2025年04月24日
アイデアよもやま話 No.6190 日本・サウジの経済連携強化へ!
1月13日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で日本・サウジの経済連携強化について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付けは全て番組放送時のものです。

日本政府と企業が今、経済協力のためにサウジアラビアを訪問しています。
脱炭素技術やゲームなど、日本が強みを持つ分野で様々な合意が結ばれましたが、サウジの国家プロジェクトに食い込む日本企業があります。
巨大市場を手に入れて経済成長につなげることが出来るのでしょうか。

これは人間の大腸を再現した模型の映像。
何かポリープのようなものが。
これをAIを活用した最先端の内視鏡で見てみると、
富士フィルム メディカルシステム事業部の山田優さんは次のようにおっしゃっています。
「この色も変わったと思うんですけども、ライトを変えることで、鑑別モードにしております。」
「ここに黄色のものが出ていると思うんですけど、黄色なので、今後、悪性のがんになる可能性が高いポリープ。」(こちらを参照)

AIががんの腫瘍か、そうでないかを判断するAI内視鏡です。

開発したのは富士フィルム。
2020年からAI内視鏡を国内市場でに投入を始めておりますが、今回、新たなニーズを見つけた先がサウジアラビアです。
1月12日から開かれた日本・サウジ官民経済会合。
ここで富士フィルムはサウジ最大手の病院グループなどとAI医療の展開などで合意したと発表したのです。
その狙いは、サウジの国家プロジェクトにあります。
サウジは、「ビジョン2030」として、2030年までに脱炭素経済への移行の他に、国の平均寿命を74歳から80歳に引き上げる長寿化を掲げています。
ここに従来の治療だけでなく予防医療のニーズをキャッチしたといいます。
富士フィルムミドルイーストの近藤道夫社長は次のようにおっしゃっています。
「(サウジで)医療機器ビジネスの展開拡大をする絶好のチャンスと捉えております。」
「(国家ビジョンの)長寿命化をかなり具体的に挙げられておりまして、そのためには、今は“治療”中心なんですけども、それを“予防”にシフトして行って。」

これは、富士フィルムが2021年にインドでオープンさせた、がん検診などの健診センター「NURA」(インド・ベンガール)。
AIを駆使した富士フィルムの医療機器で構成し、日本で根付いている定期検診の文化を経済成長著しいグローバルサウス諸国で広めていく戦略です。
近藤社長は次のようにおっしゃっています。
「ビジネスとして大きな可能性を秘めていると考えております。」
「まずはサウジ国内で(健診)1号センターをオープンいたしまして、これを横展開していくことと、UAEとかカタールなど湾岸諸国での展開。」
「イラク、エジプト、ケニア、南アフリカといった新興国でも幅広く展開していきたいというふうに考えております。」

富士フィルムは、サウジ国内に地域統括会社を設立し、予防医療ビジネスを拡大させる狙いです。
今回、サウジを初めて訪問した武藤経産大臣は、富士フィルムを含む15案件の経済合意を支援しました。
(この経済合意の)中でも注目されたのがスペースクール株式会社(東京都港区)の脱炭素素材です。
太陽の熱をブロックし、宇宙に逃がす放射冷却素材。
スペースクールと名付けた、この素材を建物の外側に貼るだけで、中の温度を冷やすことが出来るとして注目されています。(参照:アイデアよもやま話 No.5852 地球温暖化対策として注目すべき放射冷却素材!
このスタートアップもサウジの国家プロジェクトにビジネスチャンスを見出しています。
スペースクールの末光真大CEOは次のようにおっしゃっています。
「紅海のリゾート開発をしていて、今、まさに建設中なんです。」
「その労働者のハウスの上に全てスペースクールを貼り付けています。」

サウジでは、風光明媚な紅海沿岸を巨大な観光拠点に開発するプルジェクトが進行しています。
夏場は50℃近い温度の中で工事が進む中で、スペースクールを作業員の一部の住居に貼り付けたのです。
末光CEOは次のようにおっしゃっています。
「(その効果について、)スペースクールを貼っているのが青色の線。」
「貼っていないのがオレンジ色の線。」
「人がいる状態で30%の省エネを確認しております。」
「(具体的にどんなビジネスの広がり方になるかという問いに対して、)この素材は、見て分かるように、ポリマー・樹脂で出来ておりますので、この石油由来の製品でカーボンニュートラルが出来る。」
「サウジアラビアは世界最大の産油国ですので、“現地生産”というところまでもっていきたいと考えています。」

