昨年10月16日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で国の後押しでM&Aが活性化について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。
今、日本のM&Aを巡る環境は大きく変わりつつあります。
日本企業が係わる昨年までのM&Aの件数と金額を見てみますと(こちらを参照)、金額の方はブレがあるものの、件数はほぼ右肩上がりで増えています。
今年の1月〜9月の件数は前年比19.4%増の3457件、金額は34.3%増の13兆2283億円と、いずれも顕著に増加しています。
金額のトップはルネサスエレクトロニクスによるアメリカのソフトウェア企業、アルティウムの買収(8897億円)、2位は積水ハウスによる、アメリカで戸建て事業を行うM.D.C.ホールディングスの買収(7711億円)、3位は日本生命保険によるアメリカのコアブリッジ・ファイナンシャルへの資本参加(5959億円)と、実に様々なM&Aが行われています。(レコフデータ調べ)
そして、日本の企業文化も変わりつつあります。
これまで日本企業の間では、相手の同意がない敵対的買収は否定的に受け止められていました。
しかし、企業買収が活発なアメリカなどに比べ、日本企業の時価総額は低いままで、理由の一つが生産性を向上させる敵対的買収が少ないことがあげられてきました。
このため、経済産業省は、2023年8月、企業価値を高め、M&Aの活性化を目指した行動指針を策定しています。
これが企業に、敵対的買収への、言わば、お墨付きを与えるかっこうとなる中で、行動指針の公表後、第一生命ホールディングスがベネフィット・ワンの敵対的買収に踏み切るなど、動きが活発になっています。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組の内容を以下にまとめてみました。
(増加しつつある日本のM&A)
・日本企業が係わる2023までのM&Aの金額はブレがあるものの、件数はほぼ右肩上がりで増えている
・2024年の1月〜9月の件数も前年比で件数も金額も顕著に増加しており、様々なM&Aが行われている
(変わりつつある日本の企業文化)
・これまで日本企業の間では、相手の同意がない敵対的買収は否定的に受け止められていた(添付1参照)
・しかし、企業買収が活発なアメリカなどに比べ、日本企業の時価総額は低いままで、理由の一つが生産性を向上させる敵対的買収が少ないことがあげられてきた
・経済産業省は、2023年8月、企業価値を高め、M&Aの活性化を目指した行動指針を策定している
-これが企業に、敵対的買収へのお墨付きを与えるようになっている中、M&Aの動きが活発になっている
なお、日本企業の生産性が他の先進国と比べて低い理由については、添付2を参照下さい。
現在は、AIやロボットなどの技術革新が激しく、これらの技術を取り入れたDX化が企業に求められているのです。
そして、DX化に積極的な企業は生産性の向上が目覚ましく、一方でDX化に消極的な企業は衰退の一途を遂げる結果をもたらすのです。
まさに企業を取り巻く環境は、下剋上の時代と言えます。
こうした状況を受けて、経済産業省は、企業価値を高め、M&Aの活性化を目指した行動指針を策定しているのです。
添付1)
なぜ、これまで日本企業の間では、相手の同意がない敵対的買収は否定的に受け止められていたのか?
