2024年06月13日
アイデアよもやま話 No.5920 盛り上がりを見せる宇宙産業 その2 急拡大する民間の宇宙ビジネス!
2月9日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で盛り上がりを見せる宇宙産業について取り上げていました。
そこで、3回にわたってご紹介します。
2回目は、急拡大する民間の宇宙ビジネスについてです。

急拡大する民間の宇宙ビジネス、日本の新たな基幹産業となれるのか、宇宙飛行士の山崎直子さんは次のようにおっしゃっています。
「(2010年に宇宙に行かれて、その時のことを思い返して、どんな体験だったかという問に対して、)やはり、宇宙という場は競争しつつも国を超えていろいろな人が協力し合って新しい可能性を広げていく場なんだなと実感しました。」
「(宇宙旅行もそうだが、宇宙の存在自体が少しずつ身近になっているようにも感じるが、若い世代の参入についてどう見ているかという問に対して、)昔は、例えば大型の人工衛星、1基作ろうとすると、数百億円という規模でスタートアップが扱える領域ではなかったんですけども、今は小型化の技術が進んで、人工衛星もすごく小さなものが出来て来ています。」
「そうすると初期投資が比較的小さくても出来易いということで、色々な方が参入し易くなっています。」
「で、データも増えているんですね。」
「それを使って社会にどう貢献していくかという領域になると、それこそアイデア、ビジョンが大切になるので若い世代の方々の存在も欠かせないです。」

こうした宇宙産業への若い世代の参入で、今、変化が起きている町がありました。
北海道・東部に位置する大樹町、人口、5000人あまりのこの町に今、ある変化が。
きっかけとなったのは、町の外れにある施設です。
スペースコタン株式会社の大出大輔取締役(32歳)は次のようにおっしゃっています。
「ここが北海道スペースポートのLCゼロという発射場の射点になります。」

実はここ、ロケットの打ち上げなどで使う“宇宙港”。
発射場と滑走路を備えていて、民間企業などが自由に活用出来ます。
今後、発射場を更に増やしていく予定で、世界中のロケット会社から問い合わせが来ているといいます。
大出さんは次のようにおっしゃっています。
「東にも南にも海が開けているという点で、世界的に見ても一つの場所で両方に打ち上げることが出来る海が開けているという場所は非常に希少でして。」

ここを拠点に活動しているのが堀江貴文氏が創業したインターステラテクノロジズ株式会社。
これまで、この場所から18機のロケットを打ち上げています。
従業員数はここ数年で約10倍に。
人口減少に悩む大樹町への若い世代の移住者が増加しています。
昨年、入社した伊藤志朗さん(26歳)もその一人で、愛知県から大樹町に移り住んできました。
「鹿とキツネはしょっちゅう見かける感じですね。」
「不安もあったんですけど、住んでみたらすごい住み易いなと思っていて。」

こうした動きもあり、大樹町の人口は一昨年、23年ぶりに増加に転じる結果に。
町をあげて宇宙産業に力を入れています。
大樹町の黒川豊町長は次のようにおっしゃっています。
「ドラッグストアも来ていただけた。」
「あるいは、大手スーパーも入っていただけたとか、コンビニは今3軒あるとかですね。」
「その辺がちょっと充実してきたのは、やはり宇宙のけん引力。」

そして、今年、“宇宙港”では更なる“町ぐるみ”の取り組みが。
インターステラテクノロジズの金井竜一朗さん(36歳)は次のようにおっしゃっています。
「あれが燃焼器ですね。」
「ゴーッと火が出るようなかたちです。」

準備が行われていたのは新型ロケット用エンジンの燃焼実験。
特徴は、その燃料です。
「もととしては牛さんのふん尿ですね。」

約5000人の人口に対し、2万頭以上の牛が飼育されている大樹町。
サンエイ牧場の辻本正雄会長は次のようにおっしゃっています。
「1日、さく乳牛(1頭)で60kgくらい、ふん尿が出ます。」

この牧場だけで、1日、80トン近くも出るというふん尿を活用し、ロケットの燃料にするというのです。
案内されたのは牧場の敷地内にある発酵槽という設備。
辻本さんは次のようにおっしゃっています。
「ふん尿を40℃に加温して攪拌するだけでメタンガスが発生するんです。」

こうして回収したメタンガスを精製し、ロケットの燃料として活用する計画です。
この牛由来の燃料がしっかり使えるのか。
今週(番組放送時)、ロケットエンジンの燃焼実験が行われました。
結果は無事成功。
この燃料を使った新型ロケットは来年度以降の打ち上げを目指して開発中です。
金井さんは次のようにおっしゃっています。
「町の方が、ロケットの会社があって良かったなと思ってもらえるように、一緒になって町づくり、地域づくりが出来るようにしたいなと思っています。」

