昨年、１１月１７日（日）放送の「明日をまもるナビ」（ＮＨＫ総合テレビ）で「”海の温暖化” 暮らしへの影響は？」をテーマに取り上げていたので４回にわたってご紹介します。
“海洋熱波”については１回目（参照：No.6120 ちょっと一休み その９６５ 『 ”海の温暖化” 暮らしへの影響 その１ 魚に異変！』）でも多少触れましたが、２回目は、「猛暑と関係！？“海洋熱波”」についてです。
なお、日付けは全て、番組放送時のものです。
東京大学 先端科学字術研究センターの中村尚教授は次のようにおっしゃっています。
「（海洋熱波については、）初めて耳にされる方も多いと思うんですけども、海面水温が平年より、かなり高い状態が一定期間持続すると、そういう状況のことを我々、海洋熱波と呼んでいます。」
「近年は、その海洋熱波が日本周辺でも本当に顕著になってきてまして、昨年、今年のような日本の猛暑にも深く関わっているってことが分かってきました。」
海洋熱波が猛暑をもたらすメカニズムが明らかになりつつあります。
今年（２０２４年）７月、中村さんらの研究グループは海洋熱波についての論文を発表しました。
注目したのは、去年（２０２３年）の夏、北日本を襲った猛暑。
これまで北日本の周辺の海域では夏でも海水温が比較的冷たい状態にありました。
すると海面に近い大気が海水によって冷やされ、下層雲という低い雲や霧が多く発生します。
この下層雲が担っている役割が太陽光を反射すること。
言わば天然の“日よけ”として、海が温まるのを軽減してくれるのです。
ところが、海洋熱波が起きると、その熱で大気がかき乱され、下層雲が減少。
“日よけ”を失った海には直接、日光が降り注ぎ、増々海水温が上がっていきます。
すると、海面から発生する水蒸気の量が増加。
水蒸気には温室効果があるため、熱がこもり易くなったのです。
なぜ海洋熱波が起きるようになったのか。
海洋研究開発機構（ＪＡＭＳＴＥＣ）の主任研究員、美山透さんは次のようにおっしゃっています。
「これが「地球シミュレーター」と呼ばれるスーパーコンピューターになります。」
「このコンピューターを使って、温暖化の計算を行っています。」
海洋熱波を引き起こす原因の一つとして、南方から流れ込む「黒潮の異変」に注目しています。
黒潮は日本近海を流れる代表的な暖流です。
通常、黒潮は房総半島まで北上し、その後は東に流れていきます。
しかし、去年（２０２３年）の夏、この暖かな海流が極端に北上し、東北沖にまで達しているのが観測されました。
美山さんは次のようにおっしゃっています。
「（更に）ウソなんじゃないかと思ったのは、これですね。」
「こういう姿は・・・」
今年（２０２４年）の夏、黒潮の新たな異変が。
東北沖まで達した後、一部がちぎれて停滞。
海水温の高い状態が維持されていることが分かったのです。
美山さんは次のようにおっしゃっています。
「黒潮の変動によって過去最高の温度が去年（２０２３年）あたりから、ずっと続いています。」
「海洋熱波がより頻繁に、より強いかたちで現れてくるというのは、これは、そうなってしまうということですね。」
あらためて、海洋熱波について、まとめました。（こちらを参照）
美山さんは次のようにおっしゃっています。
「（これ、日本だけでなくて、世界で増えていると言えるのかという問いに対して、）やっぱり世界の海も温暖化が進んでいますよね。」
「世界の多くの海域で“海洋熱波”が頻繁に起きているようになってきていると思います。」
「特に日本の近海は昨年（２０２３年）あたり、今年（２０２４年）も非常に顕著な海洋熱波の発生状況になってきています。」
「（こちらは三陸沖での発生状況ですが、）これ何を示しているかというと、こちらの（左端の赤字で囲まれた）数字ですね。」
「これはですね、海洋熱波が起きた、その年の発生日数。」
「それが１９８５年から昨年（２０２３年）まで、どのように推移していったかということを示す図です。」
「時折、海洋熱波が起きていたんですけど、毎年起きるような状況ではなかったのですが。２０１０年あたりから、ほぼ毎年起きるようになりまして、これまで一番多かった年の発生日数を昨年（２０２３年）、ほぼ２倍にまで増えてしまったと。」
「で、しかも、これ、色が付いてますね。」
「これ、海洋熱波の強さを示しています。」
「（これまではカテゴリー３、４、濃い色の部分はないですが、）そうなんです。」
「昨年の状況は、色の濃いところが結構ありますよね。」
「これだけ、つまり、平年に比べて海水温が相当に高かったと。」
「先ほど、５℃とか６℃っていう数字もありましたけど、まさにそういうような状況になっていたということですね。」
