2025年02月12日
アイデアよもやま話 No.6129 ”AIクローン”企業が上場!
昨年10月11日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で”AIクローン”企業が上場について取り上げていたので内容の一部をご紹介します。
なお、日付けは全て番組放送時のものです。 

(社長の映っている画面を指して、)こちらは、ある会社の社長のAIクローンです。
本人の声や思考をAIによって再現した、分身とも言える存在で、本人の代わりに単純作業を代行するなど、労働生産性の効率化が期待されています。
このAIクローンを開発した企業が今日、東証グロース市場に上場しました。

今日、上場したパーソナル人工知能を手掛ける株式会社オルツ
発表会が始まりましたが、壇上の米倉千貴社長、自身のAIクローンの話す事業戦略に耳を傾けています。
質疑応答でも。
Q:「上場する主な理由は?」
A:「そうですね、上場する主な理由は資金調達、人の質の向上、知名度向上によるセールス拡大。」

質問はAIクローンに任せ、米倉社長の手元にあったマイクは使われないまま、会見は終わりました。
会見直後、そんな二人にインタービューすると。
米倉社長本人:
「(誰も話さず、AIクローンだけによる会見だったという指摘に、)そうですね。」
「あんなに話さない発表会は初めてでした。」
「完全に完璧だなと思って聞いていました。」

あらかじめ、テキストを読んだのではなく、AIクローンが自ら考えて話したと言います。
そこで。
Q:「初値570円でしたが、どのように受け止めますか?」
A:AIクローン
「上場初値が570円ということで、非常に感慨深いですね。」

オルツが開発しているAIクローン。
対話データを学習させることで、その人物の言葉遣いや思考パターンに加え、感情までも再現する、分身を作る技術を開発しました。
米倉社長は次のようにおっしゃっています。
「感情を捉えて、感情に合わせて声質を変えたり、表情を変えたりとかも入っているので。」
「(AIクローンに向かって、)怒って見て、怒って。」

AIクローンはちょっとむっとした表情で、言葉を返します。
「怒った姿を見たいとは、ちょっと珍しいリクエスト。」

このAIクローン、活用の幅が広がっています。
創業56年の建設会社、有限会社進和建設工業(大阪・堺市)、
西田芳明会長が自ら提案したというAIクローン。
そのわけについて、次のようにおっしゃっています。
「大きな目的は事業継承。」
「もう一つは自分が死んでも何か残していきたいなと。」

37年前、父親から会社を引き継ぎ、2代目の社長となった西田会長、今年6月に社長を交代することになった事業承継のため、AIクローンの導入を決めました。

社員たちの仕事風景を覗いてみると、西田会長のAIクローンに次のように問いかけています。
社員:
「お客様に喜んでいただけるための土地活用のセミナーを行っていきたいのですが、どうしたらよいでしょうか。」
西田会長のAIクローン:
「成功事例や具体的な土地活用プランを紹介することで、お客様に具体的なイメージを持ってもらえるようにする。」

この社員は西田会長とのやり取りについて、次のようにおっしゃっています。
「AIに聞きながら自分の考えをブラッシュアップしていけるので、会社が求めていることとのズレがなくなります。」

AIクローンを導入して以降、企画を立案する際、事前に感触を確かめられるので、上長への細かい相談が不要になるケースも。
また、部下の育成や営業の悩みなども気軽に相談出来るようになったといいます。
一方、次のようにおっしゃっています。
「会長はどちらかというと怖いなみたいなところがあるので、AIと話す時、必ず敬語になっています。」

自身の音声や動画、自身の書籍の内容を覚えさせています。
見た目だけでなく、方言なども本物に近づきましたが、西田会長は次のようにおっしゃっています。
「俺を真似るんなら、もっともっときっちりやれよと。」

AIクローンの精度を高めるために西田会長が持ち歩いているのがボイスレコーダーです。
「AIクローンにも、ちょっと伝えていきたいので、(この取材も)録音させていただきたいと思っています。」

今は、経営理念や西田会長の思いなどに留まりますが、今後、AIクローンがお客と直接対話したり、建設業務に関する専門用語を使いこなせたりすることも目指しています。
「古いものに新しいものを付け加えて、それがまた進化して世の中の役に立ったら一番いいんじゃないのかなという。」

