昨年9月16日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でネイチャーポジティブについて取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。
ネイチャーポジティブは自然環境を回復させて、生態系をより豊かにするという取り組みですが、2030年には47兆円の経済効果を生み出すとして注目されています。
そのネイチャーポジティブにいち早く取り組む企業を取材しました。
群馬県赤木山を歩いている大手飲料メーカー、サントリーホールディングス サスティナビリティ経営推進部の市田智之さんは次のようにおっしゃっています。
「枯れた木を切っていただくのが、多分当面必要かな。」
「きちんと森林を整備することによって豊かな水が育まれると考えています。」
藪に覆われ、倒木の目立つ荒れた森を再生させる「天然水の森プロジェクト」です。
2003年から全国の森の再生に取り組むサントリー、整備を進める森は約1万2000ヘクタール、東京・山手線内の2倍近い広さになります。(2024年8月現在)
岐阜県東白川村、こちらの森も2010年からサントリーが整備に取り組んでいます。
サントリーホールディングス サスティナビリティ経営推進部の三枝直樹さんは次のようにおっしゃっています。
「間伐をして沢山の広葉樹が入ってきて、それに関わる昆虫や鳥、動物が沢山来ることによって豊かな生態系が育まれるかなと。」
間伐をしないと光が差し込まず、地面に植物が育たなくなります。
そこに雨が降ると表面の土が流され、土砂崩れのリスクも高まるのです。
こちらは7年前に間伐したエリア、木々の隙間に様々な植物が生えています。
新たな植物が育つと森に虫たちが戻ってきます。
すると鳥なども姿を現し、小川にはサワガニの姿も。
森を整備し、再生させることで生物の多様性を回復させるネイチャーポジティブの取り組みです。
生き物が増えることで土の中の微生物も増え、良質な土に変化するといいます。
三枝さんは次のようにおっしゃっています。
「(土が)降った雨を受け止めて、地下に染み込ませてくれる。」
「土が良くなって、我々にとってみれば、水を育んでもらえる山になってきますので。」
サントリーは飲料水やビールなどの製品に地下水を使っていますが、各地の工場近くの森を再生し、その生態系を回復させることで天然の水を生み出す環境を整備、本業のビジネスを持続可能なものにしているのです。
サントリーホールディングス サスティナビリティ経営推進本部の橋本智裕部長は次のようにおっしゃっています。
「ネイチャーポジティブ(自然の再興)に取り組まない企業は今後生き残れない。」
「日本から始めた取り組みではありますが、グローバルに広げていきたいと考えております。」
国連生物多様性条約15回締約国会議(COP15)では「2030年までに自然の損失を食い止め、回復軌道に乗せること」が目標に定められました。
環境省も「ネイチャーポジティブ」の取り組みで新たに2030年には47兆円の経済効果が生まれるとしていて、企業が投資家などに選ばれる重要な指標になると見られています。
そんな潮流を見据え、ネイチャーポジティブをいち早くビジネスにした企業があります。
2017年に創業した株式会社バイオーム(京都市下京区)の社長は、京都大学大学院で農学の博士号を取得した藤木庄五郎さんです。
藤木さんが開発したスマホアプリ「Biome」(使い方については添付参照)では、例えば、社内で飼育しているカエルを撮影するとアズマヒキガエルが63.4%と表示されました。
AIが画像を解析し、その名前と確率を表示して教えてくれるのです。
藤木さんは次のようにおっしゃっています。
「「ポケモンGO」のリアル版のようなもので、生き物10万種類に対応しているということで、ちょっとしたゲームになっているかなと思います。」
アプリを使い、見つけた生き物の情報を地図上に記録していくことも可能です。
全国各地でどんな生き物が生息しているか、毎日1万件ほどのデータが「Biome」に集まってくるといいます。
藤木さんは次のようにおっしゃっています。
「今までなんとなくやっていた環境・生物多様性保全をきちんとデータで評価し、生物多様性を守る活動につなげていく。」
東京・大手町、高層ビルが立ち並ぶエリアに緑が生い茂る場所があります。
大手デベロッパーの東京建物が2013年から設備する「大手町タワー」の敷地内の森。
大手町の森にどんな植物が生息しているか調べるのです。
そこで使うのがバイオームが企業向けに機能を追加して開発したアプリ。
植物の写真を次々に撮っていきます。
これまでに約200種類の植物を確認。
更に調査を進めます。
また、木や幹の太さなどを入力することで年間のCO2の吸収量を算出出来るのです。
東京建物 ビルマネジメント第一部の高橋優希さんは次のようにおっしゃっています。
