前回、アイデアよもやま話 No.6224 本当にディープシークはチャットGPTより格段に開発コストが低いのか?で、実際のところは、ディープシークはチャットGPTの半分程度の開発コストがかかっている可能性が高いとお伝えしました。
そこで、今回は、1月28日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)を通して、AIチャット、ディープシークが抱えている、開発コストを下げる“蒸留”という手法を巡る大きな問題ついて取り上げていたのでご紹介します。
ディープシークは、業界大手、オープンAIの生成AIの技術を不正に使って、自らのAIモデル、「ディープシーク」を構築したのではないかという疑いが出ているんですけども、使われている可能性があると指摘されているのが、業界で“蒸留”と呼ばれている手法です。
通常、生成AIは膨大な情報を学習させて育てていくんですけども、この“蒸留”という手法では、既に知識を得て、賢くなった生成AIを模倣して学習します。(こちらを参照)
こちら(右側)の方が、ゼロから生成AIを育てていくよりも効率が良く、情報をため込んで大きくなり過ぎたAIをコンパクトにするため、よく使われています。
そして、今回、ディープシークは、オープンAIが作った生成AIを不正に蒸留したのではないかという疑いが出ているんです。
オープンAIは、自分たちの技術をもとに競合するAIを作ることを明確に禁止しているからなのです。
つまり、ディープシークの強みとされた低コストは、不正によって実現したのではないかと疑われているんです。
一方で、こちらはディープシークの台頭で、1月27日に急落したエヌビディアの株価です。
この点、ハイテク大手、インテルの前CEO、パット・ゲルシンガーさんは「株価急落という反応は間違っている。仮にAIの費用が下がれば、AIの市場は広がる。」とSNSに投稿しまして、この急落した場面で、エヌビディア株を買ったことを明らかにしています。
1月28日、エヌビディアの株価は約9%上昇する展開となりました。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組の内容を以下にまとめてみました。
・ディープシークは、オープンAIの生成AIを不正に“蒸留”という手法で模倣し、自社のAIモデルを構築した疑いがあると報じられている
・蒸留とは、高性能な既存AIを模倣して効率的に学習させる方法で、正しく使えば合法だが、オープンAIは自社技術の不正利用を禁止しており、今回のディープシークの手法には疑念がある
・これにより、ディープシークの低価格戦略が不正に基づいていた可能性が指摘されている。
・1月27日にはディープシークの台頭が影響してエヌビディア株が急落したが、前インテルCEOは「AIのコストが下がることは市場の拡大につながる」と評価し、株を買い増し、翌28日、エヌビディア株は約9%反発した
では、ディープシークは、オープンAIの生成AIを不正に“蒸留”という手法で模倣したという見方がありますが、具体的に“蒸留”とはどのような手法で、この手法を使うか、使わないかで、どの程度開発コストが違うかについては添付1を参照下さい。
まとめは以下の通りです。
項目 内容
蒸留とは 高性能モデルの出力を模倣して学習させる手法
メリット 開発コストを大幅に削減、効率的なモデル構築が可能
コスト差 数十億円〜100億円 vs 数百万〜数千万円(蒸留なら)
問題点 元モデルの出力が利用規約違反で使われた場合、「不正行為」とされる恐れあり
ディープシークがもしこの「蒸留」を不正に用いたなら、安価なAIチャットの実現の裏に、重大な知的財産リスクが潜んでいるということになります。
では、ディープシークがこの「蒸留」を不正に用いたかどうかは、どのように確認出来るかについては添付2を参照下さい。
結論は以下の通りです。
「不正な蒸留」かどうかを立証するには、技術的・法的・契約的に多層的な調査が必要です。
一般ユーザーや研究者が判断するのは難しいですが、オープンAIや米政府が本格調査に乗り出せば、証拠が発見される可能性も十分あります。
では、ディープシークがこの「蒸留」を不正に用いたことが判明されれば、どういうことになるかについては添付3を参照下さい。
まとめは以下の通りです。
項目 想定される影響
法的責任 OpenAIからの訴訟・損害賠償請求
政治的影響 米政府による制裁・Entity List入り
ビジネス損失 顧客・パートナー離脱、売上喪失
社会的信用 中国製AI全体への不信感拡大
技術開発の停滞 正規GPU・APIの調達困難に
ということで、生成AI、ディープシークは、今や、低価格の生成AIとして、世界的に脚光を浴びていますが、「蒸留」という不正行為を巡り、大きな問題を抱えているのです。
次回は、ディープシーク、およびチャットGPTのセキュリティ上の問題、あるいは制約について、お伝えします。
添付1)
ディープシークは、オープンAIの生成AIを不正に“蒸留”という手法で模倣したという見方があるが、具体的に“蒸留”とはどのような手法で、“蒸留”という手法を使うか、使わないかで、どの程度開発コストが違うか?
