昨年12月3日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でCO2を大気中で直接回収する技術について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。
CO2、二酸化炭素の排出量を減らす取り組みが世界的に進む中、このCO2を大気中で直接回収するという技術も進んでいます。
この直接大気中から回収するという意味になる「Direct Air Capture」の頭文字を取り「DAC」と呼ばれる、この分野で日本企業が技術を磨いています。
総合商社の双日が今日、公開したのが。
JA全農 営農・技術センター(神奈川・平塚)のビニールハウスの中で、新たな脱炭素技術が使われているということなのです。
農業用のビニールハウスに設置された装置です。
その中には、九州大学で開発された「ナノ分離膜」という特殊な膜が組み込まれています。
この膜は、CO2だけを通し易いという性質も持っているため、ここに空気を通すことで、大気中にあるCO2を回収することが出来るようになります。
この膜が大気から直接CO2を集める「DAC」の肝となるパーツなのです。
集めたCO2をハウス栽培のトマトに与え、光合成を促進。
収穫量が3割ほど増える見込みです。
更に双日は清水建設などと組み、CO2を街づくりに生かす実証も予定。
各家庭でCO2を回収し、炭酸水を作ったり、風呂場で炭酸シャワーに活用したりすることなどを想定しています。
東京都や飲料メーカー、化粧品メーカーなどとも既に連携を協議していて、CO2を集めるDACを稼げるビジネスにする狙いです。
双日の子会社、カーボン エクストラクト株式会社の森山哲雄社長は次のようにおっしゃっています。
「(社会貢献も勿論あると思うが、ビジネスとしてのチャレンジもあると思うが、)勿論です。」
「東京都に話しているのは、是非これを東京でビジネスモデルとして“東京モデル”として、世界に発信していこうと。」
足元で、DACの世界での市場規模は拡大しています。
更に2030年には約1兆9000億円、2050年には約36兆7000億円と、急拡大が見込まれています。
そして、大阪・関西万博でも。
公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)の下田吉行之理事は次のようにおっしゃっています。
「名前は「RITE 未来の森」。」
RITEは、大阪・関西万博でDACの実証実験パビリオンを開設する予定です。
全長7m、空気を取り込む三菱重工のファンを3基設置。
RITEが手掛けた特殊な溶液をぬったフィルターでCO2を回収します。
1日で甲子園球場5個分の森に匹敵する量のCO2を回収出来る計画です。
2050年までに温室効果ガスを全体でゼロにするカーボンニュートラルを目指す日本として、万博でもその技術をアピールする考えです。
RITEの本庄孝志専務理事は次のようにおっしゃっています。
「(日本で)1億トンのレベルでCO2を大気から回収しないとカーボンニュートラルを実現出来ない恐れがあるので、DACなくしてカーボンニュートラルは日本でも出来ない、世界でも実現出来ない。」
この取材した農業ハウスでのDACは、勿論、装置を動かすのに電気代がかかります。
ただ、通常の栽培で光合成を促進するために使っているCO2のボンベなどを繰り返し調達する必要がなくなるということなのです。
これらを計算すると、十分、経済性が見込めるということでした。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組の内容を以下にまとめてみました。
(十分、経済性が見込めるDAC装置)
・総合商社の双日が昨年12月3日、公開したのがCO2を大気中で直接回収する装置である
・JA全農 営農・技術センター(神奈川・平塚)のビニールハウスの中で、農業用のビニールハウスに設置されている
-その中には、九州大学で開発された「ナノ分離膜」という特殊な膜が組み込まれている
-この膜は、CO2だけを通し易いという性質も持っているため、ここに空気を通すことで、大気中にあるCO2を回収することが出来る
