2023年05月24日
アイデアよもやま話 No.5589 中国の闇 その1 “秘密警察”の実態!
人権を軽視し、世界制覇を目指している中国の闇を3回にわたってご紹介します。
1回目は“秘密警察”の実態についてです。
4月18日(火)付けネット記事(こちらを参照)で中国による「秘密警察署」の運営について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

・米当局は17日、米ニューヨーク市マンハッタンのチャイナタウンで中国の「秘密警察署」を運営していた疑いで、同市在住の男2人を逮捕した。
・2人は米当局に知らせることなく中国政府の代わりに活動することを共謀した罪のほか、司法妨害の罪に問われている。
・スペインの人権団体は昨年、中国がニューヨークなどに在外拠点を設け、中国警察と違法に連携して亡命者に中国への帰国を迫っていたとする報告書をまとめた。
・米司法省は、中国やイランなど敵対国が米在住の反体制派を脅迫するため「国境をまたぐ弾圧」を行っているとして調査を拡大している。
・検察当局によると、男2人はともに米国籍で、中国の福建省出身者向けの懇親会開催などを手掛ける非営利団体を率いている。2018年には男1人が中国から亡命者とみられる人物を説得し帰国させようとしたほか、22年には秘密警察署の開設を手伝い、中国政府からカリフォルニア州に住む民主化運動活動家とされる個人の居場所を特定するよう依頼されたという。
・また2人は米連邦捜査局(FBI)に対し、中国政府関係者との通信記録を削除したことを認めたという。秘密警察署は22年秋に閉鎖されたとしている。
・在米中国大使館の劉鵬宇報道官は「『国境をまたぐ弾圧』を口実に中国の市民を起訴することで、米国側は捏造した罪状に基づくロングアーム(管轄外への)司法権を行使している。これは全くの政治的ごまかしであり、中国のイメージを傷つけることが目的だ」と非難した。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

また4月24日(月)放送の「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日)でも同様のテーマを取り上げていたのでその一部をご紹介します。

この“秘密警察”について、中国外務省の汪文斌副報道局長は次のように弁明しています。
「海外の“警察署”はそもそも存在しない。」

海外の“警察署”についてでっちあげだとしたうえで、今回の逮捕についても断固反対するとしました。
しかし、中国の“秘密警察”について調査しているスペインのNGO団体「セーフガード・ディフェンダーズ」は少なくとも53ヵ国の102ヵ所に存在すると指摘しています。(昨年9月)
この団体は中国本土の人権侵害について、2009年から北京で調査していた団体の後継組織として2016年に設立されました。
その後、中国の人権侵害について調査していくうちに“秘密警察”の存在を知ったといいます。
この現状を世界に発信すべく、活動を続けています。
こうした情報のもとになっているのは公開されている中国政府の資料といいますが、そもそもなぜ政府は公開しているのか、その理由について、この団体のローラ・ハースさんは次のようにおっしゃっています。
「(中国国外に亡命した)人に対し、「どこにいても安全ではない」、「どこにいても中国共産党はあなたを捕まえられる」ということを知らせるため。」

常に見張られているという恐怖心を煽ることが目的だといいます。
この団体によると、日本にも“秘密警察”は2ヵ所あるといいます。
朝日新聞によると、拠点が入っていると見られる建物にはフロア違いでホテルがあるといいます。
番組でそのホテルに連絡してみると、呼び出し音は鳴るものの、誰も電話に出ることはありませんでした。
“秘密警察”の実態について、番組では中国の“秘密警察”から取り締まりを受けているという王靖渝さん(21歳)に話を聞きました。
王さんは、中国国内で政府を批判する活動をしていましたが、身の危険を感じ、昨年6月、オランダに亡命、その後“秘密警察”から中国に戻るように何度も連絡がありましたが、現在もオランダに留まっています。
要請に応じない王さんに対し、“秘密警察”が取った行動について、王さんは次のようにおっしゃっています。
「私の名前を使ってホテルに予約を入れ、そのホテルに爆発物を送っています。」
「爆破予告を私の名前で送ることでオランダの警察が私をテロリストとして逮捕し、中国へ強制送還することを期待しているのです。」

