2023年05月29日
アイデアよもやま話 No.5593 人口の切り口から見たロシアの継戦能力!
2月21日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で人口の切り口から見たウクライナ侵攻におけるロシアの継戦能力について取り上げていたのでご紹介します。

プーチン大統領は2月21日の演説でウクライナ侵攻を正当化し、核実験にも言及しました。
ただ1年経ってロシアも様々な面でかなりダメージを受けているようです。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「まず人に注目しても相当まずい状況になっていると思うんですね。」
「イギリスの新聞のファイナンシャルタイムズは電子版でロシアの継戦能力、戦いを続ける能力という大特集を組んでいるんですよね。」
「(こちらを指して、)一つはロシアからどんどん人が出ているというわけですよね。」
「2022年に50万人以上の人が出国していると分析してるわけで、やっぱり兵隊に取られたくないという人が増えているということだと思います。」
「(ソ連崩壊後の社会混乱が尾を引いた影響もあって、20代ぐらいの人口が極端に少ない状況について、)一番深刻なのは戦争を戦うというのは20代の若者なんですよね。」
「ロシアの徴兵制の年齢を27歳から30歳まで上限を引き上げようとしているんですけど、肝心の20代の人口は非常に少ないということで、ただでさえ減ってる人たちが戦場に取られちゃうと国内の生産体制に更に打撃が加わるという悪循環ですよね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

なお、5月17日(水)付けネット記事(こちらを参照)でロシアの労働力不足について取り上げていたのでその一部をご紹介します。

・ロシアによるウクライナ侵攻は、ウラジーミル・プーチン大統領の長年の懸案事項である少子高齢化を加速させた。
・侵攻により西側諸国から制裁を科され悪化した経済が、さらに停滞する可能性もある。
・低出生率が何年も続き、労働力の減少に直面していたロシアにとって、ウクライナ侵攻は状況の悪化と、長期間にわたりその影響が残り得ることを意味する。
・動員により、男性数十万人が労働市場から消えた。さらに、高学歴者の多くは国外に脱出した。
・西側は、ウクライナ、ロシア両国の死傷者はそれぞれ15万人に上ると推計している。
・さらに、新型コロナウイルスによって約40万人が死亡したと公式統計ではされているが、実際の死者数はこれを大幅に上回るとみられる。
・ロシア中央銀行が先月19日に公表した統計から、「急激な」人手不足が起きており、特に加工業や輸送業、水道業などで顕著であることが明らかになった。
・高等経済学院は先月、ロシアが人口減少を回避するには、21世紀末まで、毎年39万人から110万人の移民を受け入れる必要があるとの研究結果を発表した。
・だが一部の業種では労働力を補えず、特にIT関係など高いレベルの教育を必要とする仕事では人材不足が続くという。
・人口統計学者のラクシャ氏によると、侵攻後の昨年2月から3月にかけて、男性約10万人を含む15万人がロシアを離れた。9月の部分的動員発表を受け、さらに約50万人が出国したと推定されるという。
・最近(4月14日 こちらを参照)では、動員回避者に経済的な制限を課す法律が施行された。これにより出国者の外国永住がさらに後押しされる可能性もある。
・だが、ズバレビッチ氏は出国者の60%以上がリモートでロシア企業の仕事を続けていると指摘。「一部は戻ってくる」との見方を示した。

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

また、3月14日(火)付けネット記事(こちらを参照)でロシアの徴兵制の年齢の上限引き上げについて、現行は18〜27歳だが、下限を来年から3年間で毎年1歳ずつ21歳へ引き上げると報じています。

こうした情報から、ロシアによるウクライナ侵攻をロシアの人口という切り口でロシア自体の問題を以下にまとめてみました。
・ソ連崩壊後の社会混乱が尾を引いた影響もあり、20代ぐらいの人口が極端に少ない状況である
・今回のウクライナ侵攻がプーチン大統領の長年の懸案事項である少子高齢化を加速させた
・更に2022年に50万人以上の人が出国しており、一部の業種では労働力を補えず、特にIT関係など高いレベルの教育を必要とする仕事では人材不足が続くと見られている
・そこで、動員回避者に経済的な制限を課す法律が施行されたが、これにより出国者の外国永住がさらに後押しされる可能性もある

さて、以前にもお伝えしたように、当初、プーチン大統領が短期で終わるともくろんでいた「特別軍事作戦」なるウクライナ侵攻はウクライナ軍の想定外の抵抗により未だに続いています。
こうしたプーチン大統領の誤った決断の結果、ロシアは長年の懸案事項である少子高齢化を加速させ、人材不足、あるいは出国者の増加をもたらしているのです。
そして、兵員の「招集逃れ阻止法」成立により更なる出国者の増加が見込まれます。

ということで、ロシアの人口という切り口だけで見ても、合理的な判断からすれば、ウクライナ侵攻は防ぐことが出来たはずなのです。

 
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