2023年05月19日
アイデアよもやま話 No.5585 どうする?”年収の壁”
2月9日(木)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で”年収の壁”について取り上げていたのでご紹介します。 

パートで働く主婦などのいわゆる”年収の壁”について岸田総理大臣が制度の見直す考えを表明しました。
NHK解説委員の竹田忠さんは次のようにおっしゃっています。
「配偶者に扶養されている専業主婦などの場合は、年金や医療などの社会保険料は自分では負担しなくていいんですね。」
「しかしパートなどの年収が増えていくと払わないといけない。」
「具体的には従業員101人以上の会社に勤めている場合は年収106万円以上、その他の会社でも130万円でその負担が発生すると。」
「そうすると、手取りが減って、もっと長く働かないとこの部分が“働き損”になるので、この壁を超えないように働く時間を抑えて就業調節をする人が増えてくる。」
「この問題について指摘をしている野村総研によると(こちらを参照)、この20年間でパートの時給は3割増えたと。」
「しかし、なぜか年収はほぼ横ばいのままと。」
「で、それは働く時間が減っているからだと。」
「つまり、賃上げすればするほど就業調整で(1人当たりの労働時間が減るため)人手不足が深刻になってしまうと。」
「そこで先日、国会で議論になりましたのは、この手取りが減ってる部分について、国が給付金で穴埋めしたらいいんじゃないかと。」
「そうすれば、壁を越え易くなるじゃないかと。」
「しかし、この場合、対象になるのは、扶養されている人たちですから、単身で、一人で働いてる人たちからすると、これ不公平じゃないかということなんですね。」
「(では、この壁をもっと上げて保険料を負担しなくてもいいようにするのはどうかという問いに対して、)それは国が進めようとしている改革とは真逆の方向なんです。」
「国は少しでも多くの短時間労働者が社会保険に入れるように、むしろこの壁を下げようとしているわけですね。」
「ですから今必要なのは、最近企業が相次いでパートの時給を大幅にアップして話題になっていますよね。」
「ですから保険料を払って老後の備えを厚くしながら働けるように、企業がもっと賃上げ出来るように後押しする。」
「これが重要なんです。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

ちなみに”年収の壁”にはいくつかの種類があります。(こちらを参照)

番組を通して、パートなどの”年収の壁”問題について以下のようにまとめてみました。
(現状)
・配偶者に扶養されている専業主婦などの場合は、年金や医療などの社会保険料は自分では負担しなくていい
・従業員101人以上の会社に勤めている場合は年収106万円以上、その他の会社でも130万円でその負担が発生する

(問題)
・この”年収の壁”を超えると、こうした負担による“働き損”にならないように就業調節をする人が増えてくる
・従って、賃上げすればするほど、その分就業調整で人手不足が深刻になる

(対応策案)
・”年収の壁”を超えた場合の手取りが減ってる部分について、国が給付金で穴埋めする
-しかし、この場合、単身で働いている人たちからすると、不公平感が出る
・”年収の壁”を上げて保険料を負担しないで済む
-しかし、この場合、国が進めようとしている改革とは真逆になる
-国は少しでも多くの短時間労働者が社会保険に入れるようにこの壁を下げようとしている
・パートの時給を大幅にアップする
 -しかし、この場合、特に経営の厳しい中小企業の場合、経営を圧迫する

ということで、番組で取り上げた”年収の壁”問題の対応策案はどれも“帯に短し、襷(たすき)に長し”で新たな課題が出てきます。
ですから、時給アップ、就業調整による人手不足の抑止、税収の確保、および社会保険制度の維持という4つの課題をバランスの取れたかたちで解決することが求められるのです。

 
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