しかし、オランダ当局は王さんの状況を把握しているため、逮捕には至らないと判断しているといいます。

世界各国にあるという中国の“秘密警察”は、表向きは分かりにくいように私たちの非常に身近な場所に存在しているといいます。
そして、日本の拠点の2ヵ所のうち1ヵ所は都内の5階建てビルで、1〜4階までがホテルで、5階が福建省・福州市の名がつく社団法人だということです。(4月19日付け朝日新聞より)
朝日新聞の取材に対して、この法人の代表理事は、「警察業務なんてやっていない、捏造だ」と否定したといいます。

さて、今回の逮捕について、ロイター通信によりますと、4月18日、中国外務省の汪文斌副報道局長は「中国は他国への不干渉政策を維持しており、このような警察署は存在しない」と弁明しています。

また、「セーフガード・ディフェンダーズ」によると、“秘密警察”が帰国させた中国人は23万人といいます。(2021年4月〜2022年7月)
こうした状況について、東京大学の阿古智子教授は次のようにおっしゃっています。
「(どのように監視して、どのように脅迫しているのかについて、)私が知っている日本での事例ですと、インターネットサイトに中国の高官の情報などを暴露するような、そういったサイトを運営している人が脅迫をされて、尾行されたりとか、脅しのメールを受け取ったりして、カナダにその後亡命されたというケースもありますし、もっと身近なところでしたら、大学の学生たち、中国人の留学生ですけども、中国で拘束されているジャーナリストを釈放して欲しいとかいうことで、女性の日とか3月8日にありますけど、そういった時に日本の人たちとデモ行進をやって、中国のプラカードを挙げている時にずっと斜めから見られていると思っていたら、終わった時に腕をつかまれて「どうしてこんなことをするんだ」と言われたとか、そういう事例とかもありますね。」
「(今回、アメリカが逮捕に踏み切れた要因について、)まず日本には日本の司法の制度があって、言論の自由を認められているにもかかわらず、そういった普通の学生たちが普通の行動をしていて脅されたりだとか、あるいは帰国を促されたりだとか、本当の意味で酷い脅迫を受けたりして、そして情報収集をして、そこから本国に送ったりしているかもしれないんですね。」
「ですから、日本の主権、アメリカもそうですけども、それぞれの国にある法律に違反するかたちで中国のそういった組織が活動しているということで摘発をしたんだと思います。」
「(阿古先生の周辺でもそういった学生さんが拘束されたということはあったのかという問いに対して、)私の身近なところで起こってビックリしたんですけども、香港の学生なんですけども、お付き合いしているガールフレンドの香港出身の学生さん、その子は2019年から2021年にソーシャルメディアで香港に関して自分の思い、考えを書いてらした。」
「その中には香港の独立が必要なんだということもあったらしいんですけども、香港のデモ活動に参加したこともない、ずっと日本におられて、日本で言論の活動をしていたというだけなんですけども、今回、3月に香港に身分証の更新をするために帰国した時に逮捕されてしまったと。」
「それもやはり日本では認められていることなのに、そこで日本で行われた行為に対して域外適用(こちらを参照)されたということで、非常に日本で言論が委縮してしまう効果を生んでいるんではないかと思っています。」
「(中国の法律が域外で適用されてしまったことについて、)香港の法律ですけど、国家安全維持法で、今、主権は香港も中国にもとに戻っていますから、中国が大きく係わっているのは間違いないと思います。」
「(中国の“秘密警察”はいつ頃からあったかについて、)ずっとこういった諜報活動はあって、どこの国でもやっていることではありますけども、中国の場合、やはりここ最近の習近平政権がインターネット上の様々な言論活動に対して非常に警戒していると。」
「国境を越えて、いろんなところで行われていると言われますので、中国だけで取り締まりをやっていても効果が薄いんですよね。」
「ですので、海外でそういった中国に影響を与える、政権が不安定になるような言論活動に対してダメージを与えたいっていう目的があるんだと思います。」
「今、コロナの後、日本もですけど、中国も経済的に不安定で、独裁政権は支持されて、選挙で選ばれた政権ではないので、余計に不安があって、それで圧力をかけて、何とか負の側面を抑えていこうとするわけですよね。」
「悪循環になってしまうと思うんですけども、そこで私たちが中国とどう向き合うか、本当に難しいとこはありますけども、やはり中国の人たちもこうした統制は良いと思ってないでしょうし、社会にとっても本当に良くないですので、オープンにちゃんと対話すべきだなと思っています。」
「(この香港の女子学生に対する日本政府の対処について、)邦人保護とか、日本人に対する対応とかはかなり力を入れるんですけども、外国籍の方ということもあって香港の領事館などもほとんど対応していないようです。」
「だた、こういった外国人に対する圧力も日本人に結局は影響してくるわけです。」
「日本全体の雰囲気が委縮してしまって、日本の国内で生活している人、暮らしている人、あと勉強したりとか、働いている人が安心して日本におられないということは、ひいては私たちの生活にも影響してくるわけですから、外国籍の人にとってもしっかりと保護をすべきじゃないかなと私は思います。」

