昨年9月20日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でエコなロケットの開発秘話について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。
今、宇宙でもSDGsの動きが広がっているんです。
スタートアップが手掛けるエコなロケットの開発の舞台裏を取材しました。
東京理科大学のキャンパス内にオフィスを構えるスタートアップ、株式会社スペースウォーカー。
機体に翼がある、いわゆる「有翼式」ロケットを開発しています。
共同創業者の米本浩一CTO、40年近く、このロケットを研究してきました。
「今まで宇宙輸送は使い捨て(ロケット)がメインだったんですね。」
「なぜ有翼式がいいかというと、帰ってくる時に滑空して射点まで戻れると。」
通常、再使用出来ないタイプのロケットは地球上の海に落下させていました。
南太平洋の“宇宙船の墓場(ポイント・モネ)”と呼ばれる場所では大量の宇宙船が浮かんだままに(添付1参照:ポイント・ネモは、地球上で最も人里離れた場所の一つであるため、宇宙機器の廃棄に最適とされている。また、実際は宇宙船の破片は海に沈んでおり、海面に浮かんでいるわけではない。)
スペースウォーカーの開発する有翼式は、宇宙空間まで到達した後、地上に戻り、飛行機のように着陸が可能。
燃料も環境に配慮し、再使用出来るエコなロケットをうたっています
そして、技術の肝が樹脂とカーボンで作る燃料タンクです。
カーボンは軽量ですが、燃え易いため、燃料タンクには不向きだと考えられていましたが、米本さんは、燃えにくくすることに成功。
米本さんは次のようにおっしゃっています。
「(通常の)複合材でタンクを作ると、すぐに酸素で燃えちゃうんですね。」
「(テスラの)イーロン・マスクもそれで失敗してる。」
「JAXAで検証してもらったら、「不思議だ」と「燃えないね」ということになったので、特許を取った。」
マスク氏のスペースXも欲しがる技術と自負する米本さん。
その技術力などが評価され、昨年(2023年)、政府が成長企業を支援する「中小企業イノベーション創出推進事業」(SBIR)の第一フェーズに選ばれ、補助金、20億円も獲得しました。
2028年に小型打ち上げ用ロケットを、2030年には有人ロケット「Naga Tomo」を打ち上げる計画です。
この「Naga Tomo」という名前の由来には、ある思いが。
「今から37年前ぐらいになりますけれども、(当時、勤めていた)川崎重工業から文部省(当時)の宇宙科学研究所の長友先生の研究室に派遣をされて。」
有翼式のロケットは17年前に亡くなった恩師から受け継いだ技術開発だったのです。
悲願達成のために、事業を持続可能なものに。
そこで、新たなビジネスを始めました。
初めてテレビカメラが入ることを許された長崎県の工場。
スペースウォーカー 複合材技術部の中村公俊さんは次のようにおっしゃっています。
「(今、)炭素繊維を巻いてます。」
「完成すると国内初の(炭素繊維で強化した)オールプラスチック水素ステーション用タンクとなります。」
宇宙用ではなく、地上向けに貯蔵・運搬用の水素タンクを開発しているのです。
水素ステーションで使われているタンクと違い、スペースウォーカーが開発している炭素繊維のタンクだと500kg弱なので、既に150kg〜200kg軽く、重量差が出ています。
更に、価格自体も既製品の約3分の2に抑えられるといいます。
来年(2025年)の製品化を目指し、破裂試験や耐久試験などを進めています。
現場にやって来た眞鍋顕秀CEOは米本さんとともにスペースウォーカーを立ち上げた人です。
宇宙向けの軽量化技術を使ったタンクは、長い年月がかかる事業のためでもあるそうです。
眞鍋さんは次のようにおっしゃっています。
「宇宙って今、盛り上がってるんですけど、ちゃんと地に足がついている、収益化が出来ている宇宙ベンチャーって非常に少ないなと思っていて。」
収益を上げながらロケットを開発する持続可能な体制が整ってきました。
米本さんは次のようにおっしゃっています。
「勿論、これ(開発)は終わるとは思ってないので、次の新しい世代にきちんと残して、つなげられるようにやってかないといけないと思っています。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組の内容を以下にまとめてみました。
・今、宇宙でもSDGsの動きが広がっている