「数値で見えると、(環境に)どれくらい貢献出来ているか分かってくるので、評価の一つの軸にもなり得るものだとは思っています。」
バイオームのアプリによって得られた生物多様性の客観的なデータが投資家や顧客などへのアピールにもつながるといいます。
バイオームの藤木さんは次のようにおっしゃっています。
「世界がネイチャーポジティブに変わっていくための必要不可欠な一つのパーツになっていきたいなと常に思っています。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
なお、COP15とネイチャーポジティブの関連については添付2を参照下さい。
番組の内容を以下にまとめてみました。
(ネイチャーポジティブとは)
・国連生物多様性条約15回締約国会議(COP15)では「2030年までに自然の損失を食い止め、回復軌道に乗せること」が目標に定められている
・ネイチャーポジティブはCOP15の結果を受けて、自然環境を回復させて、生態系をより豊かにするという取り組みである
・環境省も「ネイチャーポジティブ」の取り組みで新たに2030年には47兆円の経済効果が生まれるとして注目されている
・「ネイチャーポジティブ」は、企業が投資家などに選ばれる重要な指標になると見られている
(ネイチャーポジティブにいち早く取り組む企業の事例)
サントリーホールディングス:
・2003年から全国的に藪に覆われ、倒木の目立つ荒れた森を再生させる「天然水の森プロジェクト」に取り組んでいる
・整備を進める森は約1万2000ヘクタール、東京・山手線内の2倍近い広さになる(2024年8月現在)
-間伐をして沢山の広葉樹が入ってきて、それに関わる昆虫や鳥、動物が沢山来ることによって豊かな生態系が育まれる
-間伐をしないと光が差し込まず、地面に植物が育たなくなる
-そこに雨が降ると表面の土が流され、土砂崩れのリスクも高まる
・7年前に間伐した岐阜県東白川村のエリアでは、木々の隙間に様々な植物が生えている
-新たな植物が育つと森に虫たちが戻ってくる
-すると鳥なども姿を現し、小川にはサワガニの姿もある
・生き物が増えることで土の中の微生物も増え、良質な土に変化する
・土が降った雨を受け止めて、地下に染み込ませてくれると、土が良くなって、水を育んでもらえる山になってくる
・サントリーは飲料水やビールなどの製品に地下水を使っているが、各地の工場近くの森を再生し、その生態系を回復させることで天然の水を生み出す環境を整備、本業のビジネスを持続可能なものにしている
・サスティナビリティ経営推進本部の橋本部長は「ネイチャーポジティブ(自然の再興)に取り組まない企業は今後生き残れない。グローバルに広げていきたい。」と言う
バイオーム:
・ネイチャーポジティブの潮流を見据え、2017年に創業したバイオームの藤木社長は、いち早く、AIが画像を解析し、その名前と確率を表示して教えてくれるスマホアプリ「Biome」を開発した
-「ポケモンGO」のリアル版のようなもので、生き物10万種類に対応している
-アプリを使い、見つけた生き物の情報を地図上に記録していくことも出来る
-全国各地でどんな生き物が生息しているか、毎日1万件ほどのデータが「Biome」に集まってくるという
・藤木さんは、環境・生物多様性保全をきちんとデータで評価し、生物多様性を守る活動につなげていくという
・東京・大手町、高層ビルが立ち並ぶエリアに緑が生い茂る場所があります。
・大手デベロッパーの東京建物が2013年から設備する「大手町タワー」の敷地内の森でどんな植物が生息しているか調べている
・そこで使うのがバイオームが企業向けに機能を追加して開発したアプリである
-植物の写真を次々に撮っていき、これまでに約200種類の植物を確認しており、更に調査を進める
-木や幹の太さなどを入力することで年間のCO2の吸収量を算出出来る
-数値化により、環境にどれくらい貢献出来ているか分かってくるので、評価の一つの軸にもなり得る
・バイオームのアプリによって得られた生物多様性の客観的なデータが投資家や顧客などへのアピールにもつながる
・バイオームの藤木社長は、世界がネイチャーポジティブに変わっていくための必要不可欠な一つのパーツになっていければと願っている
なお、地球温暖化は今や、取り返しのつかない状況に近いところまで来ており、世界各地で大型台風や集中豪雨、あるいは干ばつなど異常気象による被害が多発しています。
もはや異常気象ではなく、CO2排出量の増加による気候変動が起きているという表現が適切な状態に陥っているのです。
そして、これらの気候変動による被害額は年々増加傾向にあります。
将来の予測として、ドイツのポツダム気候影響研究所(PIK)は、気候変動による農業やインフラ、生産性、健康への被害総額が2050年までに年間38兆ドル(約4,180兆円)に達し、世界のGDPが17%減少する可能性があると報告しています。(添付3参照)