また、こうした状況について、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は次のようにおっしゃっています。
「中国はもともと言論統制、情報工作を国内でやってきたわけですけども、その言論統制と情報工作が国内から海外へとシフトしてきたと言えますよね。」
「そういう意味で、最も懸念されるのは言論統制と情報工作がそれぞれの国の現地人、日本でいえば、日本人に対して行われないかどうかってところが非常に懸念されるところですので、残念ながら我々日本から国内の言論統制、情報工作は如何ともしがたいですけども、日本に対して攻めてこられるような言論統制と情報工作は絶対に止めなければいけないと思いますね。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

これら2つの内容を通して、中国の“秘密警察”の実態について以下にまとめてみました。
・米当局は4月17日、米ニューヨーク市マンハッタンのチャイナタウンで中国の「秘密警察署」を運営していた疑いで、同市在住の男2人を逮捕した。
・中国の“秘密警察”について調査しているスペインのNGO団体「セーフガード・ディフェンダーズ」は少なくとも53ヵ国の102ヵ所に存在すると指摘しており(昨年9月)、日本にも2ヵ所あるという。
・世界各国にあるという中国の“秘密警察”は、表向きは分かりにくいように私たちの非常に身近な場所に存在しているという。
・この人権団体は昨年、中国がニューヨークなどに在外拠点を設け、中国警察と違法に連携して亡命者に中国への帰国を迫っていたとする報告書をまとめた。
・なお、この人権団体では、こうした中国の情報のもとになっている、公開されている中国政府の資料は中国国外に亡命した人に対し、「どこにいても安全ではない」、「どこにいても中国共産党はあなたを捕まえられる」ということを知らせるためで、常に見張られているという恐怖心を煽ることが目的だという。
・今回の逮捕について、在米中国大使館の劉鵬宇報道官は「『国境をまたぐ弾圧』を口実に中国の市民を起訴することで、米国側は捏造した罪状に基づくロングアーム(管轄外への)司法権を行使している。これは全くの政治的ごまかしであり、中国のイメージを傷つけることが目的だ」と非難した。
・また“秘密警察”について、中国外務省の汪文斌副報道局長も「海外の“警察署”はそもそも存在しない」と発言し、海外の“警察署”についてでっちあげだとしたうえで、今回の逮捕についても断固反対するとした。
・“秘密警察”の実態について、中国の“秘密警察”から取り締まりを受けている王靖渝さん(21歳)は中国国内で政府を批判する活動をしていたが、身の危険を感じ、昨年6月、オランダに亡命、その後“秘密警察”から中国に戻るように何度も連絡があったが、王さんは要請に応じなかった。そこで“秘密警察”は王さんの名前を使ってホテルに予約を入れ、爆破予告を王さんの名前で送ることでオランダの警察が王さんをテロリストとして逮捕し、中国へ強制送還することを期待していた。しかし、オランダ当局は王さんの状況を把握しているため、逮捕には至らないと判断した。
・「セーフガード・ディフェンダーズ」によると、“秘密警察”が帰国させた中国人は23万人という。(2021年4月〜2022年7月)
・“秘密警察”には、国境を越えて、いろんなところで反政府的な行動や発言が行われているので、中国だけで取り締まりをやっていても効果が薄く、海外で中国に影響を与える、政権が不安定になるような言論活動に対してダメージを与えたいという目的がある。
・今、コロナの後、中国も経済的に不安定で、独裁政権は支持されて、選挙で選ばれた政権ではないので、余計に不安があり、それで圧力をかけて、何とか負の側面を抑えこもうとしている。
・こうした状況について、東京大学の阿古智子教授は以下のように指摘している。
 -今回のアメリカでの“秘密警察”の摘発の根拠は、それぞれの国にある法律に違反するかたちで中国の“秘密警察”が活動していたことである
 -こうした“秘密警察”の活動は中国の国外で域外適用されたということで、日本での言論が非常に委縮してしまう効果を生んでいる
 -香港の女子学生のケースにおける日本政府の対処について、外国籍の方ということもあって香港の領事館などもほとんど対応していないようである
 -しかし、こういった外国人に対する圧力は日本人に影響し、日本全体の雰囲気が委縮してしまうので、外国籍の人もしっかりと保護をすべきである
・また、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は以下のように指摘している。
 -中国はもともと言論統制、情報工作を国内でやってきたが、これらが国内から海外へとシフトしてきたと言える
 -最も懸念されるのは言論統制と情報工作がそれぞれの国の現地人、日本でいえば、日本人に対して行われないかが非常に懸念される
 -こうした中国政府による日本国内での言論統制や情報工作は絶対に止めなければいけない