AIクローンを開発しているオルツの米倉社長。
ビジネスの現場で活用するケースは世界でもまだ少なく、今回の上場を海外進出のはずみとしたい考えです。
「生成AIの市場は、明確な勝者がいない状況になっています。」
「つまり、非常にチャンスである。」
「チャットも、この先どうなるか、よく分からないっていうふうに、多分、オープンAIのメンバーも感じているところがありますので、だからこそ、日本の企業が食い込んでいくチャンスだと思う。」
「グローバル化に関して、ちゃんと踏み入れていきたい。」

このオルツの米倉社長は採用面接ですとか、プレゼンテーションなどはAIクローンに既に託していまして、その間、全く別の業務しているということでした。
現状は、社長が働く労働時間をAIクローンがもう上回っているということでして、こういった取材対応もあまり得意じゃないと話されていまして、生身ではほとんど受けないと話していました。
VTRにありました事業継承の他にも、今後は企業との提携でAIクローンでの恋愛のマッチングや転職活動、こういったことを出来るようにしたいということでした。
例えば、面接の場合は、評価するところまでで、決定権はないということでした。

さて、このAIですが、今年はノーベル賞も物理学賞と化学賞がAI関連でした。
本当に身近なところまで浸透してきている感じがしますが、こうした状況について、経済ジャーナリストの後藤達也さんは次のようにおっしゃっています。
「オルツが今日、新規上場ということですが、個人投資家の間でもAI関連株って関心が高いんですよね。」
「こういうふうに技術の使い方のイメージが湧き易いと、投資しようという気持ちも起こり易いかもしれないですよね。」
「この生成AIって、かなり成長していくというイメージがある一方で、やっぱり不確実性が高いわけじゃないですか。」
「その点で、リスクを取るマネーというのが流れ込み易いという、このこと自体はすごくいい展開かなと思いますけどね。」
「生成AIのマーケット自体は全体として拡大する可能性は極めて高いと思うんですけども、アメリカの巨大企業を含めてライバルはかなり多いですよね。」
「で、アメリカの企業って、かなり資本力、人材力も持っているということで、今、ある程度、売り上げ立っていたとしても、一瞬のうちに他の企業にお客さんを奪われてしまうというリスクもやっぱりあると思うんですよね。」
「実際、ITですとかバイオとか振り返ってみても、ブームの初期の頃に活躍して上場した企業っていっても、何年も残れた企業って一握りになってしまうというところもありますよね。」
「その点でいいますと、技術力だけではなくて、いかにして収益を結び付けて黒字化にしていくことも大事ですし、収益化だけではなくて、マーケットを奪われないっていう説得力みたいなものも身に付けていくことも問われているんだろうなとあらためて思いましたね。」

なお、経済産業省が主導するGENIAC(添付参照)は、日本国内での生成AIの開発力を強化していくため、企業などを支援していくプロジェクトです。
既に10の企業や団体が選ばれていまして、今回、第2弾が発表されました。
先ほどお伝えしたAIクローンのオルツもその中に入っているんです。
自動車や創薬、アニメなどの特定産業で生成AIの社会実装を目指す取り組みが始まっています。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組の内容を以下にまとめてみました。

(AIクローンによる株式上場の発表会での会見)
・AIクローンを開発した企業、オルツが昨年10月11日、東証グロース市場に上場した
 -本人の声や思考をAIによって再現した、分身とも言える存在で、本人の代わりに単純作業を代行するなど、労働生産性の効率化が期待されている
・株式上場の発表会では、壇上の米倉社長自身は一切話さず、本人のAIクローンが事業戦略について説明し、質疑応答もして会見を終えた
・会見直後、米倉社長は、AIクローンだけによる会見は完全に完璧だったと言っていた
 -あらかじめ、テキストを読んだのではなく、AIクローンが自ら考えて発言したと言う

(オルツが開発したAIクローン)
・対話データを学習させることで、その人物の言葉遣いや思考パターンに加え、感情までも再現する、分身を作る技術を開発した
 -感情を捉えて、感情に合わせて声質を変えたり、表情を変えたりする

