2023年06月05日
アイデアよもやま話 No.5599 古代ローマ時代に使用されていたコンクリートには「自己修復機能」があった!?
自己修復機能のあるコンクリートについては、以前アイデアよもやま話 No.5157 自己修復する最先端のコンクリート!でお伝えしました。
その方法は、アルカリ耐性の強いバクテリアとその餌となるポリ乳酸をコンクリートに配合しておくというものでした。
そうした中、2月17日(金)付けネット記事(こちらを参照)で既に古代ローマ時代に使用されていたコンクリートに「自己修復機能」があったことについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

・MITを中心とする研究チームが、ローマ時代のコンクリート構造が数千年に渡る耐久性を維持しているメカニズムについて解析し、コンクリート中に分散する「ライムクラスト」の存在が主要な役割を果たしていることを明らかにした。
・この知見を活用することにより、耐久性の高いコンクリート成分設計が可能になり、構造物を長寿命化させることで、温室効果ガス排出の8%を占めるセメント製造の環境負荷を軽減できると期待している。研究成果が、2023年1月6日の『Science Advances』誌に公開されている。
・コンクリート材料は圧縮強度が高く維持管理も比較的容易であり、社会インフラや建築構造の主要材料となっている。セメントと水を練り混ぜて水和反応を生じ、さまざまな骨材を結合する機能を発揮するが、水和反応に伴う自己収縮や乾燥収縮によって0.3mm以下のひび割れを生じることが多い。ひび割れが発生すると、雨水や海水の浸透により鉄筋の腐食が進行し、構造安定性を低下させるので、コンクリート構造物の寿命は一般に50〜100年と言われている。
・ところが古代ローマにおいてコンクリートで建造された巨大な道路網や水道橋、港湾、建築物は、遺構として2000年後も残存しているものがある。
・謎の解明にチャレンジした研究チームは、ローマンコンクリート中に「ライムクラスト」と呼ばれるミリメートルサイズの小さな白い石灰岩塊が遍在することに着眼した。従来は、ローマ時代の原料品位や混合プロセス管理が雑であったためと考えられていたが、現代のコンクリート材料には含まれてないことに注目し、高精度画像解析や化学成分マッピング技術を用いて詳細に解析した。
・その結果、ライムクラストの中心部は酸化カルシウム(CaO)だが、表層はいろいろな形の炭酸カルシウム(CaCO3)によって覆われるとともに、CaOが水和する際に生じる発熱反応のように、非常に高温で形成されていることが判った。そこで、ローマンコンクリートにおいてはCaリッチなCaOを直接的に用いることで、ライムクラストがモルタルマトリックス中に分散して残されると考えた。そして、小さな割れがコンクリート中に発生する場合、内部界面面積の大きいライムクラスト中を伝播し、水分と反応するとカルシウム(Ca)リッチな溶液が生成され、最終的にCaCO3として再結晶して割れ部分を充填することで、それ以上の伝播を止めるという仮説を立てた。反応は自発的に発生し、割れが拡大する前に自動的に修復すると考えたのである。
・この仮説を検証するために、古代と現代の混合成分を持ったサンプルを各々作成し、意図的に割れを導入して水を流す実験を行った。その結果、古代成分では2週間以内に割れが完全に修復され、水が流れなくなる一方、CaOを直接的に含まない現代成分は修復することなく、水はサンプル中を流れ続けるだけとなり、仮説が実証された。
・研究チームは、「得られた知見によって耐久性の高いコンクリート成分設計が可能になり、コンクリートの使用寿命を長くできる。これによって世界の温室効果ガス排出の8%を占めているセメント製造の環境負荷を軽減できるだろう」と期待している。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

なお、セメントとコンクリートの相違については添付1を参照下さい。

さて、「ローマン・コンクリート」は自己修復機能を発揮する可能性のある石灰の塊「ライムクラスト」と呼ばれるミリメートルサイズの小さな白い石灰岩塊が遍在することから数千年に渡る耐久性を維持しているというのです。
一般的なコンクリート構造物の寿命は50〜100年と言われているのですから、まさに「ローマン・コンクリート」は驚異的な耐久性能を持った優れたコンクリートと言えます。

ここで疑問に思うのは、どのようにして「ローマン・コンクリート」は発明されたかです。
発明された背景については添付2を、また発明のきっかけについては添付3を参照下さい。

今や世界的に関心が持たれている、地球温暖化の大きな要因である温室効果ガス排出の8%をセメント製造が占めているといいます。
ですから冒頭でご紹介した自己修復機能のあるコンクリート、あるいは今回ご紹介した「ローマン・コンクリート」の製法を取り入れたコンクリート使用の普及は喫緊の課題の一つと言えます。


