昨年12月17日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で選挙運動でのブロードリスニングの有効性について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。
AIエンジニアの安野貴博さん(添付1参照)が出馬した都知事選の他にも衆院選、兵庫県知事選、それから世界ではアメリカの大統領選挙など、SNSを通じたネットの力が選挙結果にも影響すると、まさに今年は分岐点でした。
こうした状況について、安野さんは次のようにおっしゃっています。
「まさにそうで、これまではネットの盛り上がりっていうのは何回かあったと思うんですけど、でも実際に得票結果とか、選挙の結果に影響を及ぼすところまでは全然行ってなかったわけですよね。」
「なんですか、今年に入ってきて(選挙の)実際の勝敗にも影響を及ぼすようになってきたということで、まさに転換点を迎えてきてるなと思います。」
「(今までもSNSはありましたし、「SNS選挙」という言葉もあったと思うんですけど、なぜ、今年、2024年だったのかという問いに対して、)ずっとSNSを使う人の数は増え続けてきていて、最近になって、ご高齢の方々にもユーチューブであるとか、動画メディアを見るという習慣がどんどん普通なものになってきたということは大きいと思います。」
安野さん自身も都知事選でSNSを活用されていましたけど、自身の情報発信だけではなくて、有権者からの意見の受け取りも新たな手法を活用していたということなんですね。
その一つがブロードリスニングという手法(添付2参照)で、AIを使って多くの声を収集して、それを見える化するというものなんです。
既存の意見募集ですと、数が膨大ですと、全ての情報を見ることが出来ず、受け手側はパンクしてしまいます。
そこで、ブロードリスニングでは、数万規模の意見をAIが処理して、視覚的に集約することで、効率的に意見を把握することが出来るということなんですね。
実際に都知事選のSNS上の安野さんに関する投稿をAIが集約したものがこちらなんですけど、これについて、安野さんは次のようにおっしゃっています。
「こちら、いろんな点がカラフルなものがあるんですが、一つ一つの点がSNS上に投稿された、私に関するコメントになっております。」
「で、そのコメントをAIが分類して、同じテーマのものは同じ色にまとめてくれているようになっています。」
「なので、このマス、全体を見ると、どういったテーマが、どれだけつぶやかれているのか、全体像を一目で概観する、見ることが出来るようになっております。」
実際、どんなコメントがあるかといいますと、こちらですね。
紫色、「AIを使いこなせる人が都知事になれば、行政のあり方が根本から変りそうです。」とありますが、実際に変わりそうかという質問に対して、安野さんは次のようにおっしゃっています。
「AIどころか、ITもまだまだ使いこなしてないと思うんで、変わり幅はすごくあると思います。」
次に、こうした色分け表示だけでなく、テーマごとのコメントの内容分析、代表的なコメントの例示ですね。
概要までAIが作って表示してくれるということなんです。(こちらを参照)
安野さんは次のようにおっしゃっています。
これについて、安野さんは次のようにおっしゃっています。
「都知事選では、こういった集まった意見を効率的に収集して、マニフェストを選挙戦中に17日間で合計85回バージョンアップして、その材料がこういったかたちで集約されていたというかたちになります。」
東京都でも、安野さんがアドバイザーとして入って、2050年代の東京はどうなって欲しいかという意見募集を、このブロードリスニングを導入してやったということなんですね。
こちら、現在の分析結果の画面です。
安野さんは次のようにおっしゃっています。
「(災害対策、子育て支援などありますが、選挙だけでなく、行政にも活用出来るかという問いに対して、)そうですね。」
