1月15日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でマフラーの技術でイチゴ栽培について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。
愛知県幸田町にあるフタバ産業株式会社の工場。
エンジン車に欠かせない、ある部品を製造しています。
フタバ産業の久恒季之執行役員、は次のようにおっしゃっています。
「エンジンから(クルマの)床下をずうっと通って、最後に自動車がちょっとチラ見出来るところがマフラーとなっています。」
この日、工場で作られていたのがトヨタのハイブリッド車、プリウスのマフラー。
エンジンから出る排気ガスを浄化する重要な部品です。
フタバ産業は、マフラーなど、エンジン系部品が売り上げの半分以上。
バッテリーで動く電気自動車では不要となるため、5年後には売り上げが約10%減ると予測されています。
久恒さんは次のようにおっしゃっています。
「(今後、どのようにして経営戦略を立てていくのかという問いに対して、)やはり新たな事業にも取り組んでいこうと。」
「(マフラーなど、)ここで使っております排気系の部品の技術を応用して、農業事業を手掛けています。」
マフラーの技術を活用した農業とは。
こちらのビニールハウスの中はイチゴが。
フタバ産業 アグリーフ事業開発部の斉藤隆部長は次のようにおっしゃっています。
「こちらがアグリーフCO2システムで、ハウス栽培では寒くなってきますと暖房機が稼働して排気ガスを出す。」
暖房機が排出する窒素酸化物などをマフラーの技術を活かした装置が浄化。
CO2だけをドラム缶に溜めます。
そして、溜めたCO2をイチゴの苗の辺りに放出する仕組みです。
CO2は作物の光合成を促すため、収穫量が約30%増えるのだといいます。
斉藤さんは次のようにおっしゃっています。
「CO2を与えると、葉っぱが大きくなり、養分の吸収量は上がるので、(イチゴが)大きくなり、味にも係わるのかなとは思います。」
既に全国の農家に納入されているというこちらの装置。
今後も改良を進めます。
斉藤さんは次のようにおっしゃっています。
「今、まだ100%のCO2を回収出来ていないので、回収率を上げていくとか、溜められるCO2を増やすとか、性能アップして、より多くの農家さんに使っていただけるようにしていきたいと思っています。」
自動車部品メーカーの課題としまして、中部産業連盟の自動車サプライヤーセンターの酒井哲治さんは次のように指摘しています。
・自分たちの技術の強みと弱みを理解していない
・業界がピラミッド構造で、得意先から図面などが下りてくる
⇒新しいことをやろうと思っても、その一歩が踏み出せない
自動車部品メーカーの存続は、日本経済にとっても大きなテーマですが、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は次のようにおっしゃっています。
「この酒井さんのお言葉が、本当に端的に表していますね。」
「私も自動車サプライヤー業界は結構知っている方だと思うんですが、最大の課題は“受け身からの脱却”なんですよ。」
「長い間、顧客、例えば完成車メーカーに、いつまでに、こういうものを、これだけ作って下さいって言われて、それを受け身で作るというかたちで、ずっとやってきたので、自分たちの力で新しいものを作って、新しい顧客を開拓するところがすごい弱いんです。」
「実は、私もある自動車サプライヤーに「もっと飛び込み営業をしたら、どうですか」って言ったことがありまして、「飛び込み営業って、どうすればいいんですか」って言われた。」
「それくらい、そういう経験がないんですね。」
「だから、ここのマインドを変えていくっていうのが大事だと思います。」
そこで、入山先生に生き残り策をいくつか挙げていただきました。
「他にもあるんですが、あえて言えばということですけど。」
「まずね、一社依存、1つのお客さんに頼るのではでなくて、独立系ぐらいの気持ちでやるってことですね。」
「それから、どうしてもお客さんの中にはまだまだ、相手を下請けって見るような会社もあるので、適切な良いお客さんを選びましょうと。」
「それから、せっかく良いものを作っているのであれば、いいお客さんに対して適切な値上げ交渉をやっていきましょう。」
「そして、最後は、これから自動車業界、どうなるか分かりませんから、それ以外の新しい領域に、どんどん、どんどん参入して飛び込み営業していきましょうということですよね。」
「(この新しい領域への参入の方法について、)私の一つのお勧めは展示会ですね。」
「日本て、だいたい企業が同じ業界の同じ展示会にずっと行くんですよ。」
「そうじゃなくて、違った業種の展示会に行ってみることで、新しいお客さんが捉まるってことは結構あるので、こういうチャレンジをして欲しいですね。」
「(自動車産業は500万人くらいの雇用を日本で支えているので、この業界で変われるか、変われないかで日本経済が相当変わってくるという指摘に対して、)インパクトは極めて大きいですね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
(EVシフトによる影響 - マフラーなどの製造メーカー、フタバ産業の事例)
・フタバ産業(愛知県幸田町)の工場では、エンジン車に欠かせない部品、マフラーを製造している
-エンジンから出る排気ガスを浄化する重要な部品である
・フタバ産業は、マフラーなど、エンジン系部品が売り上げの半分以上を占める
・バッテリーで動くEVでは不要となるため、5年後には売り上げが約10%減ると予測されている
(フタバ産業の今後の経営戦略)
・マフラーなど、ここで使っている排気系の部品の技術を応用して、農業事業を手掛けている
-アグリーフCO2システムで、ハウス栽培では寒くなってくると暖房機が稼働して排気ガスを出す
-暖房機が排出する窒素酸化物などをマフラーの技術を活かした装置が浄化し、CO2だけをドラム缶に溜める
-溜めたCO2をイチゴの苗の辺りに放出する仕組みである
-CO2は作物の光合成を促すため、収穫量が約30%増える
-CO2を与えると、葉っぱが大きくなり、養分の吸収量は上がるので、イチゴが大きくなり、味にも係わるという
・こちらの装置は既に全国の農家に納入されている
・今後も改良を進める
-まだ100%のCO2を回収できていないので、回収率を上げていくとか、溜められるCO2を増やすとか、性能アップして、より多くの農家さんに使っていただけるようにしていきたい
(自動車部品メーカーの課題 - 中部産業連盟の自動車サプライヤーセンターの酒井さんによる指摘)
・自分たちの技術の強みと弱みを理解していない
・業界がピラミッド構造で、得意先から図面などが下りてくる
⇒新しいことをやろうと思っても、その一歩が踏み出せない
(早稲田大学ビジネススクールの入山教授の指摘)
・自動車サプライヤー業界の最大の課題は“受け身からの脱却”である
-自分たちの力で新しいものを作って、新しい顧客を開拓するところがすごい弱い
-ここのマインドを変えていくのが大事である
・自動車産業は500万人くらいの雇用を日本で支えているので、この業界が変われなければ、日本経済へのインパクトは極めて大きい
(入山教授の掲げる生き残り策)
・一社依存からの脱却
-1つのお客さんに頼るのではでなくて、独立系ぐらいの気持ちでやる
・適切な良い顧客の選択
-相手を下請けと見下すような会社もあるので、適切な良い顧客を選ぶ
・適切な値上げ交渉
-製造した良い製品について、良い顧客に対して適切な値上げ交渉をする
・新しい領域への参入
-積極的に飛び込み営業していく
・新しい領域への参入方法として、一つのお勧めは違った業種の展示会に行くことである
-違った業種の展示会に行ってみることで、新しいお客さんが捉まることは結構ある
番組でも指摘しているように、EVシフトによる自動車部品メーカーの存続は、日本経済にとっても大きなテーマです。
そこで、現在、自動車産業は500万人くらいの雇用を日本で支えているといいますが、EVシフトが進むと、雇用にどれくらいの影響が及ぶかについて、添付を参照下さい。
EVシフトは、日本の自動車産業の雇用構造を大きく変えるのです。
部品・整備関連で最大30万人の雇用減が見込まれる一方、新たな産業で約12〜20万人の雇用創出が予想され、差し引きで10〜15万人規模の再配置・再訓練が必須となります。