解説キャスターの原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「(サウジ側と日本政府、経済協力は双方にとって、どんな狙いがあるかという問いに対して、)日本にとってみると、原油調達が肝ですよね。」
「原油の輸入、日本が中東から9割を依存している。」
「で、サウジがその半分を占めている。」
「一方で、サウジ側にとってみると、「ビジョン2030」で新産業の育成を謳っていますので、それに協力する企業を求めているということですね。」
「(「ビジョン2030」の中で、長寿化もあるということで、医療分野での日本企業への期待は大きいということかという問いに対して、)やっぱり経済が豊かになって、寿命の長寿化っていうのは進んでいるんですけど、一方で生活習慣病は非常に増えていて、とりわけ糖尿病の患者が目に見えて増えているところなんですね。」(こちらを参照)
「ですので、お金はあるので高額な医療設備に対する需要は大きいんですけど、市民の健康サービス全般を底上げすることも今、大きな課題になっている。」
「(もう一つ、再生エネルギーへの期待もあるという指摘に対して、)それは大きいですね。」
「脱炭素の未来と再生エネルギー大国への転換、これが大きな野望として掲げられているんです。」
「今回の節電効果のある放熱幕という技術に対する関心もエネルギー構造の転換を見越した動きなわけですね。」
「また、サウジは砂漠に中国企業と世界最大の太陽光発電所を建設する計画なんですね。」
「ですので、今、日本の自動車メーカーは、サウジは5番目の輸出先なんですけども(こちらを参照)、中国企業がEVの分野で進出すると競争が激しくなる。」
「そういうことを見越すと、両国関係を良好にするということは極めて重要になってくる。」
「(確かに、中国は、近年、習近平国家主席が自らサウジアラビアと党首協定を結んでいて、トップ外交で積極的に乗り出しているが、)中国はサウジとイランの和解を仲介したり、そういう意味で中東に対する関心を非常に深めている。」
「日本は岸田総理(当時)が2年前に訪問してるんですねど、ムハンマド皇太子兼首相の訪日が昨年延期になってるんでね。」
「まずは、この皇太子の訪日を実現することが重要だと思います。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組の内容を以下にまとめてみました。
・日本政府と企業が今、経済協力のためにサウジアラビアを訪問している
・脱炭素技術やゲームなど、日本が強みを持つ分野で様々な合意が結ばれたが、サウジの国家プロジェクトに食い込む日本企業がある
・今回、サウジを初めて訪問した武藤経産大臣は、富士フィルムを含む15案件の経済合意を支援した

(富士フィルムの取り組み)
・AIががんの腫瘍か、そうでないかを判断するAI内視鏡を開発し、2020年から国内市場で投入を始めている
・AIを駆使した富士フィルムの医療機器で構成し、日本で根付いている定期検診の文化を経済成長著しいグローバルサウス諸国で広めていく戦略である
インド:
・2021年にインドでがん検診などの健診センター「NURA」(インド・ベンガール)をオープンさせた
サウジアラビア:
・今回、AI内視鏡の新たなニーズをサウジアラビアで見つけた
・1月12日から開かれた日本・サウジ官民経済会合で富士フィルムはサウジ最大手の病院グループなどとAI医療の展開などで合意したと発表した
・その狙いは、サウジの国家プロジェクトにある
 -サウジは、「ビジョン2030」として、2030年までに脱炭素経済への移行の他に、国の平均寿命を74歳から80歳に引き上げる長寿化を掲げている
 -ここに従来の治療だけでなく予防医療のニーズをキャッチした
 -サウジで医療機器ビジネスの展開拡大をする絶好のチャンスと捉えている
・まずはサウジ国内で健診1号センターをオープンし、これを横展開していくことと、UAEやカタールなど湾岸諸国で展開する
 -イラク、エジプト、ケニア、南アフリカといった新興国でも幅広く展開していく
・富士フィルムは、サウジ国内に地域統括会社を設立し、予防医療ビジネスを拡大させる狙いである