-この膜が大気から直接CO2を集める「DAC(Direct Air Capture)」の肝となるパーツなのである
・集めたCO2をハウス栽培のトマトに与え、光合成を促進させると収穫量が3割ほど増える見込みである
・ただし、農業ハウスでのDACは、装置を動かすために電気代がかかるが、通常の栽培で光合成を促進するために使っているCO2のボンベなどを繰り返し調達する必要がなくなるので、十分、経済性が見込める
(清水建設や東京都などとの連携によるビジネス展開)
・更に双日は清水建設などと組み、CO2を街づくりに生かす実証も予定している
-各家庭でCO2を回収し、炭酸水を作ったり、風呂場で炭酸シャワーに活用したりすることなどを想定している
・東京都や飲料メーカー、化粧品メーカーなどとも既に連携を協議しており、CO2を集めるDACを稼げるビジネスにする狙いである
-東京都は、DACを“東京モデル”として、世界に発信していく意向である
(急拡大が見込まれるDACの世界市場規模)
・2030年には約1兆9000億円、2050年には約36兆7000億円と、急拡大が見込まれている
(大阪・関西万博でのパビリオンの開設)
・DACの技術を世界にアピールする狙いである
・RITEは、DACの実証実験パビリオン「RITE 未来の森」を開設する予定である
-全長7m、空気を取り込む三菱重工のファンを3基設置
-RITEが手掛けた特殊な溶液をぬったフィルターでCO2を回収する
-1日で甲子園球場5個分の森に匹敵する量のCO2を回収出来る計画である
(2050年までにカーボンニュートラル実現への貢献)
・日本で1億トンのレベルでCO2を大気中から回収しないとカーボンニュートラルを実現出来ない恐れがある
・そのためには、DAC技術の活用が必須である
地球温暖化を阻止する手段として、CO2を大気中で直接回収するDAC装置は、とても効果的、かつ効率的な手段だと言えます。
しかも、大規模な設備を必要とせずに装置を小型化して分散して設置出来ることが特徴で、今後、都市部のさまざまな場所に設置してCO2の回収に役立てられると期待されています。(こちらを参照)
なお、現在、回収したCO2には様々な用途があります。(添付2参照)
また、双日や清水建設では、将来的にCO2を回収し、セメントやコンクリートへの固定化も検討されています。
ちなみに、DAC以外の方法でCO2を回収し、セメントやコンクリートへ固定化することは既に実施されています。(添付3参照)
ということで、DACに関しては、大阪・関西万博でパビリオンが開設されるので、国内外から注目されると思います。
なお、CO2排出量取引制度の義務化が2026年度に導入予定なので(添付4参照)、DACの普及にとって追い風になりそうです。
添付1)
日本が2050年までにカーボンニュートラルを実現するためには、年間、どれほどのCO2排出量を減らす必要があるか?
ChatGPT:
日本のCO₂排出量を2050年までにカーボンニュートラル(実質ゼロ)にするためには、年間どの程度の排出量削減が必要かを計算してみましょう。
- 現在のCO₂排出量
日本のCO₂排出量は2022年時点で 約10.5億トン(Gt) です。
- 削減目標
- 日本政府は 2030年度までに2013年度比で46%削減(約 6.0億トン に削減)を目標としています。
- 2050年までには 実質ゼロ にする必要があります。
- 必要な年間削減量
(1) 2030年まで(8年間)
- 現在の10.5億トンから6.0億トンへ減らす必要があるため、年間約0.56億トン(5600万トン) 減らす必要があります。
(2) 2030年〜2050年(20年間)
- 6.0億トンをゼロにするためには、年間約0.3億トン(3000万トン) 減らす必要があります。
- 結論
- 2030年までの 年間削減目標:約5600万トン
- 2030年以降の 年間削減目標:約3000万トン
この削減を実現するには、再生可能エネルギーの拡大、水素・アンモニアなどのクリーンエネルギー導入、産業・輸送の脱炭素化、CCUS(炭素回収・貯留技術)の活用などが不可欠になります。
フォームの始まり
添付2)
CO2 の主な用途は?