・スタートアップ、スペースウォーカーの共同創業者、米本さんは、機体に翼がある、いわゆる「有翼式」ロケットを40年近く研究してきた
-通常、再使用出来ないタイプのロケットは地球上の海に落下させていたが、有翼式だと宇宙空間まで到達した後、地上に戻って来る時に、飛行機のように滑空して射点まで戻ることが出来る
・燃料も環境に配慮し、再使用出来るエコなロケットをうたっている
・技術の肝が樹脂とカーボンで作る燃料タンクである
-カーボンは軽量だが、燃え易いため、燃料タンクには不向きだと考えられていたが、米本さんは、燃えにくくすることに成功し、特許を取得した
-米本さんは、スペースXも欲しがる技術と自負する
・その技術力などが評価され、2023年、政府が成長企業を支援する「中小企業イノベーション創出推進事業」(SBIR)の第一フェーズに選ばれ、補助金、20億円も獲得した
・2028年に小型打ち上げ用ロケットを、2030年には有人ロケット「Naga Tomo」を打ち上げる計画である
-有翼式のロケットは17年前に亡くなった米本さんの恩師である宇宙科学研究所の長友先生から受け継いだ技術開発だったのである
・悲願達成のために、事業を持続可能なものにすべく、新たなビジネスを始めた
-国内初の、地上向けに、貯蔵・運搬用の炭素繊維で強化したオールプラスチックの水素ステーション用タンクを開発している
-現在、水素ステーションで使われているタンクと違い、スペースウォーカーが開発している炭素繊維のタンクだと500kg弱なので、既に150kg〜200kg軽く、重量差が出ている
-更に、価格も既製品の約3分の2に抑えられるという
-2025年の製品化を目指し、破裂試験や耐久試験などを進めている
・スペースウォーカーの共同創業者、眞鍋CEOは、宇宙向けの軽量化技術を使ったタンクは、長い年月がかかる事業のためでもあるという
-収益化が出来ている宇宙ベンチャーは非常に少ない中、収益を上げながらロケットを開発する持続可能な体制を目指して、次の新しい世代につなげられるようにしたいと思っている
ちなみに、既に地球に帰還出来る再利用可能なロケットを開発した企業には、NASAやSPACEXなどがあります。(添付2参照)
なお、スペースウォーカーが開発中の地球に帰還出来る再利用可能なロケットの狙いについては添付3を参照下さい。
ということで、スペースウォーカーには、新しいタイプの炭素繊維のタンクを市販化し、その利益で再利用可能なロケットの開発を加速化させ、宇宙旅行を実現させていただきたいと思います。
ちなみに、1月15日、株式会社iSPACE(参照:No.5477 日本の宇宙ベンチャーの取り組み事例 その3 賑わいを見せる宇宙関連ビジネス!)がロケット打ち上げをしましたが(添付4参照)、その狙いは添付5の通り、地球に帰還する計画ではなく、月面着陸を目指す指すミッションが主な目的です。
このように、今や、世界中の多くのチャレンジ精神の旺盛なスタートアップが宇宙ビジネスに取り組んでいるのです。
こうした中からGAFAやエヌビディア、あるいはテスラのような時代をけん引する世界的な企業が誕生してくると見込まれます。
是非、日本からも誕生して欲しいと思います。
ですから、若い、チャレンジ精神の旺盛な方々の中からAIやロボットの関連技術を駆使して、宇宙ビジネスなど、様々な分野から自分の興味の持てる分野を探して、チャレンジしていただきたいと思います。
添付1)
南太平洋の“宇宙船の墓場(ポイント・モネ)”と呼ばれる場所では大量の宇宙船が浮かんだままになっているのか?
ChatGPT
南太平洋の「宇宙船の墓場」と呼ばれる場所、ポイント・ネモは、宇宙船が実際に「浮かんでいる」場所ではなく、廃棄された宇宙船が大気圏再突入の後に沈む海域です。
ポイント・ネモの概要
• 位置: 南太平洋にあり、最も近い陸地から約2,700km離れている非常に孤立した場所です。
• 目的: 使用済みの宇宙船や人工衛星、宇宙ステーションの廃棄物が大気圏で燃え尽きて残った破片がこの場所に沈むように計算されています。
• 浮かんでいるわけではない: 宇宙船の破片は海に沈んでおり、海面に浮かんでいるわけではありません。ほとんどの物体は大気圏再突入時に燃え尽きますが、一部の破片がこの海域に沈むことになります。
ポイント・ネモは、地球上で最も人里離れた場所の一つであるため、宇宙機器の廃棄に最適とされています。
添付2)
これまで地球に帰還出来るロケットを開発した企業は?
