2025年02月02日
No.6120 ちょっと一休み その965 『 ”海の温暖化” 暮らしへの影響 その1 魚に異変!』
昨年、11月17日(日)放送の「明日をまもるナビ」(NHK総合テレビ)で「”海の温暖化” 暮らしへの影響は?」をテーマに取り上げていたので4回にわたってご紹介します。
1回目は、「魚に異変!」についてです。
なお、日付けは全て、番組放送時のものです。

昨年に続き統計開始以来、最高の暑さとなった今年の夏。
全国的に猛烈な暑さに見舞われ、北日本でも連日30℃を超える記録的な高温となりました。
この原因の一つと見られているのが北の海で起きている、ある異変。
海洋熱波です。
海面水温が一定期間、極端に高い状態が続く現象で、地球温暖化や海流の異常な動きによって発生すると考えられています。
海面水温の上昇の影響は猛暑だけに止まりません。
上陸まで勢力が衰えない台風。
同じ場所に短時間、大量に降る雪。
更に冷たい海水を好む魚の漁獲量が減少。
食卓を直撃しています。
海水温が高い状態が続く海の温暖化によって私たちの暮らしはどうなるのか、考えていきます。

東京大学 先端科学技術県有センターの中村尚教授は次のようにおっしゃっています。
「地球温暖化といいますと、温室効果ガスの増加によって平均気温が上昇していくと、そういうことを皆さん、イメージされると思うんですけども、実は、海の海面水温も上昇してきているんですね。」
「例えば、先日、奄美、沖縄で季節外れの豪雨がありましたけども、実は、それにも“海の温暖化”が影響している可能性もあるんですね。」

日本近海の海面水温は、平年、過去30年よりどれくらい高いかを表しているんですけども、これ、10年前の7月下旬のものです。
こうやって見ると、北日本、北海道とか、その周辺は1℃とか上がっているところがあるのかなっていう。
じゃ、今年どうなのか見てみましょう。
こちらです。
中村教授は次のようにおっしゃっています。
「今年の7月なんですけども、北日本周辺だけではなくて、まあ日本海も、それから沖縄周辺も、それから南海上も、もう全域が海面水温、平年よりも高いという状態になってきています。」
「この異常な高い海水温、実はですね、ここ4年ほど続いています。」
「で、特に昨年から1年半ぐらいですね、これまでに例がないような、そういうレベルの水温の高さが続いて来ています。」
「この高温傾向によってですね、海は勿論、気象や気候にも様々な影響が出始めています。」
「その辺りを今日、少し考えていければと思っています。」

スルメイカの代わりに函館で獲れるようになったのが温かい水を好むブリです。
ブリは長崎や島根でよく獲れてきましたが、近年、海水温の上昇とともに北海道での漁獲量が急激に増えました。
漁獲量が減少しているのはスルメイカだけではなく、岩手ではサケやウニも減少。
代わりに福岡ではアカハタやシイラなど、南方系の魚が水揚げされるようになりました。

海で何が起こっているのか、魚の生息域がどのように移動しているかを調べるプロジェクトが始まっています。
泳いでいる魚からはふんやうろこ、細胞片が海中に出されます。
海水を採取し、科学的な方法でDNA情報を分析することで、その海域で生息する魚種などが一定程度、把握出来ます。
全国1200ヵ所で採取した海水からDNA情報を分析すると、サケ、サバ、マガレイなど、私たちの食卓になじみの深い魚の数々が生息域を北に移している可能性が見えてきました。
東北大学大学院の近藤倫生教授は次のようにおっしゃっています。
「最初、見た時はすごく驚いたんですね。」
「少なくとも、あらゆる生物がその場に留まっていて、安定な状態にあるわけではなさそうだ。」

更に 北だけでなく、生息域を南に移した可能性のある魚も見られたのです。
京都大学フィールド科学教育研究センター副センター長、益田玲爾さんは次のようにおっしゃっています。
「基本的には北に上がる種類が多いでしょうけれども、それによって居場所を奪われるということで南に下る魚もいるかもしれないです。」
「獲れる魚が変わってくる、旬が変わるってこともある、異常な事態だと思います。」