(スペースクールの取り組み)
・この経済合意の中でも注目されたのがスペースクールの脱炭素素材である
 -太陽の熱をブロックし、宇宙に逃がす放射冷却素材である
 -スペースクールと名付けた、この素材を建物の外側に貼るだけで、中の温度を冷やすことが出来るとして注目されている
・サウジでは、風光明媚な紅海沿岸を巨大な観光拠点に開発するプルジェクトが進行している
 -夏場は50℃近い温度の中で工事が進む中で、スペースクールを作業員の一部の住居に貼り付けた
 -人がいる状態で30%の省エネを確認している
・この素材は、ポリマー・樹脂で出来ているので、この石油由来の製品でカーボンニュートラルが出来る
・サウジアラビアは世界最大の産油国なので、スペースクールを“現地生産”したいとスペースクールの末光真大CEOは言う

(サウジ側と日本政府、経済協力の双方にとっての狙いについて解説キャスター、の原田さんの見解)
日本:
・サウジからの原油調達を確保することである
-原油の輸入について、日本が中東から9割を依存しており、サウジがその半分を占めている
・今、日本の自動車メーカーは、サウジは5番目の輸出先だが、中国企業がEVの分野で進出すると競争が激しくなる
・そういうことを見越すと、両国関係を良好にすることは極めて重要になってくる
・中国は、近年、習近平国家主席が自らサウジアラビアと党首協定を結んでおり、トップ外交で積極的に乗り出している
 -中国はサウジとイランの和解を仲介したり、中東に対する関心を非常に深めている
・日本は岸田総理(当時)が2年前に訪問しているが、ムハンマド皇太子兼首相の訪日が昨年延期になっているので、まずは、この皇太子の訪日を実現することが重要である

サウジアラビア:
・「ビジョン2030」で新産業の育成を謳っており、それに協力する企業を求めている
・経済が豊かになって、寿命の長寿化は進んでいるが、一方で生活習慣病は非常に増えていて、とりわけ糖尿病の患者が目に見えて増えている
・お金はあるので高額な医療設備に対する需要は大きいが、市民の健康サービス全般を底上げすることも今、大きな課題になっている
・脱炭素の未来と再生エネルギー大国への転換が大きな野望として掲げられている
 -今回の節電効果のある放熱幕という技術に対する関心もエネルギー構造の転換を見越した動きである
・サウジは砂漠に中国企業と世界最大の太陽光発電所を建設する計画がある

更に以下に要約してみました。
富士フィルムは、AIががんの腫瘍か、そうでないかを判断するAI内視鏡を開発し、2020年から国内市場で投入を始めているのです。
そして、AIを駆使した富士フィルムの医療機器で構成し、日本で根付いている定期検診の文化を経済成長著しいグローバルサウス諸国で広めていく戦略なのです。
そして、2021年にインドでがん検診などの健診センター「NURA」をオープンさせたのです。

こうした中、1月12日から開かれた日本・サウジ官民経済会合で富士フィルムはサウジ最大手の病院グループなどとAI医療の展開などで合意したと発表しました。
その狙いは、サウジの国家プロジェクト「ビジョン2030」にあります。
2030年までに脱炭素経済への移行の他に、国の平均寿命を74歳から80歳に引き上げる長寿化を掲げているのです。
まずはサウジ国内で健診1号センターをオープンし、これを横展開していくことと、UAEやカタールなど湾岸諸国で展開するのです。
富士フィルムは、サウジ国内に地域統括会社を設立し、予防医療ビジネスを拡大させる狙いなのです。

一方、この経済合意の中でも注目されたのがスペースクールの脱炭素素材です。
太陽の熱をブロックし、宇宙に逃がす放射冷却素材です。
スペースクールと名付けた、この素材を建物の外側に貼るだけで、中の温度を冷やすことが出来るとして注目されているのです。
サウジでは、風光明媚な紅海沿岸を巨大な観光拠点に開発するプルジェクトが進行しています。
サウジアラビアは世界最大の産油国なので、スペースクールを“現地生産”したいとスペースクールの末光CEOは考えています。

このように、日本の企業の持つ再生可能エネルギー、および医療の関連技術を核として、様々な技術に関する情報を集約して、今回ご紹介したように、官民一体で途上国の経済発展、あるいは健康促進を目指したプロジェクトを立ち上げることで途上国に貢献することが、今こそ求められるのです。
こうした取り組みを通じて、日本と途上国の間にWinWinの関係が構築出来るのです。
こうした世界的な広がりが世界平和にもつながっていくと期待出来るのです。
日本政府も企業もこうしたスケール感で、また使命感で日々の業務に取り組んでいただきたいと思います。

 
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