「例えば、交通の混雑解消など、意見の絶対数、数としては少ないものの、特定の意見のまとまりを捉えることが出来るというのが特徴でして、人の目でこのコメント全部テキストで、文字で読んで、情報を捉えようとすると、少数の意見だけど、塊があるものは最も見落としがちになるものなので、こういうふうに可視化することによって政策をつくるうえで、とても参考になるものだと思います。」
「(ネット上だと、結構乱暴な言葉遣いとか、強い言葉があるが、これを見ると、割と難しくて、穏当な言葉ばっかりだが、)攻撃的な発言とか、ヘイトスピーチみたいなものはAIで言葉を置き換えながら、穏当なものにしたりしています。」
「(こういうのは実際に企業活動、ものを売ったり、マーケティングですとか、ビジネスにも使えるのかという問いに対して、)有効だと思っていまして、マーケティングの領域では、本当にこれから使われていくものになると思います。」
「コールセンターの領域などでは、VOCと言って、ボイス・オブ・カストマー、顧客の声を可視化するという試みは10年以上前から、やられてきたんですけど、その進化版になるかなと。」
「で、サービスとかプロダクトの改善に活かせるようなものになります。」
「(素人目から見ると、こういうのはアメリカが進んでいると思いがちになるが、日本はどうかという問いに対して、)ただ、やっぱり、このレベルで何かが出来るようになってくるのは2年前ぐらい。」
「AIが、チャットGPTのようなものが出始めてきた頃からなので、まだ、これから、こういったものを活用するレースは始まったばっかりかなと思います。」
「(まだ日本企業でも戦えるのかという問いに対して、)はい。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組の内容を以下にまとめてみました。
・都知事選の他にも衆院選、兵庫県知事選、それから世界ではアメリカの大統領選挙など、SNSを通じたネットの力が選挙結果にも影響する、まさに2024年は分岐点だった
(こうした状況についての安野さんの見解)
・これまではネット盛り上がりっていうのは何回かあったが、実際に得票結果とか、選挙の結果に影響を及ぼすところまでは全然なかった
・2024年になって、選挙の実際の勝敗にも影響を及ぼすようになってきたということで、まさに転換点を迎えてきている
-SNSの利用者は増加傾向で、最近は高齢者もユーチューブや動画メディアを見るという習慣がどんどん普通なものになってきた
(ブロードリスニングの有効性)
・安野さん自身も都知事選でSNSを活用していたが、自身の情報発信だけでなく、有権者からの意見の受け取りも新たな手法を活用していた
・その一つがブロードリスニングという手法で、AIを使って多くの声を収集して、それを見える化した
-既存の意見募集だと、数が膨大で、全ての情報を見ることが出来ず、受け手側はパンクしてしまう
-一方、ブロードリスニングでは、数万規模の意見をAIが処理して、視覚的に集約することで、効率的に多くの意見を把握することが出来る
(安野さんの都知事選でのブロードリスニングの活用)
・実際に都知事選のSNS上の安野さんへのコメントをAIが分類して、同じテーマのものは同じ色にまとめてくれた
-全体を見ると、どういったテーマが、どれだけつぶやかれているのか、全体像を一目で概観することが出来た
-色分け表示だけでなく、テーマごとのコメントの内容分析、代表的なコメントも例示される
-概要もAIが作って表示してくれる
・安野さんは、都知事選で、集まった意見を効率的に収集して、マニフェストを選挙戦中に何度もバージョンアップしていた
(安野さんの東京都でのアドバイザー活動)
・安野さんは、アドバイザーとして、2050年代の東京はどうなって欲しいかという意見募集を、ブロードリスニングを導入して実施した
・災害対策、子育て支援などあるが、選挙だけでなく、行政にも活用出来る
・例えば、交通の混雑解消など、意見の絶対数、数としては少ないものの、特定の意見のまとまりを捉えることが出来る
-可視化することによって政策をつくるうえで、とても参考になる
