2025年02月26日
アイデアよもやま話 No.6141 ロシア人の心情を表す「内なる移住」!
アイデアよもやま話 No.6139 今、人類は戦争などに時間を費やす余裕はないはず!で、以下のようにお伝えしました。

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナの国民ばかりでなく、自国の国民の暮らしに対しても、とても大きな犠牲を強いているのです。
ですから、こうした事実(今年の年間軍事費の予算案が国家歳出全体の約3分の1を占めること)をロシア国民が把握すれば、プーチン大統領に対して少なからず不満が出てくるはずです。
また、イデアよもやま話 No.6140 戦争によって得するのは誰か、そして損するのは誰か?で触れたように、戦争を仕掛ける側も仕掛けられる側も、市民は戦争によって損する側になってしまうのです。

そうした中、2月23日(日)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)でロシア人の心情を表す「内なる移住」について取り上げていたのでご紹介します。 

今、米ロの外相級の会合が行われるなど、停戦に向けた動きが出始めていますが、ロシアのプーチン政権は軍事侵攻を続け、強気の姿勢を崩していません。
一方、ロシア国内では言論が厳しく統制され、政権の締め付けが強まっています。
こうした状況に置かれたロシア人の心情を表す言葉として使われ始めているのが「内なる移住」です。
現状に対し、自分はどうすることも出来ないという無力感を感じ、自分の殻に閉じこもるという意味で使われています。

「「内なる移住」は大多数のロシア人にとって最適な生き方になりつつある。」(軍事侵攻から3年 Radio AIROAのサイトより)

侵攻後、ロシアではカウンセリングを必要とする人が約30%、抗うつ剤の販売は約50%近く増えています。
背景には一変したロシアの市民生活があります。
身近な人の死や軍への動員、欧米の経済制裁、インフレなどに直面。
言論統制も強まりました。
プーチン政権は、軍の信用の失墜につながる行為を刑罰の対象にするよう法律を改正。
侵攻反対を表明して訴追された市民はこの3年で1100人以上に上ると見られ、閉塞感が広がっています。
ある女性のロシア市民は次のようにおっしゃっています。
「「内なる移住」は心の中に移り住むようなもので、問題から離れたいという気持ち。」

「内なる移住」をしているエカテリーナ・ハンさんは栄養士として働き、夫と息子2人の4人暮らしです。
侵攻のニュースを見るたびに心を痛めているといいます。
今は息子の世話や家族と過ごす時間など、身の回りだけを気にかけるようにしています。
「コントロール出来る範囲の人生に集中したい。」

侵攻が始まって以降、エカテリーナさんは強いストレスを感じるようになりました。
政府が動員を発表した際には、夫が軍に入隊させられるのではと不安が止まりませんでした。
息子が通う学校では愛国教育が始まりました。
兵士に手紙を書いたり、銃の訓練を受けたりする活動がロシア各地で行われています。
教育現場に軍事侵攻が入り込んでいると、やり切れない思いを感じています。
「家族や祖国を守らないといけない場合もあるが、戦いは恐ろしいことで良いことは何もない。」

対立を避けるため、職場などで侵攻の話題を避けるようになったといいます。
「彼らは隣人であり同僚、一緒の社会で生きていかないといけないから、違う意見を言うことは危険なことになり得る。」

カウンセリングをしている専門家は、「内なる移住」は侵攻に反対する人々が経験し易い傾向があり、“やり切れない状況に置かれた自分を守るために行為”だと指摘します。
カウンセラーのタティアナ・ペトロアさんは次のようにおっしゃっています。
「「内なる移住」は自分自身を摩耗ことであり、抑圧を受けることなく、心の中の自由を守る方法。」
「全員ではないが、(ロシアの)少なくない人が「内なる移住」を経験している。」

専門家は、軍事侵攻について、当初、驚き・ショックを受けた人々も自分の殻に閉じこもれば無関心になっていくとしながらも、どこかで心理的な影響は受け続けていると指摘します。

井上二郎キャスターは次のようにおっしゃっています。
「世論調査の数字からは分からない心のうちがあるということだと思うんですよね。」
「理解出来ないと、こちら側で遮断しがちなんですけれども、同じ人間、葛藤や迷いは当然あるのかなと感じましたね。」
また、赤木野々花キャスターは次のようにおっしゃっています。
「私たちが普段、賛成、反対と別れて議論が出来るということも当たり前じゃないんだなと思います。」
「私と二郎さんだって意見が分かれることがあると思うんですけど、その人が置かれた状況や育った環境、一人一人が価値観や文化を育てていって、多様に生まれているものなので、意見が分かれて同然だと思います。」
「それを無理やりに一つの方向にしなければならないのが政治家の怖さだと感じます。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組の内容を以下にまとめてみました。

(一変したロシアの市民生活)
・今、米ロの外相級の会合が行われるなど、停戦に向けた動きが出始めているが、ロシアのプーチン政権は軍事侵攻を続け、強気の姿勢を崩していない
・一方、ロシア国内では言論が厳しく統制され、政権の締め付けが強まっている
・こうした状況に置かれたロシア人の心情を表す言葉として使われ始めているのが「内なる移住」である
 -現状に対し、自分はどうすることも出来ないという無力感を感じ、自分の殻に閉じこもるという意味で使われている
 -「内なる移住」は大多数のロシア人にとって最適な生き方になりつつある
・侵攻後、ロシアではカウンセリングを必要とする人が約30%、抗うつ剤の販売は約50%近く増えている
 -背景には、身近な人の死や軍への動員、欧米の経済制裁、インフレなどに直面するなど、一変したロシアの市民生活がある

(言論統制の強化)
・プーチン政権は、軍の信用の失墜による行為を刑罰の対象にするよう法律を改正した
 -侵攻反対を表明して訴追された市民はこの3年で1100人以上に上ると見られ、閉塞感が広がっている
・学校では愛国教育が始まった
 -兵士に手紙を書いたり、銃の訓練を受けたりする活動がロシア各地で行われている
・対立を避けるため、職場などで侵攻の話題を避けるようになった
・カウンセリングの専門家は、「内なる移住」は侵攻に反対する人々が経験し易い傾向があり、“やり切れない状況に置かれた自分を守るために行為”だと指摘している

こうして、今のロシアの市民生活の実情を見てくると、映画やドラマで観る、かつての日本の太平洋戦争中の市民生活と重なって見えてきます。
どこの国でも敵味方に関係なく、戦時下の市民生活は大なり小なり、言論統制が行われ、国の方針に逆らう人たちは罰せられてしまうのです。
そして、多くの市民は自分の言いたいことが言えずに「内なる移住」と言われるように、自分の殻に閉じこもってしまい、心の病に悩まされる人たちが増えてしまうのです。
逆に戦争を遂行する国からすれば、市民の言論統制をしなければ、一致団結して敵国に対峙することが出来なくなってしまうのですから、国としては当然の行為と言えます。
こうした国の実情がいつの時代においても戦争の本質なのです。
ですから、絶対に戦争はすべきではないのです。

 
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