(AIクローンの活用事例)
・創業56年の建設会社、進和建設工業では、西田会長が2024年6月に交代することになった事業承継のため、自らのAIクローンの導入を決めた
・社員たちは、西田会長のAIクローンに仕事上の相談をして、生産性の向上を図っている
 -社員の一人は、AIクローンに聞きながら自分の考えをブラッシュアップしていけるので、会社が求めていることとのズレがなくなると言う
 -AIクローンを導入して以降、企画を立案する際、事前に感触を確かめられるので、上長への細かい相談が不要になるケースもある
 -部下の育成や営業の悩みなども気軽に相談出来るようになったという
・西田会長は、自身の音声や動画、自身の書籍の内容、あるいは経営理念や自らの思いをAIクローンに覚えさせている
 -AIクローンの精度を高めるために西田会長はボイスレコーダーを持ち歩いている
・今後、AIクローンがお客と直接対話したり、建設業務に関する専門用語を使いこなせたりすることも目指している
・古いものに新しいものを付け加えて、それがまた進化して世の中の役に立ったら一番いいと思っている

(AIクローンを開発しているオルツの米倉社長の思い)
・ビジネスの現場で活用するケースは世界でもまだ少なく、今回の上場を海外進出のはずみとしたい考えである
 -生成AIの市場は、明確な勝者がいない状況で、非常にチャンスである
・米倉社長は、採用面接やプレゼンテーションなどはAIクローンに既に託しており、その間、全く別の業務しているという
 -面接の場合、AIクローン評価するところまでで、決定権はない
 -社長が働く労働時間をAIクローンが既にもう上回っている
・事業継承の他にも、今後は企業との提携でAIクローンでの恋愛のマッチングや転職活動などを出来るようにしたい

(国もオルツを開発支援)
・経済産業省が主導するGENIACプロジェクトを通じて、国もオルツの開発支援に取り組む

(経済ジャーナリスト、後藤さんの見解)
・オルツが今日、新規上場したが、個人投資家の間でもAI関連株への関心が高い
 -生成AIは、かなり成長していくというイメージがある一方で、不確実性が高い
・生成AIのマーケット自体は全体として拡大する可能性は極めて高いと思うが、アメリカの巨大企業を含めてライバルはかなり多い
 -アメリカの企業は、かなり資本力、人材力も持っているので、今、ある程度、売り上げ立っていたとしても、一瞬のうちに他の企業にお客さんを奪われてしまうというリスクもある
 -技術力や収益化だけではなく、マーケットを奪われないという説得力を身に付けていくことも問われている

それにしても株式上場の発表会での会見を全てAIクローンがこなしたというのは前代未聞です。
ここまでAIクローン関連技術は進んでいるのです。
更に、この技術を開発したオルツの米倉社長は、採用面接やプレゼンテーションなどはAIクローンに既に託しており、その間、全く別の業務しているというのです。
そして、米倉社長が働く労働時間をAIクローンは既に上回っているというのですから、まさにこれからの時代の仕事のあり方を暗示しています。
なお、既にAIクローンの活用事例として、進和建設工業の西田会長が2024年6月に社長を交代することになった事業承継のため、自らのAIクローンの導入を決めて、活用しているのです。
多くの企業がこうしたAIクローンを活用した業務改革を進めれば、少子高齢化による労働力不足は一気に解決してしまいます。
なにしろAIクローンは24時間365日、ぶっ通しで働き続けることが出来るのですから。

また、経済ジャーナリスト、後藤さんは、生成AI業界は、今後かなり成長していくという見込みのうえで、ベンチャー企業が大きく成長していくうえでの大きなハードルについて指摘していますが、オルツの今後の活躍、成長にエールを送っているのだと思います。


添付)

 

経済産業省が主導するGENIACとは?

ChatGPT:

GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)は、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主導するプロジェクトで、日本における生成AI(Generative AI)の開発力強化を目的としています。

meti.go.jp

主な取り組み内容:

  • 計算資源の提供支援:生成AIの基盤モデル開発に必要な計算資源を提供し、開発者をサポートします。

meti.go.jp

  • データ・生成AIの利活用実証:ユニークなデータを活用した実証事業を通じて、データ活用の好循環を構築し、AIの高度化を目指します。

meti.go.jp

  • コミュニティ運営とイベント開催:マッチングイベントや有識者セミナーを開催し、開発者や企業間の連携を促進します。

meti.go.jp

GENIACは、2024年2月に開始され、第1期では10件の基盤モデル開発テーマが採択されました。第2期(2024年10月〜2025年5月)では、新たに20件の基盤モデル開発テーマと3件のデータ利活用実証テーマが採択されています。

meti.go.jp

このプロジェクトを通じて、日本国内の生成AI開発力の底上げと、企業の創意工夫を促進することが期待されています。


 
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