「（勿論、海の中も温度は上昇しているのではという指摘に対して、）はい。」
「実はですね、２０１０年頃までは海の表面だけが温かいんですね。」
「それは大気から熱をもらったからなんですね。」
「海の、少し潜るとそれほど水温は高くはなかったんですね。」
「ところがですね、昨年、そして今年（２０２４年）もそうなんですけど、海の深いところまで水温が非常に高いと。」
「平年に比べると、水深１００ｍの水温で比較すると、２０２３年、プラス１０℃なんです。」
「つまり、それは親潮と黒潮の水温ですね。」
「その差が、そのまま出ていると。」
「まさに、これ異常な高温になってしまったということですね。」
そして、その海水の温度が高い状況が続くと、地球温暖化を更に促進、進めてしまうと考えられているんですね。
さて、地球温暖化の主な原因とされているのはＣＯ２なんですけど、大気中の、このＣＯ２は水に溶けるんですよね。
ですから、海が吸収してくれるんですが、ＣＯ２が溶け易いのは温度の低い水なのです。
ということは、海水温の上昇により海水はＣＯ２を吸収しにくくなるので更に地球の温暖化が促進されてしまうということなんですよね。
美山さんは次のようにおっしゃっています。
「実は、もう一つ、重要なことがあります。」
「海が温暖化してくる、水温が上がって来ることは、その分だけ蒸発が増えるということなんですね。」
「で、その蒸発が増えるということは大気中の水蒸気の量が増えると。」
「これは雨の量を増やすだけでなくて、実は、水蒸気には温室効果がある。」
「これ、温室効果ガスなんですよ。」
「ですから、蒸発が増えて、大気の水蒸気量が増えるということは、更に温暖化が促進されるということにもなってきます。」
「（こう見ると、やはり温暖化というのは食い止めていかないといけないということだという指摘に対して、）はい、おっしゃる通りですなんですね。」
「先日、国連はですね、このまま温暖化が進むと、世界の平均気温は今世紀末までには産業革命前に比べて３．１℃上昇するのではないかという見通しを発表しています。」
それこそ、魚だけじゃなくて、人の暮らす場所も変えなきゃいけない状況も来てしまうかもしれませんよね。
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
番組の内容を以下にまとめてみました。
（北日本の猛暑に見る海洋熱波の影響）
・海洋熱波は、海面水温が平年より、かなり高い状態が一定期間持続する状況のことである
・近年、海洋熱波が日本周辺でも顕著になってきており、２０２３年、２０２４年のような日本の猛暑にも深く関わっているってことが分かってきた
・２０２３年の夏、猛暑が北日本を襲った
・これまで北日本の周辺の海域では夏でも海水温が比較的冷たい状態にあった
-海面に近い大気が海水によって冷やされ、下層雲という低い雲や霧が多く発生し、太陽光を反射していた
-言わば天然の“日よけ”として、海が温まるのを軽減してくれていた
・しかし、海洋熱波が起きると、その熱で大気がかき乱され、下層雲が減少した
-“日よけ”を失った海には直接、日光が降り注ぎ、増々海水温が上がっていき、海面から発生する水蒸気の量が増加する
-水蒸気には温室効果があるため、熱がこもり易くなった
（海洋熱波が起きる原因）
・海洋熱波を引き起こす原因の一つとして、南方から流れ込む「黒潮の異変」がある
-黒潮は日本近海を流れる代表的な暖流である
-通常、黒潮は房総半島まで北上し、その後は東に流れていく
-しかし、２０２３年の夏、この暖かな海流が極端に北上し、東北沖にまで達しているのが観測された
-その結果、猛暑が北日本を襲った
・２０２４年の夏、黒潮の新たな異変が起きた
-東北沖まで達した後、一部がちぎれて停滞した
-海水温の高い状態が維持されていることが分かった
・黒潮の変動によって過去最高の温度が２０２３年あたりから、ずっと続いている
（海洋熱波のまとめ）
・世界の多くの海域で“海洋熱波”が頻繁に起きているようになってきている
・特に日本の近海は２０２３年あたりから非常に顕著な海洋熱波が発生している
-三陸沖での発生状況は、海洋熱波が起きた、その年の発生日数が１９８５年から毎年起きるような状況ではなかったが、２０１０年あたりから、ほぼ毎年起きるようになり、これまで一番多かった年の発生日数を２０２３年にはほぼ２倍にまで増加した
-しかも海洋熱波の強さは、２０２３年には平年に比べて海水温が相当に高かった
・２０１０年頃までは海の表面だけが温かったが、それは大気から熱をもらったからである
・ところが、２０２３年、そして２０２４年も海の深いところまで水温が非常に高い
（海洋熱波が及ぼす地球温暖化の促進）