-攻撃的な発言やヘイトスピーチなどはAIで言葉を置き換えながら、穏当なものにしたりしている
(期待される、今後のブロードリスニングの活用)
・ブロードリスニングは、企業活動やビジネスにも有効で、今後の活用が期待出来る
-コールセンターの領域などではボイス・オブ・カストマー、顧客の声を可視化するという試みは10年以上前から実施されてきたが、ブロードリスニングはその進化版になる
-サービスやプロダクトの改善に活かせるようなものになる
・ブロードリスニングがこのレベルで何かが出来るようになってくるのは2年前ぐらいで、これから、こういったものを活用するレースは始まったばかりで、まだ日本企業も海外勢と戦える
ということで、誰の目にもSNSを通じたネットの力が選挙結果にも影響することが実感出来たということから、まさに2024年は分岐点だったと言えます。
都知事選に無所属で立候補した、ほとんど無名の安野さんが5位/約15万票も獲得出来たことはブロードリスニングの有効性を物語っています。
また、候補者が有権者に対して選挙公約を訴える手段としてSNSを活用するだけでなく、安良さんの都知事選での選挙活動に見られたように、ブロードリスニングという新たな手法を使って、候補者がSNSでの有権者の声を収集・分析してマニフェストの妥当性を確認し、修正出来るという意味でも、2024年はAI+ブロードリスニングによる選挙運動の革命が起きた年として選挙の歴史に刻まれるのではないかと思います。
なお、番組の中でも指摘されているように、ブロードリスニングの手法は、あらゆる分野において、サービスを提供する側がサービスを受ける側の“声なき声”を把握するうえでとても効率的、かつ効果的で、AIというベースがあってこそ、活用出来るツールなのです。
ですから、“AI+ブロードリスニング”はセットで、今後ともどんどん進化して、より洗練されたツールに成長していくと期待出来ます。
同時に、こうした手法により、生産性の向上も少なからず図られていくと見込まれます。
添付1)
安野貴博さんとはどんな人物か?
ChatGPT:
🧑💼 安野貴博(あんの たかひろ)とは?
1990年12月1日生まれ、東京都出身。AIエンジニア、起業家、SF作家、政治活動家。
開成高校から東京大学工学部システム創成学科へ進学し、松尾豊教授の研究室で機械学習を学んだ後、AIと社会の関係を主軸にキャリアを展開。コンサルティング、スタートアップ創業、SF創作、そして選挙出馬と、多分野で活動している新世代の知識人です。
📈 経歴と活動
▶ エンジニア・起業家として
- 東京大学卒業後、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)で経営戦略の実務を経験。
- AIチャットボット開発の**株式会社BEDORE(現PKSHA Communication)**を創業。
- 法務AIのMNTSQ(モンテスキュー)株式会社を共同創業。自然言語処理などの技術で企業法務を支援。
▶ SF作家として
- 2019年:『コンティニュアス・インテグレーション』で第6回日経星新一賞一般部門優秀賞を受賞。
- 2021年:『サーキット・スイッチャー』で第9回ハヤカワSFコンテスト優秀賞を受賞し、デビュー。
- 技術的リアリズムと社会課題を融合させた作風が特徴。
▶ 政治・社会活動家として
- 2024年:東京都知事選に無所属で立候補(5位/約15万票獲得)。
- マニフェスト策定にAIやブロードリスニング(市民参加型合意形成)を導入。
- 選挙後はGovTech東京のアドバイザーに就任。東京都のデジタルガバナンスに貢献。
🏅 主な受賞歴
- 星新一賞(2019)
- ハヤカワSFコンテスト(2021)
- 第19回マニフェスト大賞・グランプリ(2024)
💬 特徴と思想
- 「テクノロジーは社会を良くする手段」という哲学のもと、AIによる政策形成や民主主義の再設計に挑戦。
- 政治とテクノロジー、物語(SF)を結びつける活動スタイルで、次世代型の知的リーダー像を体現。
添付2)
ブロードリスニングとは?
