1343 増える特許オークション!
10月7日(水)放送のワールドビジネスサテライト (テレビ東京)で”特許オークション”について取り上げていましたのでご紹介します。

リーマンショック後、特許の申請や運用のサービスを提供する日本技術貿易株式会社では、不況の陰で特許を売りたい、という企業の相談が増加しているそうです。
特許の権利を維持するためには、毎年莫大な年金を支払っていかなければいけないからです。

この会社では、特許を売却したい、というニーズを見込んで今年4月から特許をネットオークションで取引するサービスを本格的に始めました。
日本企業だけでなく、中国や韓国の注目度も高まりつつあるそうです。
しかし、買い手が中国など東アジアの企業となると、売り手の日本企業は売却をためらうことが多い、といいます。
中国の企業がある技術を買って、その技術を使った安い製品が日本に流れ込むという懸念があるからです。

一方、埋もれた特許を積極的に中国企業に提供して新たな収益源に育てようとする試みが始まっています。
それは、次世代DVDの規格争いでブルーレイに破れたHD DVDです。
仕掛け人は、DVDの父と呼ばれる、元東芝のDVD開発トップだった、メモリーテック株式会社最高技術顧問、山田尚志さんです。

山田さんは、番組の中で次のようにおっしゃっていました。
「技術的にはこちらの方が良いとおもっていたからすごく残念だった。」
「ある特許が中国で使われれば、マーケットは日本の10倍あるのだから、間違いなくライセンスを提供した企業にもメリットはある。」
「うまく誘導して特許料を払ってもらう方が特許で一生懸命中国に作らせないより建設的ではないか、と思います。」
「中国の独自規格に日本の特許をあえて使ってもらうことでライセンス料を稼ぎ、中国の巨大市場への足がかりもつかめる。」
「開発に投資しないと新しい特許は生まれない。」
「今まで持っている特許を守るだけで何もしないなら売った方がいい。」
「売って、その収入で新しい技術に投資していくやり方の方が正しい。」

今、中国の家電量販店にはCBHD(チャイナ・ブルー・ハイ・ディフィニション)という次世代DVDプレイヤーが並んでいます。
ブルーレイに対抗して作られた中国政府肝いりの独自規格です。
このCBHDのベースとなっているのはHD DVDの特許技術です。
一度は死んだはずのHD DVDの技術は、中国で復活していたのです。
中国は、「自主創新」を掲げ次世代DVDや携帯電話の通信方式など、中国の独自規格の開発に力を入れています。

日本で開発した特許技術を海外企業に使ってもらうことでライセンス料を稼ぐか、特許そのものを売却するか、についてはいろいろな意見があると思います。
原則として、世界中の特許技術があらゆる企業に適正な価格で売却されるか、ライセンス使用されて世の中の役に立つ新商品が生まれてくることには大賛成です。
でも、少なくとも日本の産業の柱となるような、例えばiPS細胞関連の再生医療技術などに関する特許は国内で確保しておくような仕組みが必要だと思います。
少なくとも、特許技術がパテント・トロールのような企業の餌食になるようなことだけは避けて欲しい、と強く思います。

 
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