・海水の温度が高い状況が続くと、地球温暖化を更に促進、進めてしまうと考えられている
・地球温暖化の主な原因とされているのはＣＯ２だが、大気中のＣＯ２は水に溶ける
・従って、海が吸収してくれるが、ＣＯ２が溶け易いのは温度の低い水である
・海水温の上昇により海水はＣＯ２を吸収しにくくなるので更に地球の温暖化が促進されてしまうことになる
・もう一つ、重要なことは、海水温の上昇は、その分だけ大気中の水蒸気の量が増える
・これは雨の量を増やすだけでなくて、水蒸気には温室効果がある
・大気の水蒸気量の増加により、更に温暖化が促進されるということになる
・先日、国連は、このまま温暖化が進むと世界の平均気温は今世紀末までには産業革命前に比べて３．１℃上昇するという見通しを発表している
・魚だけでなく、人の暮らす場所も変える状況も来てしまうかもしれない
要するに、海洋熱波と地球温暖化の関係は以下の通りです。
�� 経済など人類の活動により、ＣＯ２の排出量が増加する
�� ＣＯ２の排出量の増加は地球温暖化をもたらす
�� 大気中のＣＯ２は海が吸収してくれるが、地球温暖化の進行による海水温の上昇により海水はＣＯ２を吸収しにくくなる
�� 更に地球の温暖化が促進されてしまうことになる
（もう一つの流れ）
�� 海水温の上昇により、その分だけ大気中の水蒸気の量が増える
�� これは雨の量を増やすだけでなくて、水蒸気には温室効果がある
�� 大気の水蒸気量の増加により、更に温暖化が促進される
そして、注目すべきは、以下のことです。
・黒潮の変動によって過去最高の温度が２０２３年あたりから、ずっと続いていること
・三陸沖での観測結果では、海洋熱波の強さは、２０２３年には平年に比べて海水温が相当に高かったこと
・また、２０２３年、そして２０２４年も海の深いところまで水温が非常に高いこと
こうしたデータから、２０２３年頃から地球温暖化の影響が平年に比べて強まっていることです。
なお、海洋熱波が地球温暖化に与える影響の割合は添付１を参照下さい。
具体的な数値として、２０２３年には世界の海洋表面の約２２％が海洋熱波の影響を受けているというのです。 （添付２参照）
では、現在の日本各地の記録的な大雪ですが、この主な原因は、数年ぶりに訪れた非常に強力な寒波によるものといいます。 （添付３参照）
そして、数年ぶりに訪れた非常に強力な寒波の要因は、日本海の海水温が平年より高い場合、寒気が流れ込むと水蒸気が多く供給され、大雪をもたらすことがあり、現在の海水温の状況も、降雪量に影響を与えている可能性があるというのです。（添付４参照）
こうして見てくると、今冬の強力な寒波、そして記録的な大雪の要因として地球温暖化の影響があることが頷けます。
ですから、地球温暖化阻止にむけた対応策の強化が世界的に求められるのです。
戦争などしている場合ではないのです。
現在、人類が立ち向かうべき敵は、人類、自らの経済などの諸活動がもたらした“地球温暖化”なのです。
添付１）
海洋熱波が地球温暖化に与える影響の割合は？
ChatGPT
海洋熱波（マリンヒートウェーブ）は、地球温暖化の進行に伴い、その頻度や強度が増加しています。具体的な数値として、2023年には世界の海洋表面の約22%が海洋熱波の影響を受けました。
lemonde.fr
このような海洋熱波の増加は、海洋生態系や水産業に深刻な影響を及ぼすだけでなく、気候システム全体にも大きな影響を与えています。
海洋は地球温暖化による余剰熱の約90%を吸収しており、その結果、海面水温の上昇が観測されています。
rief-jp.org
この海面水温の上昇は、海洋熱波の発生頻度や強度の増加と密接に関連しています。さらに、海洋熱波は大気中の水蒸気量を増加させ、温室効果を強めることで、地上の異常高温を引き起こす要因ともなっています。
jamstec.go.jp
したがって、海洋熱波は地球温暖化の影響を受ける現象であり、その増加は温暖化の進行をさらに促進する可能性があります。このような相互作用を理解し、適切な対策を講じることが、気候変動への対応において重要です。
添付２）
海洋熱波が地球温暖化に与える影響の割合は？
ChatGPT
海洋熱波（マリンヒートウェーブ）は、地球温暖化の進行に伴い、その頻度や強度が増加しています。具体的な数値として、2023年には世界の海洋表面の約22%が海洋熱波の影響を受けました。
lemonde.fr
このような海洋熱波の増加は、海洋生態系や水産業に深刻な影響を及ぼすだけでなく、気候システム全体にも大きな影響を与えています。
海洋は地球温暖化による余剰熱の約90%を吸収しており、その結果、海面水温の上昇が観測されています。
rief-jp.org