山崎さんは現在、宇宙港、スペースポートの整備促進を目指す団体、スペースポートジャパンの代表理事を務めていらっしゃいます。
現在は、先ほどの北海道・大樹町の他にも和歌山、大分、宮古島と4ヵ所で準備が進んでいます。
山崎さんは次のようにおっしゃっています。
「(今後、宇宙ビジネスの発展のためには、このスペースポートがかなり重要になってくるかという問に対して、)これまでJAXAがロケットの射場として鹿児島県の種子島、そして肝付町に整備をしてきたんですね。」
「で、政府衛星と海外の衛星なども打ち上げてきて、この重要性は、これからも増々高くなるんですけども、同時に民間の、特に小型の人工衛星の打ち上げ需要がすごく高まってきていまして、これまで、そうした日本の小型の人工衛星が海外で、ほぼ打ち上げざるを得なかったんですね。」
「ですから、政府からの衛星に対する産業支援なども打ち上げの資金が海外に流れてしまっていると。」
「ですから、きちんと国内から打ち上げて、更には海外の打ち上げ需要も取り込んでいくような、そうした仕組みが大切です。」
「(今後、具体的にどういった“宇宙港”の整備が日本で必要になってくるのかという問に対して、)まず大事なのは、日本がアジアの中でハブの位置をきちんと位置付けることだと思っています。」
「ゆくゆくは空港のように、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど、それぞれの地域ごとに核となる宇宙港が出来てくるはずなので、そうした宇宙港が人工衛星を打ち上げるとともに、人が行き来をしたり、更には、例えば、宇宙港同士を1時間から2時間で結ぶ移動、輸送の手段としても使われていきます。」
「例えば、イーロン・マスクさんは、ニューヨークと上海を39分で結ぶという構想を発表されているんですね。」
「そうなった時にハブの位置付けが大切になると思います。」
「(観光の面でも大きく活性化することも考えられるかという問に対して、)そうですね。」
「人とモノの流れが変わってくるゲームチェンジが起きてきますと、やはり人が集まるということで、観光が栄えたり町が、宇宙の集積地があるということで、教育などにも、若い世代の人材育成にも非常に役立つと思っています。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組の内容を以下にまとめてみました。

(宇宙飛行士の山崎直子さんの見解)
・2010年に宇宙飛行を体験したが、宇宙という場は競争しつつも国を超えていろいろな人が協力し合って新しい可能性を広げていく場だと実感した
・昔は大型の人工衛星、1基作ろうにも数百億円という規模でスタートアップが扱える領域ではなかったが、今は小型化の技術が進んで初期投資が比較的小さくなり、色々な方が参入し易くなっている
・データも増えているので、それを使って社会にどう貢献していくかについてはアイデア、ビジョンが大切になるので若い世代の存在も欠かせない

(宇宙産業への若い世代の参入により変化が起きている町)
北海道・東部に位置する大樹町の外れにスペースコタンはロケットの打ち上げなどで使う“宇宙港”を建設した
 -北海道スペースポートのLCゼロという発射場の射点がある
 -発射場と滑走路を備えていて、民間企業などが自由に活用出来る
 -今後、発射場を更に増やしていく予定で、世界中のロケット会社から問い合わせが来ている
 -東にも南にも海が開けていることから、世界的に見ても一つの場所で両方に打ち上げることが出来る海が開けているので非常に希少である

(“宇宙港”を拠点に活動するインターステラテクノロジズ)
・これまで、この場所から18機のロケットを打ち上げている
・従業員数はここ数年で約10倍に増えている
・人口減少に悩む大樹町への若い世代の移住者が増加している
・こうした動きもあり、大樹町の人口は一昨年、23年ぶりに増加に転じた

(町をあげて宇宙産業に力を入れる大樹町)
・宇宙ビジネスのけん引力で大樹町にドラッグストアや大手スーパー、コンビニが新たに開店した
・牛のふん尿から得られるメタンガスを燃料とする新型ロケット用エンジンの燃焼実験がインターステラテクノロジズにより実施され、成功した
 -大樹町では約5000人の人口に対し、2万頭以上の牛が飼育されている
 -サンエイ牧場では、1日、さく乳牛(1頭)で60kgほどのふん尿が出ている
 -この牧場だけで1日にふん尿が80トン近くも出るという
 -ふん尿を40℃に加温して攪拌するだけでメタンガスが発生する
 -こうして回収したメタンガスを精製し、ロケットの燃料として活用する計画である
・この燃料を使った新型ロケットは来年度以降の打ち上げを目指して開発中である
・インターステラテクノロジズの金井さんは、町の方が、ロケットの会社があって良かったなと思ってもらえるように、一緒になって町づくり、地域づくりが出来るようにしたいと思っている