また、中村教授は次のようにおっしゃっています。
「既に生息域の北限がですね、更に北に移っているとか、そういう魚もあるようですし、またその魚種によってはですね、漁獲量が大幅に減ってしまって、まさにその水産業にとっては大きな打撃になってるというところも出てきていますよね。」
「実際、昨年から今年にかけて水温上昇がかなり顕著になってきていますね。」
「世界との状況と比べてみますと、日本の近海というのはですね、世界の平均的な海の温暖化のケースの2倍以上の速さで温暖化が進んできている海域なんですね。」
「ですから、そういうふうに温暖化のスピードは速いということは、生き物にとってですね、新しい環境に慣れるという、提供する時間がほとんどないということになってしまいますから、本当に過酷な環境になってきてるんだと思います。」

ここまで取り上げたのは比較的長い距離を泳げる魚でしたけれども、すぐに移動することが難しい生き物たちもいますよね。
中村教授は次のようにおっしゃっています。
「まさに、その場で動けないような生物にとっては、この急激な海の温暖化っていうのはかなりなストレスになっているはずで、生態系の影響はかなり深刻になっていると思います。」

サンゴに適した海の温度は25℃から28℃と言われているんですね。
で、サンゴの色のもとになっているのは褐虫藻と呼ばれる植物プランクトンなんですね。
サンゴと共生して栄養を供給しているんです。
ところが、水温が上昇していくとストレスを受けます。
そして、ストレスを受けますと、その褐虫藻が抜けるなどしてサンゴの骨格が透けて見えるようになってきます。
これは白化現象なんです。
で、実際、石垣島の沖合の国内最大と言われるサンゴ礁ではサンゴの死滅につながる白化現象が全体の84%も起きていることが分かりました。(環境省調べ)
中村教授は次のようにおっしゃっています。
「先ほど、沖縄の話が出ましたけど、サンゴの生息に最適な温度が水温25℃から28℃。」
「実はですね、28℃を超える海水温、これはもう当たり前になってきちゃってるんですね。」
「ですから、明らかに沖縄近海のサンゴにとっては海が温か過ぎる状況になって、相当なストレスが溜まっていますね。」
「それで、先ほど出ました褐虫藻は植物トランプトンですので、光合成をしてくれますのでCO2を吸ってくれるんですよね。」
「ですから死滅に至るということになってくると、CO2の吸収も減ってくるので、その分だけ大気中にCO2が残るということで温暖化が更に加速してしまうという危険性もあると思います。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組の内容を以下にまとめてみました。

(急速に進む地球温暖化)
・昨年に続き統計開始以来、最高の暑さとなった今年の夏、全国的に猛烈な暑さに見舞われ、北日本でも連日30℃を超える記録的な高温となった。
・この原因の一つと見られているのが北の海で起きている異変、海洋熱波である。
 -海面水温が一定期間、極端に高い状態が続く現象で、地球温暖化や海流の異常な動きによって発生すると考えられている。
 -海面水温の上昇の影響は猛暑だけでなく、上陸まで勢力が衰えない台風である。
 -同じ場所に短時間、大量に降る雪もある。
 -更に冷たい海水を好む魚の漁獲量が減少し、食卓を直撃する。
・地球温暖化により海の海面水温も上昇してきている。
 -先日、奄美、沖縄で季節外れの豪雨があったが、それにも“海の温暖化”が影響している可能性もある。
・今年の7月は10年前の7月に比べて、日本の全域で海面水温が平年よりも高いという状態になってきている。
・この異常な高い海水温は、ここ4年ほど続いている。
・特に昨年から1年半ぐらいで、これまでに例がないようなレベルの水温の高さが続いて来ている。
・この高温傾向によって、海は勿論、気象や気候にも様々な影響が出始めている。

(世界の平均的な海の2倍以上の速さで温暖化が進む日本の近海)
・昨年から今年にかけて水温上昇がかなり顕著になってきている。
・世界の状況と比べると、日本の近海は世界の平均的な海の温暖化のケースの2倍以上の速さで温暖化が進んできている海域である。
 -こうした海域は、生き物にとって新しい環境に慣れる時間がほとんどなく、過酷な環境になってきている。

(海水温の上昇による漁獲量への影響)
・スルメイカの漁獲量が減少している代わりに函館で獲れるようになったのが温かい水を好むブリである。
・一方、岩手ではサケやウニの漁獲量が減少している。
・代わりに福岡ではアカハタやシイラなど、南方系の魚が水揚げされるようになった。