以上ですが、中国における一党独裁政権である中国共産党は以前にもお伝えしたように、“まず中国共産党ありき”で、憲法よりも中国共産党の方が上位に位置しているのです。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.690 『中国式“法治”の脅威!』
しかし、この政権は国民の総意に基づいて選ばれていないので政権を維持し続けるためにはどうしても反対の勢力、あるいは個人を徹底的に排除することが必要なのです。
“秘密警察”はそのための機関というわけです。
そして、この“秘密警察”は、憲法下の法律といえども中国共産党の意向次第でいかようにも解釈されるので、このことを盾に反政府的な中国国民の身柄を拘束出来るのです。
ですから、王靖渝さんのように習近平政権に批判的な人たちは国外に脱出しても、国外でも習近平政権に批判的な言動をさせないように“秘密警察”が監視しており、出来れば中国に強制的に帰国させ、行動の自由を制限させたいわけです。

ここで注目すべきは、こうした中国の“秘密警察”による国外の中国人に対する人権無視の行為はそれぞれの国にある法律に違反するということです。
これまでもお伝えしてきたように、そもそも習近平政権は人権などに関する他国からの様々な指摘に対して、全て“内政干渉”で片づけてきました。
ということは、明らかにこうした習近平政権の言動は矛盾しているわけです。
まさに自国に徹底的に甘く、他国には厳しいのが、“まず中国共産党ありき”の絶対的な存在と自らを規定している習近平政権の特徴なのです。
ですから、この矛盾を盾にとって、日本も含めた53ヵ国の国々は徹底的にこの“秘密警察”を取り締まるべきであり、同時に中国の反政府的な活動をしている方々への様々な支援活動をすべきなのです。
こうした支援活動の積み重ねがやがて中国の反政府的な活動の輪を広げ、やがて独裁政権の崩壊をもたらす流れを大きく出来るのです。
ところが、阿古教授は、日本政府の対応はこうした支援に消極的だと指摘されています。
しかし、こうした“秘密警察”の行動に対する消極的な日本政府の姿勢は習近平政権の横暴を見過ごすことになり、田中教授が指摘されているように、“秘密警察”による言論統制や情報工作が日本人に対して行われる懸念が高まってくるのです。
ですから、日本国内での言論統制や情報工作は絶対に抑えることが必要なのです。
ということで、日本政府は中国共産党の本質をしっかり把握し、習近平政権に向き合うべきなのです。

さて、こうして見てくると、あらためて思うのは、現在の国際社会は法治社会として十分には機能していないという現実です。
“法による支配”が機能しない国際社会では軍事面や経済面で影響力のある国の言い分がまかり通ってしまいます。
例えば、平和国家日本は、万一、北朝鮮が軍事力にものを言わせて、日本に理不尽な要求を突き付けてきた場合、日本単独での対応には限界があります。
そこで、繰り返しになりますが、まず、日本も含めた53ヵ国の国々は徹底的にこの“秘密警察”を取り締り、一方でこの被害者支援にしっかりと取り組むべきなのです。
そして、この被害者支援により、こうした被害者の輪が世界的に広がり、やがて中国共産党も無視出来ないほどの勢力が中国国内に生まれるのです。
また、こうした中国共産党の横暴を人権尊重の観点から各国が結束して糾弾することが中国共産党の横暴をくい止め、自由と人権が尊重される国際社会の実現に向けた“一歩前進”であり、やがて“法の支配による国際社会”の実現につながると期待出来るのです。

 
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