ChatGPT:
日本企業では、**相手の同意がない敵対的買収(ホストイル・テイクオーバー)**が長年否定的に受け止められてきました。その背景には、日本独自の経営文化や制度が関係しています。
- 企業のステークホルダー重視の文化
日本企業は伝統的に、株主だけでなく、従業員、取引先、地域社会など多くの関係者(ステークホルダー)を重視する経営を行ってきました。
- 買収が雇用や取引関係に悪影響を及ぼす懸念から、敵対的買収は否定的に見られやすい。
- 欧米では「株主価値の最大化」が経営の基本だが、日本では「企業の存続と成長」が重要視される傾向。
- 終身雇用・年功序列と敵対的買収の相性の悪さ
日本企業は終身雇用や年功序列を前提にしてきたため、買収後に大規模なリストラが行われる可能性がある敵対的買収に対する拒否感が強い。
- 外資系企業による買収が「短期的な利益追求のためのもの」と見なされることが多い。
- 企業間の持ち合い(株式持ち合い)
日本企業では、**取引先や銀行と株式を持ち合う「株式持ち合い」**の慣行が広く行われてきた。
- 株式を相互に保有することで、敵対的買収を防ぐ防衛策として機能。
- 持ち合いのため、外部の投資家が経営権を獲得しにくい構造になっていた。
- 「村社会」的な企業文化と買収への警戒心
日本の企業経営には「村社会的」な側面があり、外部の企業や投資家が経営に介入すること自体が好ましくないという意識が強い。
- 特に海外ファンドなどによる敵対的買収は、「短期的な利益を狙う投機的な動き」と見なされがち。
- 「企業は社会の公器」という考えが根強く、利益追求型の投資家と相容れない部分がある。
- 法制度と敵対的買収のハードルの高さ
日本では長らく敵対的買収を防ぐための法制度や仕組みが整備されていた。
- **ポイズンピル(新株予約権発行)やゴールデンパラシュート(経営陣の高額退職金制度)**など、敵対的買収を阻止する仕組みが活用されてきた。
- 2000年代に入ってM&Aが活発化したが、敵対的買収は法律的にも難しいケースが多かった。
- これからの変化
近年では、日本でも株主重視の経営が求められるようになり、敵対的買収に対する認識が変わりつつある。
- 海外投資家の影響力の増加(特にアクティビストファンドの台頭)
- 経営者が株主の意向を無視できなくなった(コーポレートガバナンス改革の進展)
- 防衛策を過度に使うと株主の反発を招く(経営陣による買収防衛策への批判の増加)
最近では、日立製作所が子会社を売却する際に外国企業と交渉を進めるなど、日本企業のM&Aに対する考え方も変化してきています。
しかし、依然として敵対的買収は少なく、日本独自の経営文化や雇用慣行が大きな影響を与え続けています。
添付2)
日本企業の生産性は他の先進国と比べてどうか、またその理由は?
ChatGPT:
日本企業の生産性は、他の主要先進国(アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスなど)と比較すると低いとされています。特に**労働生産性(1時間あたりの付加価値額)**において、日本はOECD諸国の中でも下位に位置しています。
日本の生産性が低い理由
- 長時間労働と非効率な働き方
- 日本では長時間労働の文化が根強く、「時間をかけることが評価される」傾向があります。
- 非効率な会議やハンコ文化、紙ベースの業務が依然として残っている企業もあり、デジタル化の遅れが影響。
- IT・デジタル化の遅れ
- 欧米企業と比較して、業務のデジタル化やAI・RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入が遅れています。
- 特に中小企業では、IT投資が十分でなく、業務の自動化が進んでいない。
- 労働市場の硬直性
- 終身雇用や年功序列といった日本の雇用制度が、労働者の流動性を低くし、新しいスキルを持った人材が企業間を移動しにくい。
- 欧米では高いスキルを持つ人材が転職しやすく、企業ごとに最適な人材配置が可能。
- 企業の意思決定の遅さ
- 欧米企業と比べて、日本企業は組織構造が縦割りになりやすく、意思決定に時間がかかる。
- 合議制の文化が強く、リスク回避のために慎重になりすぎる傾向がある。
- サービス業の生産性の低さ
- 日本のサービス業は、接客のきめ細やかさが評価される一方で、過剰サービスになりやすい。
- 人手に依存した業務が多く、IT・機械化が進みにくいため、効率が上がらない。
対策として考えられること
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
- リモートワークやフレックスタイムの導入
- 人材の流動性を高めるための労働市場改革
- イノベーションを促進する企業文化の構築
日本政府や企業も生産性向上に向けた取り組みを進めていますが、長年の慣習や文化の影響もあり、改革には時間がかかると考えられます。