ChatGPT:
「ブロードリスニング(Broad Listening)」とは、特定の話題や意見だけに集中せず、広範で多様な声や視点を意識的に聞き取る態度・手法のことです。政策立案、経営、ユーザーリサーチ、対話型AIなどの分野で重要な概念として注目されています。
🔍 定義・意味
ブロードリスニングとは、
- 一部の「声の大きい人」だけでなく、
- 「声をあげにくい人」「少数派」「周辺にいる人」の声も、
- 偏見なく、意識的に拾い上げる姿勢や技術。
つまり、「社会のサイレントマジョリティ」や「周縁の声」も含めて耳を傾ける行為です。
🏛 活用される分野と具体例
- 【行政・政策】
- 市民の意見収集(例:パブリックコメント)において、活発な意見層だけでなく、声を上げない層のニーズも考慮。
- 例:地方自治体の「対話型合意形成」や「熟議民主主義」の手法
- 【ビジネス・マーケティング】
- 顧客フィードバック分析において、熱心なファンやクレーマーだけでなく、「大多数の沈黙ユーザー」の潜在的ニーズにも着目。
- UXリサーチやペルソナ設計時に、多様な層の意見を平等に扱う。
- 【メディア・報道】
- 一部の過激な主張に偏るのではなく、多様な視点・当事者の声をバランスよく拾い報道。
- 【AIと倫理】
- AIモデルの訓練や判断において、「誰の声を学習させるか?」という倫理的問題に関わる。
- 包摂的AI開発(Inclusive AI)との関連。
🎯 なぜ重要なのか?
- 民主主義や社会的合意形成において、「聞いていない声」への感度が公平性と正当性を左右する。
- ビジネスでは、少数派の声にこそイノベーションの種が隠れている場合がある。
- 単に「聞く」のではなく、「どんな声が聞こえていないか」にも注意を向ける必要がある。
✅ 関連用語
- ナロウリスニング(Narrow Listening)…自分に都合の良い意見だけを聞く偏った聴取。
- サイレントマジョリティ(物言わぬ多数)
- ボトムアップ・ポリシー
- エンパシックリスニング(共感的傾聴)
必要であれば、ブロードリスニングを具体的に実践しているプロジェクトや企業、行政の事例もご紹介できます。ご希望ありますか?
添付3)
ブロードリスニングを具体的に実践しているプロジェクトや企業、行政の事例は?
ChatGPT:
ブロードリスニング(Broad Listening)を実践しているプロジェクト・企業・行政の具体例は以下のとおりです。分野ごとに紹介します。
✅【行政】国内外の具体例
- 神戸市「熟議民主主義」プロジェクト(日本)
- 市民を対象とした無作為抽出による市民会議を実施。
- 声の大きい一部の層に偏らず、幅広い属性の意見を政策形成に反映。
- 例:介護保険料や人口減少対応の議論など。
- オーストラリア・ビクトリア州「Deliberative Engagement」
- 政策決定の初期段階から一般市民・マイノリティ層の声を集めて反映。
- 交通・環境・医療など、多分野にわたって実施。
- 台湾「vTaiwan(ヴァイ・タイワン)」
- インターネット上で市民の多様な意見を収集し、AIでクラスタ分析。
- 「社会的コンセンサス」が見られる論点に限って政策提言。
- 特定の意見に偏らない合意形成型のデジタル民主主義。
✅【企業・ビジネス】
- IDEO(米国)
- デザイン思考の実践で「エクストリームユーザー(極端な利用者)」の声も積極的に聴取。
- 誰も気づいていない潜在ニーズを掘り起こすためのブロードリスニング。
- 日本マイクロソフト
- 職場のDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)を重視し、従業員サーベイを定期実施。
- 発言しにくい従業員の声を拾うために、匿名フィードバックやAI解析を導入。
- NEC「社会価値創造」プロジェクト
- スマートシティや高齢者向けソリューション開発において、「声なき声」=高齢者・地方在住者の意見もヒアリング対象に。
✅【非営利団体・研究プロジェクト】
- コクリ!プロジェクト(国立情報学研究所/NPO)
- 市民参加型意思決定支援システム。マイノリティやサイレントマジョリティの声を対話型AIや可視化ツールで拾い上げる。
- OpenIDEO(米国)
- 世界中の人々から多様な社会課題に対する解決策を募集し、多文化・多背景の声を開発プロセスに反映。
📝 補足
ブロードリスニングを実現するには以下のような技術・仕組みがよく用いられます:
- 無作為抽出による市民選出
- AIによる意見のクラスタ分析・感情解析
- 匿名アンケートや多言語対応ツール
- オンラインとオフラインのハイブリッド対話設計