ChatGPT
これまで地球に帰還できる再利用可能なロケットを開発した主な企業は以下の通りです。
1. NASA
• スペースシャトル: 再利用可能な宇宙船で、有翼式の設計を持ち、滑空して地球に帰還しました。
2. スペースX
• ファルコン9: 第一段を垂直着陸させて再利用するロケット。
• スターシップ: 現在開発中で、全段が再利用可能な垂直着陸型ロケット。
3. ブルーオリジン
• ニューシェパード: 亜軌道飛行用の再利用可能なロケットで、垂直着陸により地球に帰還します。
• ニューグレン: 開発中の軌道ロケットで、第一段の垂直着陸を目指しています。
4. ロケットラボ
• エレクトロン: 小型の再利用可能なロケットで、第一段を垂直着陸させる技術を試みています。
5. シエラ・ネヴァダ・コーポレーション(SNC)
• ドリームチェイサー: 有翼式の再利用可能な宇宙船で、滑空して着陸する設計。
6. ソビエト連邦
• ブラン: スペースシャトルに似た設計の再利用可能な宇宙船で、滑空して地球に帰還しました。
これらの企業とプロジェクトが、地球への再帰還を可能にする技術を開発してきました。
添付3)
スペースウォーカーが開発中の地球に帰還できる再利用可能なロケットの狙いは?
ChatGPT
スペースウォーカーが開発中の地球に帰還できる再利用可能なロケットの狙いは、商業宇宙旅行と科学研究のコストを削減し、より頻繁でアクセスしやすい宇宙利用を実現することです。
スペースウォーカーの狙い
1. 再利用性の向上: 再利用可能なロケットを開発することで、打ち上げコストを大幅に削減し、宇宙旅行や宇宙への物資輸送をより経済的にします。
2. 宇宙旅行の実現: 有翼式ロケットを使い、地球に帰還する技術を活用して、商業宇宙旅行を実現しようとしています。これにより、一般市民が宇宙を訪れる機会を増やします。
3. 科学研究の促進: 安価で頻繁に宇宙にアクセスできるようになることで、科学者や研究機関が宇宙実験を行いやすくなり、宇宙科学の発展を促進します。
4. 地球への安全な帰還: 有翼式の設計により、ロケットや宇宙船が滑空して安全に地球に帰還することを目指しています。
スペースウォーカーは、日本を含むアジア地域からの宇宙旅行市場を開拓し、宇宙産業のさらなる発展を目指しています。
添付4)
iSPACEの先日のロケット打ち上げに関する記事は?
ChatGPT
株式会社ispaceは、2025年1月15日15時11分(日本時間)に、月着陸船「レジリエンス(RESILIENCE)」を米国フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げました。
アストロアーツ
この打ち上げは成功し、約1時間半後に着陸船はロケットから分離され、予定の軌道に投入されました。
Reuters Japan
ispaceは、2022年の初回ミッションでの着陸失敗を受け、今回のミッション2で再挑戦を行っています。
ミッション2では、打ち上げから月面着陸までの間に10段階のマイルストーンを設定しており、現在、Success 3「安定した航行状態」を確立したと報告されています。
ispace
月面着陸は、打ち上げから4〜5か月後を予定しており、成功すれば日本の民間企業として初の月面着陸となります。
Reuters Japan
今回のミッションでは、以下の6つのペイロードが搭載されています。
ispace
- 高砂熱学工業株式会社の月面用水電解装置
- 株式会社ユーグレナの月面環境での食料生産実験を目指した自己完結型モジュール
- 台湾の国立中央大学宇宙科学工学科が開発する深宇宙放射線プローブ
- 株式会社バンダイナムコ研究所の「GOI宇宙世紀憲章プレート」
- ispaceの欧州法人ispace EUROPEが開発したマイクロローバー「テネシアス(TENACIOUS)」
- スウェーデンのアーティストによる「ムーンハウス」と呼ばれる赤い小さな家
これらのペイロードは、月面での技術実証や科学実験を目的としています。
ispaceの袴田武史代表取締役は、「再挑戦が本格的に始動したことに興奮しています」と述べています。
アストロアーツ
今後のミッションの進展が期待されます。
添付5)
先日、iSPACEの打ち上げたロケットは地球に帰還する計画か?
ChatGPT
iSPACEの打ち上げたロケットは、地球に帰還する計画ではなく、月面着陸を目指すミッションが主な目的です。
iSPACEのミッション概要
• ミッションの目的: iSPACEは、日本の民間企業として、月面探査や資源利用を目指しています。
• ロケットの使い捨て: iSPACEが利用するロケットは通常、地球に帰還する計画はなく、打ち上げ後に消費されるものです。彼らの注目する技術は、月面探査機(ランダー)やローバーの開発です。
• 将来の計画: 現在のところ、iSPACEのミッションは月面での活動に重点を置いており、地球に再利用可能なロケットを戻す計画は発表されていません。
iSPACEは、月面における資源利用や、持続可能な月面経済の構築を目指して活動しています。