ChatGPT:
“蒸留”(Distillation)とは、既存の高性能なAIモデル(教師モデル)を簡略化して、小型かつ軽量な別のモデル(生徒モデル)に知識を移す手法です。元々は2015年頃から知られていた技術で、特に生成AIの分野では、大規模なモデルを「まねて学習」する手段としてよく使われます。
🔍 蒸留とは何か?
■ 手法の概要
- 教師モデル(例:GPT-4) を用いて、大量の入力に対して出力(応答、翻訳、分類など)を生成。
- その入力と出力のペアを用いて、生徒モデル(例:独自モデル)に「模倣学習」させる。
- 生徒モデルは、教師モデルの出力を再現することを目的にトレーニングされ、知識のエッセンスだけを「抽出=蒸留」する。
■ 目的
- 計算資源の削減(小型化)
- 推論速度の向上(軽量化)
- モデルの移植性向上(モバイルやエッジ向け)
💰 開発コストの差(蒸留あり vs なし)
比較項目
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蒸留あり(模倣学習)
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蒸留なし(フルスクラッチ)
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学習データ収集コスト
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非常に低い(教師モデルの出力を使うだけ)
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非常に高い(数兆トークンの収集と整備が必要)
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学習ステップ数
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少なくて済む(効率的)
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非常に多く必要(数百万〜億ステップ)
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計算リソース
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数分の1〜10分の1程度
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数千〜万枚のA100/H100 GPUが必要
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開発期間
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数か月でも可能
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1〜2年かかることもある
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コスト(推定)
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数百万〜数千万円
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数十億円〜100億円以上も
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例:OpenAIはGPT-4の開発に数千億円規模のコストをかけたとされますが、仮にディープシークが蒸留を用いたなら、1/50〜1/100以下のコストで似た性能を持つモデルを得た可能性があります。
⚖️ なぜ「不正」になる可能性があるのか?
- OpenAIはAPI経由で得た出力を「再学習(模倣)」に使うことを利用規約で明確に禁止している。
- これに反して教師モデルとしてGPT系モデルを使い、その出力を利用して学習させた場合、「不正な蒸留」とみなされる可能性がある。
- 特に商用目的でそのように構築された場合、知的財産権の侵害や契約違反として法的問題に発展することがあります。
📌 まとめ
項目
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内容
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蒸留とは
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高性能モデルの出力を模倣して学習させる手法
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メリット
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開発コストを大幅に削減、効率的なモデル構築が可能
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コスト差
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数十億円〜100億円 vs 数百万〜数千万円(蒸留なら)
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問題点
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元モデルの出力が利用規約違反で使われた場合、「不正行為」とされる恐れあり
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ディープシークがもしこの「蒸留」を不正に用いたなら、安価なAIチャットの実現の裏に、重大な知的財産リスクが潜んでいるということになります。
添付2)
では、ディープシークがこの「蒸留」を不正に用いたかどうかは、どのように確認出来るか?