ChatGPT:
二酸化炭素(CO₂)の主な用途には以下のようなものがあります。
- 産業用途
- 炭酸飲料:飲料に炭酸を加えるために使用。
- 溶接:溶接用のシールドガス(CO₂溶接)として使用。
- 消火器:CO₂は不燃性であり、消火剤として利用される。
- ドライアイス:冷却・冷凍用途に使用される固体CO₂。
- 化学工業:メタノールや尿素肥料の原料。
- 医療・農業用途
- 医療用ガス:呼吸器疾患の治療や手術時に使用。
- 植物の成長促進:温室栽培で光合成を促進するためにCO₂を添加。
- 環境・エネルギー用途
- CCUS(炭素回収・利用・貯留):二酸化炭素を回収し、地中貯留や燃料製造に活用。
- エネルギー貯蔵:CO₂を利用した蓄電技術や燃料製造(例:合成燃料)。
- その他の用途
- 食品の保存:酸化防止や防腐目的で食品包装に使用。
- オイルリカバリー(EOR):石油採掘時にCO₂を注入し回収率を向上。
CO₂は環境問題の観点から削減対象とされる一方で、多くの産業で有効活用されています。
添付3)
CO2を回収し、セメントやコンクリートへ固定化することは既に実施されているか?
ChatGPT:
二酸化炭素(CO₂)を回収し、セメントやコンクリートに固定化する技術は、既に実施されています。以下に具体的な事例を紹介します。
- 大成建設とアイシンの共同開発
大成建設株式会社と株式会社アイシンは、アミノ酸を活用して排気ガスなどから回収したCO₂を炭酸カルシウムとして固定化し、それをセメントを使用しない環境配慮型コンクリート「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」に活用する共同開発契約を締結しています。この技術により、コンクリート内部にCO₂を固定化し、製造過程でのCO₂排出量を削減することが可能となります。 大生
- 東洋建設とエア・ウォーターの実証実験
東洋建設株式会社とエア・ウォーター株式会社は、小型CO₂回収装置「ReCO₂ STATION®」を使用し、深層混合処理工法において、排気ガスから回収したCO₂をセメントスラリーに混入し、海底地盤内に固定化する技術の実証実験を実施しました。この実験では、CO₂が改良体に固定化されていることが確認されました。 東洋コンストラクション
- 海外の取り組み
海外でも、CO₂をコンクリートに固定化する技術が進められています。例えば、CarbonCure社は、CO₂を新鮮なコンクリートに注入し、鉱物化させることで永久的に固定化する技術を開発しています。これにより、使用ごとに3%から5%の排出削減が可能とされています。 Time
これらの事例から、CO₂をセメントやコンクリートに固定化する技術は、国内外で実施されており、カーボンニュートラル社会の実現に向けた重要な取り組みとして注目されています。東洋コンストラクション
添付4)
企業が大量にCO2を排出させないための法案は?
ChatGPT:
日本政府は、企業の二酸化炭素(CO₂)排出を抑制するため、以下のような法的枠組みを導入・検討しています。
- 排出量取引制度の義務化(2026年度導入予定)
経済産業省は、2026年度からCO₂の排出量取引制度を導入し、年間10万トン以上のCO₂を排出する企業に参加を義務付ける方針を明らかにしました。対象となるのは、鉄鋼、電力、航空、物流、食品製造などの業種で、約300〜400社が該当する見込みです。各企業には「排出枠」が割り当てられ、枠を超過した場合は他社から枠を購入する必要があります。さらに、枠内に収まらなかった場合の罰則も検討されています。 産経新聞:産経ニュース+2Japan Today+2朝日新聞+2朝日新聞+1Japan Today+1
- GXリーグの設立と試験的導入
政府は、2023年度に「GX(グリーン・トランスフォーメーション)リーグ」を設立し、試験的に排出量取引制度を導入しました。この枠組みには、国内の温室効果ガス排出量の5割以上を占める700社以上の企業が自主的に参加しています。しかし、業種間での参加割合に偏りがあるため、今後の義務化に向けて詳細な制度設計が進められています。 産経新聞:産経ニュース+2Japan Today+2朝日新聞+2産経新聞:産経ニュース
- 今後の法改正と制度設計
政府は、2027年の通常国会に「GX推進法」の改正案を提出し、2028年度の本格導入を目指しています。有識者会議を通じて、義務化の対象範囲や削減目標の設定など、詳細な制度設計が進められています。 朝日新聞+2産経新聞:産経ニュース+2Japan Today+2
これらの取り組みは、企業のCO₂排出削減を促進し、持続可能な社会の実現を目指すものです。