そこで、番組の冒頭で紹介されたフタバ産業のように、ガソリン車に使用される自前のマフラー関連技術をイチゴ栽培に適用するといった企業も現れているのです。
差し引きで10〜15万人規模の再配置・再訓練が必須となることから、フタバ産業のように、自動車部品メーカーの経営者の方々には、何とか、自前のガソリン車関連技術を適用出来る新しい分野を見つけて、ゼロから出発する意気込みで新規事業に取り組んでいただきたいと思います。
添付)
現在、自動車産業は500万人くらいの雇用を日本で支えているというが、EVシフトが進むと、雇用にどれくらいの影響が及ぶか?
ChatGPT:
以下に、日本の自動車産業が抱える約500万人の雇用がEVシフトによってどのように変化するのか、減少のインパクトと**新たな雇用創出の可能性(概算)**を含めて、包括的にまとめます。
🚘 EVシフトによる雇用への影響(日本国内)
◆ 現在の自動車関連雇用:約500万人(広義)
- 自動車産業そのもの:約85万人(自工会データ)
- 間接産業(部品、物流、販売、整備など)を含めると:約500万人(全就業人口の約7%)
🔻 EVシフトによる雇用減少(影響予測)
EVは以下のように構造が簡略化されるため、必要な部品や作業工程が減少:
部門
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影響内容
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エンジン・トランスミッション部品製造
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構成部品点数が数万点 → 数千点へ。従来部品の多くが不要に。
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整備・修理
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オイル交換・エンジン調整不要。保守点検の回数も減少。
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燃料供給業(ガソリンスタンド等)
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ガソリン需要減少 → 廃業・再編が進行中。
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機関
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試算内容
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経済産業省(2021年発表)
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最大30万人規模の雇用が影響を受ける可能性(特に部品下請け)
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自動車総連(労組)
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数十万人規模の再配置・再教育が必要と警鐘
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日経予測など
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中小製造業に集中する15〜20万人の雇用喪失のリスク
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🔺 EVシフトによる新たな雇用創出(予測)
分野
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内容
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想定雇用数(概算)
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バッテリー製造
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セル、モジュール、パック製造
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約5〜10万人(国内電池産業拡大)
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ソフトウェア・AI関連
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自動運転、車載OS、車両制御
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約3〜5万人
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EVインフラ整備
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充電設備、エネルギーマネジメント
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約2〜3万人
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モビリティサービス
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MaaS、カーシェア、データ分析
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約1〜2万人
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リサイクル・再資源化
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使用済み電池、車両素材循環
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約1万人
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➡ 総計:約12〜20万人程度の新規雇用が期待される
⚖️ 総合評価:差し引きのインパクト
雇用項目
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規模(概算)
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減少する雇用(主に部品・整備)
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約20〜30万人
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新たに生まれる雇用(バッテリー、IT、インフラ等)
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約12〜20万人
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差し引きのインパクト
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最大で10〜15万人のネット減少の可能性
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🧭 対応のカギ:リスキリングと産業構造転換
- 部品メーカーのEV対応支援(試作・電動化支援)
- 整備士・工員への再教育
- 産業横断型の雇用移動支援
- 政府の「グリーン成長戦略」「GXリーグ」などに、人的支援策が盛り込まれつつある
✅ 結論
EVシフトは、日本の自動車産業の雇用構造を大きく変える。
部品・整備関連で最大30万人の雇用減が見込まれる一方、新たな産業で約12〜20万人の雇用創出が予想され、差し引きで10〜15万人規模の再配置・再訓練が必須となる。