ChatGPT:
ディープシークがOpenAIなどの他社の生成AIモデルを「不正に蒸留」して自社モデルを構築したかどうかを確認する方法は非常に難解ですが、以下のような 技術的・法的・調査的手段 によって可能性を探ることができます。
🔍 1. モデル出力の比較分析(ブラックボックス検査)
▸ 方法:
- 同一のプロンプト(質問や入力文)を、OpenAIのGPTモデルとDeepSeekのモデルに投げて、出力のパターンや表現を比較します。
- 特定の表現、構文パターン、応答の構造が極端に似通っている場合、蒸留の可能性を疑う根拠になります。
▸ 例:
- GPT-4が独自に持つ特徴的な誤り、癖、知識の断片が、DeepSeekにも同じように現れるなら、それは模倣学習(蒸留)した可能性を示します。
🔍 2. 内部重みやアーキテクチャの比較(ホワイトボックス検査)
▸ 方法:
- DeepSeekが自社モデルの重みや構造をオープンソースとして公開している場合、その構造を精査して、GPT系との一致度を確認。
- もし特定のレイヤー構造、初期重みのパターン、学習率の傾向などが一致すれば、コピーの痕跡とされる可能性も。
※ただし、多くの蒸留モデルは独自構造+模倣学習で構築されるため、「完全一致」はしないよう工夫されています。
🔍 3. API使用履歴の調査(契約違反の証拠収集)
▸ 方法:
- 米政府やOpenAIが、DeepSeekやその関係者の**API利用記録(IPアドレス、使用量)**を調査する。
- 利用規約で「再学習目的での使用禁止」に違反する使い方をしていた場合、契約違反として法的証拠になります。
⚖️ 4. 米国政府の国家安全保障関連調査
- アメリカ政府は国家安全保障の観点から、中国企業が米国製先端AIを不正に活用していないかを厳しく調査しています。
- 特に、NVIDIA GPU(A100/H100)の違法輸出や、APIを通じた知識抽出・逆解析のような手法が使われた場合、制裁対象になることがあります。
📌 まとめ:確認手段一覧
手段
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内容
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実現可能性
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出力比較分析
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回答の類似性を分析
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◎ 非公開モデルでも可能
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内部構造の照合
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モデル構造・重みの比較
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△ ソース公開時のみ可能
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API利用履歴の調査
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規約違反の証拠収集
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△ OpenAI側の内部情報が必要
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米国の調査・制裁
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国家安全保障・知財侵害の観点
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○ 現在進行中の可能性あり
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✅ 結論
「不正な蒸留」かどうかを立証するには、技術的・法的・契約的に多層的な調査が必要です。
一般ユーザーや研究者が判断するのは難しいですが、OpenAIや米政府が本格調査に乗り出せば、証拠が発見される可能性も十分あります。
添付3)
ディープシークがこの「蒸留」を不正に用いたことが判明されれば、どういうことになるか?
ChatGPT:
もし DeepSeek(ディープシーク) が、OpenAIの生成AIモデル(例:GPT)を不正に「蒸留」して、自社のAIモデル(DeepSeek-R1など)を構築していたことが事実として判明すれば、以下のような重大な影響・結果が考えられます。
🧨 1. 知的財産権侵害による訴訟リスク(米国法)
- OpenAIはAPI利用規約で「出力の再学習」などを明確に禁止しており、それに違反して蒸留を行っていた場合、契約違反・著作権侵害・営業秘密の不正使用として法的措置が取られ得ます。
- たとえば、以下の法的根拠が用いられる可能性があります:
- DMCA(デジタルミレニアム著作権法)
- 米国営業秘密保護法(Defend Trade Secrets Act)
- 契約法・不正競争防止法
✅ 結果: 数億〜数十億ドル規模の損害賠償請求や、米国内での利用禁止など。
🌐 2. 米国政府による制裁・輸出管理違反の可能性
- 蒸留を不正に行うために、OpenAI APIやその出力を組織的に収集していた場合、技術輸出管理違反や国家安全保障上の懸念から、米国政府が制裁リスト(Entity List)入りさせる可能性があります。
✅ 例:
- **Huaweiや中興通訊(ZTE)**のように、NVIDIA GPUの輸入禁止や、米国企業との取引禁止に発展する可能性。
🧨 3. グローバル企業からの信用失墜とパートナーシップ喪失
- DeepSeekのモデルを使っている企業(例:シンガポール、東南アジア、欧州などの開発企業)が、**「不正に構築されたAI」**を使っていると見なされることで、利用を停止または契約打ち切りへ。
- 特に、政府機関・大企業・教育機関などは法的リスクを避けるため、一斉に利用中止を検討するでしょう。
🧩 4. 中国政府への波及影響
- 中国政府は現在、独自AIの発展を国家戦略としていますが、DeepSeekのような有望企業が**「不正技術で成長していた」と国際的に認定されれば、国家戦略の正当性が揺らぐ**リスクがあります。
- 国際ルール違反が繰り返されれば、WTOや多国間AI協定での孤立も進みます。
🧾 5. 国内・国際メディアによる批判と企業ブランドの崩壊
- 「中国製AIモデルは模倣ベースで不正に構築された」という報道が出れば、DeepSeekの企業価値・技術評価・採用力が急落。
- これは、中国のAIスタートアップ全体の信頼にも悪影響を与える恐れがあります。
✅ まとめ:不正蒸留が判明した場合の影響
項目
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想定される影響
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法的責任
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OpenAIからの訴訟・損害賠償請求
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政治的影響
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米政府による制裁・Entity List入り
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ビジネス損失
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顧客・パートナー離脱、売上喪失
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社会的信用
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中国製AI全体への不信感拡大
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技術開発の停滞
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正規GPU・APIの調達困難に
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