(進むスペースポートの整備促進)
・現在、北海道・大樹町の他にも和歌山、大分、宮古島と4ヵ所でスペースポートの準備が進んでいる

(スペースポートジャパンの代表理事を務める山崎さんの見解)
・これまでJAXAがロケットの射場として鹿児島県の種子島、そして肝付町に整備をしてきた
・政府衛星と海外の衛星なども打ち上げてきて、この重要性は、これからも増々高くなる
・同時に民間の、特に小型の人工衛星の打ち上げ需要がすごく高まってきており、これまで、そうした日本の小型の人工衛星が海外で、ほぼ打ち上げざるを得なかったので、政府からの衛星に対する産業支援なども打ち上げの資金が海外に流れてしまっている
・なので、きちんと国内から打ち上げて、更には海外の打ち上げ需要も取り込んでいくような仕組みが大切である
・まず大事なのは、日本がアジアの中でハブの位置をきちんと位置付けることである
・ゆくゆくは空港のように、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど、それぞれの地域ごとに核となる宇宙港が出来てくるはずなので、そうした宇宙港が人工衛星を打ち上げるとともに、人が行き来をしたり、宇宙港同士を1時間から2時間で結ぶ移動、輸送の手段としても使われていく
・そうなった時にハブの位置付けが大切になる
・人とモノの流れが変わってくるゲームチェンジが起きると、人が集まるので、観光が栄えたり、町が、宇宙の集積地があるということで、若い世代の人材育成にも非常に役立つ

こうして見てくると、技術の進歩により人工衛星の小型化により初期投資が少なくて済むことがスタートアップにとって、宇宙ビジネスへの参入のハードルを低くしていることをあらためて感じます。
また、宇宙関連の様々なデータの取得が新たなビジネスのアイデアにつながるのです。

なお、北海道・東部に位置する大樹町は地の利もあり、スペースコタンがロケットの打ち上げなどで使う“宇宙港”を建設し、民間企業などが自由に活用出来ることから、国内外を問わず、ロケット会社から問い合わせが来ているといいます。
そして、既にインターステラテクノロジズでは、この“宇宙港”から18機のロケットを打ち上げており、従業員数はここ数年で約10倍に増え、人口減少に悩む大樹町への若い世代の移住者が増加しているといいます。

さて、インターステラテクノロジズでは、牛のふん尿から得られるメタンガスを燃料とする新型ロケット用エンジンの燃焼実験を実施しており、この燃料を使った新型ロケットは来年度以降の打ち上げを目指して開発中だといいます。
実際に、こうして得られたメタンガスでどの程度のロケット用エンジンの燃料としてカバー出来るのか分かりませんが、エネルギーの”地産地消”の観点からはとても望ましい取り組みです。

また、現在、北海道・大樹町の他にも和歌山、大分、宮古島と4ヵ所でスペースポートの準備が進んでいるといいますが、こうした“宇宙港”の整備は、小型の人工衛星の打ち上げ需要が非常に高まってきている状況において、宇宙ビジネス拡大のカギの1つとして、とても重要です。
また、こうした“宇宙港”の建設地は、大樹町の事例でも分かるように、その地域の若い人材を中心とした人口増、経済の活性化につながります。
更に新たに観光需要も掘り起こされます。
ですから、スペースポートジャパンの代表理事を務める山崎さんも指摘されているように、こうした“宇宙港”を宇宙港同士を1時間から2時間で結ぶ移動、輸送の手段としても使われていくハブの位置付けにすることで、世界的な見地から人とモノの流れが変わってくることによりゲームチェンジを起こして欲しいと思います。

宇宙産業は間違いなく経済的にニューフロンティアです。
そして、このニューフロンティアを開拓することによって、その成果を地球上の既存のビジネスに適用することで新たな可能性も出てくるのです。
ですから、AIや半導体と同様に宇宙も新たな経済発展のカギの1つと言えるのです。

さて、今、世界各地で戦争が起きており、しかも戦争の火種は増える一方です。
こうした状況は、第三次世界大戦の勃発リスクを高めていきます。
こうした中、山崎さんは、宇宙という場は競争しつつも国を超えていろいろな人が協力し合って新しい可能性を広げていく場だと実感したとおっしゃっています。
以前にもお伝えしたように、私たちは”宇宙船地球号”の乗組員、および乗船客に例えられます。(参照:No.5730 ちょっと一休み その901 『世界で熱波・水害拡大 経済損失は2029年までに最大420兆円に!』
ですから、特に世界各国の指導者には”宇宙船地球号”の乗組員としての自覚を持っていただき、安全な船旅の運行を続けていただきたいと思います。

 
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