こうした状況は、地球全体から見れば、人類の営みが自然に与える脅威に他なりません。
私たち人類は地球に住んでいる生物の一種して、本来、自然に対して謙虚であるべきなのです。
地球環境の破壊者であってはならないのです。
そうした中、遅ればせながら、COP15で「2030年までに自然の損失を食い止め、回復軌道に乗せること」が目標に定められました。
こうした価値観で私たち人類は日々の暮らしを営むべきなのです。
ところが、現実には、プロジェクト管理と日常生活 No.903 『コーヒー栽培を巡る2050年問題への対策!』で、もし、地球温暖化がこのまま進むと、気温や湿度の上昇、降雨量の減少などを引き起こし、豆の品質が下がって、コーヒーにとって深刻な病気も発生し易くなり、その結果、コーヒー栽培に適した土地が大幅に減少し、コーヒーの生産量が大きく減少する恐れがあるとお伝えしました。
そして、今回はCOP15の結果を受けて、自然環境を回復させて生態系をより豊かにするという取り組み、すなわちネイチャーポジティブについてお伝えしました。
サントリーホールディングスやバイオームのように個々の企業によるネイチャーポジティブへの取り組みが進んでいるのです。
しかし、一方でトランプ次期アメリカ大統領は気候変動に対して懐疑的な見方を示しており、ネイチャーポジティブについても関心が全くないようです。(添付4参照)
そして、石油やガスの生産を促進し、エネルギー自給率の向上を目指すとしています。
ここで問題は、こうしたアメリカの対応によるCO2排出量の増加は地球全体の気候変動に悪影響を与えるということです。
また、これまで繰り返しお伝えしているように、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるガザへの爆撃といった戦争による環境破壊が進んでいます。
これらの戦争行為は人命を失うのみならず、CO2排出量の増加ももたらしているのです。
更にロシアのプーチン大統領は核兵器の使用をほのめかしていますが、人命、および自然に対する冒とくの最たるものです。
ただでさえ、気候変動への対応が急務であるのに、戦争はこうした対応とは真逆の行為であり、戦争というものをこうした観点から見つめ直すことも必要なのです。
ということで、気候変動対策として、アメリカであろうが、ロシアであろうが、どこの国であっても、気候変動の阻止に反する行為については、世界各国は団結して阻止すべきなのです。
添付1)
バイオームというスマホアプリはどのようにして使えるか?
ChatGPT
バイオームのスマホアプリ「Biome」は、生物多様性に特化したアプリで、ユーザーが身近ないきものを記録・共有するためのプラットフォームです。アプリの使い方は次の通りです。
アプリの基本機能と使い方
1. ダウンロードとインストール
o App Store(iOS)またはGoogle Play(Android)から「Biome」アプリをダウンロードしてインストールします。
2. アカウント作成
o 初回起動時にアカウントを作成します。メールアドレスを使用するか、SNSアカウントでの連携も可能です。
3. いきものの観察と記録
o アプリを使って自然環境で見つけた植物、昆虫、鳥などのいきものを写真に撮影します。
o 位置情報を利用して観察地点を記録することも可能です。
o 撮影した写真をアプリにアップロードし、観察データを記録します。
4. いきものの同定
o アプリにはAIによるいきものの同定機能が搭載されており、撮影した写真からいきものの種類を推測して表示します。
o 他のユーザーや専門家のコミュニティが同定をサポートしてくれる場合もあります。
5. データの共有と閲覧
o 自分の観察データを他のユーザーと共有することができます。
o 他のユーザーが記録したいきものデータも閲覧可能で、地域ごとの生物多様性の情報を知ることができます。
6. ランキングやイベント
o いきもの観察のランキング機能や、特定のテーマでの観察イベントも実施されており、ゲーム感覚で楽しむことができます。
使い方のポイント
• 自然観察の習慣化: 日常的に自然環境に目を向け、観察を続けることで、地域の生物多様性に対する理解が深まります。
• コミュニティとの連携: 他のユーザーと交流し、観察したいきものについて情報交換をすることで、より多くの知識を得ることができます。
• 環境教育や研究への活用: アプリを教育の場で使用したり、研究目的で観察データを収集するなど、多様な場面で活用することが可能です。
「Biome」アプリは、自然を身近に感じながら生物多様性を楽しむための強力なツールです。興味がある場合は、ぜひ試してみてください!
添付2)
国連生物多様性条約15回締約国会議(COP15)とネイチャーポジティブの関連は?