この海面水温の上昇は、海洋熱波の発生頻度や強度の増加と密接に関連しています。さらに、海洋熱波は大気中の水蒸気量を増加させ、温室効果を強めることで、地上の異常高温を引き起こす要因ともなっています。
jamstec.go.jp
したがって、海洋熱波は地球温暖化の影響を受ける現象であり、その増加は温暖化の進行をさらに促進する可能性があります。このような相互作用を理解し、適切な対策を講じることが、気候変動への対応において重要です。
添付３）
では、現在の冬季の記録的な大雪の原因は？
ChatGPT
現在、日本各地で記録的な大雪が観測されています。この主な原因は、数年ぶりに訪れた非常に強力な寒波によるものです。
theguardian.com
具体的には、岐阜県白川町では48時間で129センチの積雪を記録し、これは観測史上最高値となっています。また、新潟県上越市や北海道本別町でも約1メートルの積雪が報告されています。
theguardian.com
この寒波の影響で、北海道や日本海側を中心に鉄道や航空便の運休、道路の閉鎖など交通機関に大きな影響が出ています。気象庁は、太平洋側の地域でも今後さらに降雪が予想されるとして、不要不急の外出を控えるよう呼びかけています。
theguardian.com
興味深いことに、1月には異常な暖冬が続き、札幌の雪まつりの準備に支障をきたすほどでした。しかし、2月に入り一転して強烈な寒波が到来し、各地で大雪をもたらしています。
theguardian.com
このような急激な気象の変化は、地球温暖化による気候変動の影響とも考えられ、今後も注意深く観察する必要があります。
添付４）
では、数年ぶりに訪れた非常に強力な寒波の要因は？
ChatGPT
現在、日本各地で記録的な大雪をもたらしている非常に強力な寒波の要因として、以下の点が考えられます。
- ラニーニャ現象の影響
2024年春にエルニーニョ現象が終息し、その後、ラニーニャ現象（添付５）に近い海面水温や気圧の分布が続いています。ラニーニャ現象は、冬季に強い寒波をもたらす傾向があり、これが現在の寒波の一因と考えられます。
jwa.or.jp
- 大気の寒気の南下
シベリア高気圧の強まりや偏西風の蛇行により、北極圏の寒気が日本列島まで南下しやすい状況が生じています。これにより、日本海側を中心に大雪が発生しています。
- 海水温の影響
日本海の海水温が平年より高い場合、寒気が流れ込むと水蒸気が多く供給され、大雪をもたらすことがあります。現在の海水温の状況も、降雪量に影響を与えている可能性があります。
これらの要因が組み合わさり、数年ぶりの強力な寒波と記録的な大雪を引き起こしていると考えられます。今後も気象情報に注意を払い、適切な対策を講じることが重要です。
添付５）
ラニーニャ現象とは？
ChatGPT
ラニーニャ現象とは
ラニーニャ現象（La Niña）とは、赤道付近の太平洋東部（南米沿岸）の海面水温が平年より低くなり、西部（インドネシアやフィリピン周辺）の海面水温が高くなる現象のことです。これは、エルニーニョ現象（太平洋東部の海面水温が上昇する現象）の反対の状態を指します。
ラニーニャ現象の発生メカニズム
- 貿易風（東風）の強化
通常、赤道付近では東から西へ吹く貿易風が吹いています。ラニーニャ現象が発生すると、この貿易風が強まり、暖かい海水が西側（インドネシアやオーストラリア方面）に押し寄せます。
- 太平洋東部の海水温の低下
暖かい海水が西へ移動することで、太平洋東部（南米沿岸）では深海の冷たい水が湧き上がり、海面水温が平年よりも低くなります。
- 大気の循環の変化
貿易風が強まると、大気の対流が活発になり、インドネシアやフィリピン周辺では雨が増えます。一方、太平洋東部や南米沿岸では降水量が減少し、乾燥した状態になります。
ラニーニャ現象の影響
ラニーニャ現象は世界各地の気候に影響を与えます。
🔹 日本への影響
- 冬：寒気が流れ込みやすくなり、寒冬（寒い冬）になりやすい。日本海側では大雪になることが多い。
- 夏：太平洋高気圧の張り出しが強くなり、猛暑になりやすい。
🔹 その他の地域への影響
- 東南アジア：降水量が増え、大雨や洪水が発生しやすい。
- アメリカ西部・南米：干ばつが発生しやすい。
- オーストラリア：雨が多くなり、大洪水のリスクが高まる。
ラニーニャ現象の周期
ラニーニャ現象は数年おきに発生し、通常は1年程度で終息します。ただし、長引く場合もあり、数年間続くこともあります。エルニーニョ現象と交互に発生することが多く、気候の長期的な変動に影響を与えています。
現在（2024〜2025年）の寒波も、ラニーニャ現象に関連している可能性が指摘されています。