(魚の生息域調査プロジェクトが始動)
比較的長い距離を泳げる魚について:
・魚の生息域がどのように移動しているかを調べるプロジェクトが始まっている。
 -泳いでいる魚からはふんやうろこ、細胞片が海中に出され、これらを、海水を採取し、科学的な方法でDNA情報を分析することで、その海域で生息する魚種などが一定程度、把握出来る。
 -全国1200ヵ所で採取した海水からDNA情報を分析すると、サケ、サバ、マガレイなど、私たちの食卓になじみの深い魚の数々が生息域を北に移している可能性が見えてきた。
 -更に 北だけでなく、生息域を南に移した可能性のある魚も見られた。
 -獲れる魚が変わってくる、旬が変わることもある、異常な事態だと思われる。
 -既に生息域の北限が更に北に移っている魚もあるようで、また、その魚種によって漁獲量が大幅に減ってしまい、まさにその水産業にとっては大きな打撃になってるところも出てきている。

すぐに移動することが難しい生き物について:
・その場で動けないような生物にとっては、この急激な海の温暖化はかなりなストレスになっているはずで、生態系の影響はかなり深刻になっていると思われる。
・サンゴに適した海の温度は25℃から28℃と言われているが、サンゴの色のもとになっている褐虫藻と呼ばれる植物プランクトンは、サンゴと共生して栄養を供給しているが、水温が上昇していくと、ストレスを受けると、抜けるなどしてサンゴの骨格が透けて白化現象が起きる。
 -石垣島の沖合の国内最大と言われるサンゴ礁ではサンゴの死滅につながる白化現象が全体の84%も起きていることが分かった。(環境省調べ)
・褐虫藻は植物トランプトンなので、光合成をしてCO2を吸収してくれるが、死滅するとCO2の吸収も減ってくるので、その分だけ大気中にCO2が残るので温暖化が更に加速してしまうことになる。

要するに、急速に進む世界的な地球温暖化の中で、日本近海の海水温が世界平均の2倍以上の速さで上昇し、海洋熱波が発生し、猛暑・台風の強大化・異常気象が頻発しているのです。
そうした中、魚の生息域の変化により、漁獲量の減少や獲れる魚の種類が変わったり、サンゴの白化が進行し、生態系の変化が深刻化し、温暖化がさらに加速する恐れがあるのです。
なお、日本近海の海水温が世界平均の2倍以上の速さで上昇している理由については添付を参照下さい。


添付)

日本近海の海水温が世界平均の2倍以上の速さで上昇している理由は?
ChatGPT

日本近海の海水温が世界平均の2倍以上の速さで上昇している主な理由は、以下の要因が複合的に影響しているためです。
1. 黒潮(日本海流)と親潮(千島海流)の影響
• 黒潮の強まり: 日本の南側を流れる黒潮(暖流)が強まり、日本近海により多くの熱を運び込んでいる。
• 親潮の弱体化: 日本の北側を流れる親潮(寒流)が弱まり、冷たい海水の南下が減少し、海水温が高い状態が続きやすくなっている。
2. 地球温暖化による熱の蓄積
• 大気中の温室効果ガス(CO₂など)の増加により、海面近くの熱が蓄積されやすくなっている。
• 海は大気よりも熱を吸収しやすいため、日本近海のような海流の影響が強い地域では、急速に温暖化が進行している。
3. 海洋熱波の頻発
• 一定期間、極端に高い海水温が続く海洋熱波が頻発しており、通常よりも長期間にわたって海水温が高止まりする現象が続いている。
4. 太平洋十年規模振動(PDO)との関係
• 太平洋の海水温の周期的変動(PDO)が暖周期に入ると、日本近海の水温も上昇しやすい。
• 最近の観測では、PDOの影響で黒潮の勢いが増し、温暖化の進行が加速している可能性がある。
5. エルニーニョ・ラニーニャ現象の影響
• エルニーニョ現象が発生すると、太平洋の気流パターンが変化し、日本近海の水温が上昇しやすくなる。
• 近年の海水温上昇には、エルニーニョの影響も関与している可能性が指摘されている。
まとめ
日本近海の海水温が急速に上昇しているのは、黒潮の強まり・親潮の弱体化・地球温暖化の影響・海洋熱波の増加・PDO(太平洋十年規模振動)やエルニーニョの影響など、複数の要因が組み合わさっているためと考えられます。

 
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