添付1)

セメントとコンクリートの相違
ChatGPT
セメントとコンクリートは、建築やインフラストラクチャーなどの建設業界で広く使用される材料ですが、異なる意味を持つ異なる材料です。
セメントは、主に石灰石と粘土から作られる粉状の材料であり、水と反応して硬化することが特徴です。主な成分はシリカ、アルミナ、酸化カルシウム、鉄鉱石などです。セメントは、建築材料や土木工学の基礎となる構造物の製造に使用されます。
コンクリートは、セメント、砂、骨材(例:砕石)、水を組み合わせた混合物です。セメントがコンクリートの主要な結合材料であり、砂と骨材がセメントと結合して強固な構造を形成します。コンクリートは、様々な建設プロジェクトで使用され、建物の基礎、壁、床、道路、橋などの構造物を建設するために使用されます。
したがって、セメントはコンクリートの主要な構成要素であり、コンクリートはセメントを含む混合物であると言えます。コンクリートは、セメントを水と混ぜ合わせて硬化させることで作られます。セメントが硬化すると、コンクリートは強固な結晶構造を形成し、強度と耐久性を備えた構造物を作ることができます。
簡単に言えば、セメントはコンクリートの「接着剤」であり、コンクリートはセメントを含む「建築材料」として使用されるものです。

添付2)

ローマン・コンクリートはなぜ発明されたか
ChatGPT
ローマン・コンクリートは、古代ローマ時代に発明された建築材料です。ローマン・コンクリートは、石灰、火山灰、水、そして骨材(砂や砂利など)を混合して作られました。この材料は、古代ローマの建築物や公共事業の多くで使用されました。
ローマン・コンクリートの発明の背景にはいくつかの要因があります。
1. 耐久性と強度: ローマン・コンクリートは非常に耐久性があり、強度も高かったため、長期間の使用に適していました。これは、古代ローマ帝国が大規模な建築物や公共インフラを建設する必要性があったため、重要な要素でした。
2. 自給自足の需要: ローマ帝国は広大な領土を持っていましたが、自然石の供給には限りがありました。そのため、より持続可能な建築材料の需要が生まれ、ローマン・コンクリートが開発されました。必要な材料は、地域内で入手可能なもので賄うことができました。
3. 工程性と柔軟性: ローマン・コンクリートは、流動性があり、簡単に型に流し込むことができました。これにより、複雑な形状や大規模な建築物の建設にも適していました。また、材料の配合を変えることで、必要な特性を調整することも可能でした。
4. 経済性: ローマン・コンクリートの原材料は比較的入手しやすく、製造も比較的低コストで行うことができました。これにより、大規模な建築プロジェクトを経済的に実現することができました。
以上のような要因から、ローマン・コンクリートは古代ローマ帝国において重要な建築材料となりました。その耐久性と強度は、現代でもなお多くの古代ローマ建築物が残っている一因とされています。

添付3)

ローマン・コンクリートはどのように発明されたか
ChatGPT
ローマン・コンクリートの正確な発明の経緯は不明ですが、古代ローマ時代の建築技術や素材の利用に関する文献や発掘調査から、その一連の開発プロセスを推測することができます。
1. 石灰の利用: 古代ローマでは、石灰(石灰石の焼成によって得られるもの)が広く利用されていました。石灰は建築や土木工事において接着剤や充填材として使用されました。
2. 火山灰の発見: ローマ帝国の領土内には火山活動があり、火山灰(ポズゾラン)が存在しました。火山灰は石灰と混合することで、強度や耐久性を向上させる効果がありました。この火山灰の利用がローマン・コンクリートの重要な要素となりました。
3. 骨材の追加: 火山灰と石灰の混合物に、骨材として砂や砂利を加えることで、コンクリートの強度が向上しました。骨材は混合物の内部に配置され、補強効果を持ちました。
4. 実践と改良: 古代ローマの建築家や技術者たちは、実際の建設プロジェクトにおいてローマン・コンクリートを使用しながら、材料の配合や施工方法を試行錯誤しながら改良を重ねました。経験や観察を通じて、材料の特性や使い方についての知見が蓄積されたと考えられます。
これらの要素が組み合わさり、古代ローマの建築家たちは、耐久性や強度を持つローマン・コンクリートを開発しました。この新しい建築材料は、ローマ帝国の建築物や公共事業で広く利用され、その技術は時代を超えて影響を与えました。ただし、具体的な発明者や発明の瞬間については明確な証拠がないため、詳細な経緯は不明な点が残っています。

 
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