2024年05月28日
アイデアよもやま話 No.5906 政府主導で国産の生成AI開発プロジェクトが始動!
2月1日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で政府主導による国産の生成AI開発プロジェクトの始動について取り上げていたのでご紹介します。 

政府は生成AIの国産開発力を強化するため、基盤モデルを開発する5つの企業と大学などに対し、アメリカのグーグルと共同で支援する方針を固めたことがテレビ東京の取材で分かりました。

政府主導で国産の生成AIの開発を加速させる「GENIAC」(Generative AI Accelerator Challenge)というプロジェクトが近く始動します。
プロジェクトで採択されるのは、スタートアップ企業のプリファードエレメンツ、ストックマーク、サカナAI、チューリング、アベジャ、そして情報・システム研究機構と東京大学です。
7つの企業などは世界最高レベルの性能を持つ基盤モデルやハルシネーションと呼ばれる、もっともらしい嘘を大幅に抑制するAIなどの開発を目指します。
開発に必要なスーパーコンピューターをアメリカのグーグルが提供し、利用料の84億円分を国が補助する仕組みです。
7つの企業などは今後6ヵ月間にわたり開発を進め、国産生成AIの早期の社会実装を目指します。
こうした状況について、経産省担当の阿部欣司記者は次のようにおっしゃっています。
「官民一体のプロジェクトが相次いで動き出しています。」
「その背景にあるのは、官だけでも民だけでも戦えないと。」
「その最たる部分が経済安全保障ともからむAIの世界ですから、こうした動きは増々増えてくるんじゃないかと思います。」
「(「GENIAC」プロジェクトに採択される企業の特徴について、)日本の生成AI開発の代表格、プリファードネットワークスの子会社、プリファードエレメンツですが、ここは今回、アメリカのグーグルやオープンAIに引けを取らない超大規模な生成AIの開発を目指そうということで、世界に打って出ようとしています。」
「その逆を行くかたちで、サカナAI、業界の注目株ですよね。」
「ここは、規模を追わないで、小規模な生成AIの開発をして、それらを連携して性能を高めていこうと、独自のモデルを目指しています。」
「そしてストックマーク、最近、AIの世界では問題になっていますハルシネーション、もっともらしい嘘と訳されますが、これを抑制するモデルを開発しようとしています。」
「チューリング、自動運転のスタートアップですから、自動運転に必要なAIを自ら作ろうということで名乗りを上げています。」
「つまり、それぞれが時代に合った、そこに特化した、独自の技術を持っているということで、今回は、政府主導で支援のスキームが決まりましたが、こうした政府の動きについて、)GPUと呼ばれるAI向けの半導体、これは世界中で奪い合いになってまして、価格も高騰しています。」
「それを資金に乏しい日本のスタートアップが調達するのはかなり難しいです。」
「で、そうこうしているうちにアメリカ勢にどんどん先を越されてしまいますから、今回、経産省が自らグーグルと掛け合って政府一括調達というかたちで、このGPUを含むスーパーコンピューターを抑えたと。」
「それをこうした企業に分けて使ってもらおうというスキームなんですね。」
「で、これは官民の新しいかたちで、こうしたスキームがこれから増えてくるんじゃないかなと思います。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組を通して、また、一部は2月2日付けネット記事(こちらを参照)を参考に、「GENIAC」プロジェクトについて以下にまとめてみました。

(政府の狙い)
・GPUと呼ばれるAI向けの半導体が世界中で奪い合いになっており、価格も高騰していている
・こうした中、資金に乏しい日本のスタートアップが調達するのはかなり難しい
・そこで、経産省が自らグーグルと掛け合って政府一括調達というかたちでGPUを含むスーパーコンピューターを抑え、それをこうした企業に分けて使ってもらう

(プロジェクトの概要)
・政府は生成AIの国産開発力を強化するため、基盤モデルを開発する5つの企業と大学などに対し、アメリカのグーグルと共同で支援する方針を固めた
・政府主導で国産の生成AIの開発を加速させる「GENIAC」というプロジェクトが近く始動する
・プロジェクトで採択されるのは以下の企業などである
 -スタートアップ企業:プリファードエレメンツ、ストックマーク、サカナAI、チューリング、アベジャ
 -情報・システム研究機構
 -東京大学
・これら7つの企業などは世界最高レベルの性能を持つ基盤モデルやハルシネーションを大幅に抑制するAIなどの開発を目指す
・開発に必要なスーパーコンピューターをアメリカのグーグルが提供し、利用料の一部を国が補助する
・7つの企業などは今後6ヵ月間にわたり開発を進め、国産生成AIの早期の社会実装を目指す
・こうした状況について、阿部記者は以下のように指摘している
 -官民一体のプロジェクトが相次いで動き出している
 -その背景にあるのは、官だけでも民だけでも戦えないことにある

(参加企業などの特徴)
・プリファードエレメンツ
 -日本の生成AI開発の代表格、プリファードネットワークスの子会社で、アメリカのグーグルやオープンAIに引けを取らない超大規模な生成AIの開発を目指し、世界に打って出ようとしている
・サカナAI
 -業界の注目株である
 -規模を追わないで小規模な生成AIの開発をして、それらを連携して性能を高めていこうという独自のモデルの開発に取り組む(参照:アイデアよもやま話 No.5895 Sakana AIに世界中が熱視線!
・ストックマーク
 -最近、AIの世界で問題になっているハルシネーションを抑制するモデルの開発に取り組む
・チューリング
 -自動運転に必要なAIを自ら作ることに取り組む
・アベジャ
 -LLM(大規模言語モデル)の社会実装に向けた特化型モデルの元となる汎化的LLMに関する研究開発に取り組む
 -生成AIの導入コストを100分の1に減らす“低コスト基盤”の開発に取り組む(2月2日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)より)
・東京大学
-多様な日本語能力の向上を目指した公開型の基盤モデル開発に取り組む

今回ご紹介した、政府主導で国産の生成AIの開発を加速させる「GENIAC」プロジェクトの参加企業などは、それぞれに異なる視点から生成AI関連の開発に取り組んでいます。
しかし、資金面からゆとりがあるわけではなく、一方で、開発に必要なスーパーコンピューターに係わる資金は高額です。
そこで、経産省が自らグーグルと掛け合って政府一括調達というかたちでGPUを含むスーパーコンピューターを確保し、それをこうした企業に分けて使ってもらうという考え方は、とても理に適っています。
また、こうした企業などによる開発の成果について、必要に応じて、組み合わせての活用による効果が高くなると見込まれるのであれば、臨機応変で、協力しての製品づくりを目指すべきだと思います。

ということで、是非、「GENIAC」プロジェクトを成功させ、“アメリカの世界的IT企業に追いつき、追い越せ”で、日本経済の発展、並びに日本の経済安全保障のレベルを高めていただきたいと思います。

 
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