ChatGPT
国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)と「ネイチャーポジティブ」という概念は密接に関連しています。COP15では、生物多様性の保全と持続可能な利用を促進するための新たな枠組みが議論され、「ネイチャーポジティブ」がその中心的な考え方として浮上しました。
COP15の概要
• 会議の目的: 生物多様性条約(CBD)の締約国が集まり、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する行動計画を策定する。
• 主な成果: 2022年12月に、2030年までの目標を定めた「昆明-モントリオール生物多様性枠組み」が採択された。
o これには、30年までに陸地と海洋の30%を保護する目標が含まれています。
ネイチャーポジティブの概念
• 定義: 自然環境を悪化させるのではなく、むしろ再生させ、保全し、回復させることを目指すアプローチ。
• 目標: 2030年までに生物多様性の損失を止め、その後、2050年までに自然環境の回復を実現する。
• COP15との関連: COP15で採択された枠組みは、ネイチャーポジティブな世界を目指すものであり、各国がこの目標を実現するための具体的な行動を取ることが求められています。
企業とネイチャーポジティブ
• 多くの企業がネイチャーポジティブをビジネス戦略に組み込み、自然に与える影響を最小化しながら、生物多様性の保全に貢献する取り組みを進めています。
COP15とネイチャーポジティブは、生物多様性の危機に対処し、持続可能な未来を構築するための国際的な努力の中核を成しています。これらの取り組みを通じて、各国、企業、個人が協力して自然環境の保全を推進することが期待されています。
添付3)
世界各地で発生している異常気象による被害額は年間でどのくらいに達しているか、そして今後の予測についてはどうか?
ChatGPT
異常気象による世界の年間被害額は、近年増加傾向にあります。世界気象機関(WMO)の報告によれば、1970年から2019年の50年間で、気象災害の件数は5倍に増加し、経済損失は総額3.6兆ドル(約396兆円)に達しました。
BBC
また、2014年から2023年の10年間での被害総額は約2兆ドル(約300兆円)と推計されています。
CNN Japan
将来の予測として、ドイツのポツダム気候影響研究所(PIK)は、気候変動による農業やインフラ、生産性、健康への被害総額が2050年までに年間38兆ドル(約4,180兆円)に達し、世界のGDPが17%減少する可能性があると報告しています。
ロイター
さらに、2100年までに1,000兆ドル(約110京円)を超える被害が発生するとの指摘もあります。
朝日新聞
これらの予測は、温室効果ガスの排出量や気候変動対策の進展によって変動する可能性があります。気候変動の影響を軽減するためには、国際的な協力と積極的な対策が求められています。
添付4)
トランプ次期アメリカ大統領は気候変動についてどのよう見解を示しているか?
ChatGPT
ドナルド・トランプ氏は、2024年の米大統領選挙で再選を果たし、2025年1月に大統領に就任する予定です。彼の気候変動に対する見解と政策は、過去の政権時と同様に、気候変動対策に懐疑的な立場を取っています。
気候変動に対する見解
• 懐疑的な姿勢: トランプ氏は、気候変動に対して一貫して懐疑的な立場を示しており、過去には「地球温暖化は中国がでっち上げたものだ」と発言したこともあります。
政策の方向性
• パリ協定からの再離脱: トランプ氏は、再度の大統領就任後、米国をパリ協定から離脱させる意向を示しています。これは、彼が気候変動対策よりも国内産業の保護を優先する姿勢を反映しています。
テクノロジー・レビュー
• 化石燃料産業の支援: 彼は、石油やガスの生産を促進し、エネルギー自給率の向上を目指すとしています。これにより、化石燃料産業の規制緩和や新規採掘プロジェクトの推進が予想されます。
NHK
• 環境規制の緩和: トランプ氏は、バイデン政権下で強化された環境規制を撤廃し、産業界の負担を軽減する方針を示しています。これには、発電所の汚染規制の緩和や電気自動車への支援の廃止が含まれます。
リコー ブログ
国際的な反応
• 欧州連合(EU)の懸念: トランプ氏の再選に対し、EUは気候変動対策の後退を懸念しています。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、トランプ氏の勝利に祝意を表明しつつも、気候変動対策の継続を求める姿勢を示しています。
BBC
• 国連気候変動会議(COP29)での批判: 2024年11月に開催されたCOP29では、米国の気候特使がトランプ氏の気候政策を批判し、国際社会からも懸念の声が上がっています。
BBC
トランプ氏の再選により、米国の気候変動政策は大きな転換期を迎える可能性があります。彼の政策は、国内産業の振興を重視する一方で、国際的な気候変動対策の取り組みに影響を及ぼすと考えられます。
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