2023年05月13日
プロジェクト管理と日常生活 No.817 『防衛産業の課題から見えてくること』
昨年12月16日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で防衛産業の課題について取り上げていたのでご紹介します。

今回の税制大綱では防衛費の増額を巡って紛糾しましたけれども、防衛産業の課題が見えてきました。
解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「一言で言えば、今は将来が見えないということで、基本の防衛産業、戦闘機関連だけで1100社、戦車関連で1300社、護衛艦関連で8300社、これだけの企業が係わっているわけですね。」
「しかしながら1社当たりの防衛関連の売上高は平均して会社全体の売上の4%、大手企業でも10%に留まってるんですね。」
「(軍事力をタブー視する見方が強くて、防衛メインの企業が育ちにくいというのがあったのではという指摘に対して、)そうです。」
「実際、近年も横浜ゴム(航空機用タイヤ)や小松製作所(軽装甲自動車)、住友重機械工業(次期機関銃)など、一部の企業が撤退しているわけです。」
「で、日本以外、海外へ輸出も出来ないから、売り上げが増えない。」
「例えば、戦闘機や護衛艦は認められていません。」
「で、このため政府は「可及的速やかに見直せるよう検討」っていうふうに安保文書に書いてたんですが、与党内の調整で、この「速やかに」というのが消えたんですね。」
「(先ほど、VTRでも民間に出来ることには限界があると話していましたが、今後どのように進めていくべきかについて、)岸田総理は、今日(昨年12月16日)、(防衛装備移転)3原則(こちらを参照)見直しの分野として、インド・太平洋の安定、あるいはウクライナ侵攻を例にあげてたんですけど、国も民間の装備品輸出を支援する体制、整備のインフラみたいなものをつくる必要があると思いますね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

そもそも戦争を放棄し、平和主義を基本とした平和憲法を有する日本は他国に侵略することは憲法上、認められません。
ですから、日本の防衛の課題は、他国からの侵略行為を巡るリスク対応策の策定ということになります。
そして、そのリスク対応策は、大きく以下の2つです。
・他国からの侵略リスクの対応策
 -アメリカをはじめとする他国との軍事協定の締結
 -国連など国際社会における平和維持の重要性の積極的な働きかけ
・他国からの侵略行為を受けた場合のコンティンジェンシープラン
 -基本的には自国の軍事力をベースにアメリカをはじめとする軍事協定を締結した国々の支援を受けつつ敵国に対峙すること

こうした枠組みの中で、番組で取り上げていたのは、防衛産業に関する以下の課題です。
・平時に確保しておく兵器の種類
・その中で、自前で兵器を生産するか、輸入するかの識別
・個々の兵器への予算確保
・国内の防衛関連企業の経営維持のための支援

ここでとても重要な大前提があります。
それは番組では触れていませんでしたが、具体的に中国など仮想敵国が侵略してきた場合にアメリカ軍などとの共同戦線が具体的にどのような分担で行われるかということです。
この大前提を明確にしないで、防衛政策の検討を進めても、原田さんも冒頭で指摘されているように、将来が見えないので適切な防衛装備は出来ないのです。

一方、防衛関連企業も将来的な展望が見えず、しかも武器の輸出が禁じられている状況で経営が成り立つ状態で本格的に兵器の生産に取り組み続けることは困難です。
従って、日本政府が必要とする兵器の需要を満たすレベルにまで防衛関連企業が育ち、継続することはほとんど期待出来ません。
実際に横浜ゴムなど、一部の企業は撤退しているのです。

そこで、一つ提案があります。
それは、まず、途上国を中心に日本と同様の平和憲法に憲法改正することを働きかけることです。
その次に、こうして憲法改正した国には例外的に日本で生産した兵器の輸出を認めるという方針を打ち出すのです。
こうした国の方針を打ち出すことにより、他国に侵略しようとする国が減り、一方でこうした国々に日本で生産された兵器を輸出することにより、こうした国々の防衛力を高め、同時に日本国内の防衛産業の継続を支援することが出来るようになるわけです。

なお、実はこうした課題の解決には大きな矛盾があります。
それは、仮にアメリカが中国や北朝鮮と戦闘状態になった場合、平和憲法を有する日本も大なり小なりアメリカ側として戦闘状態に巻き込まれることです。
ですから、矛盾解消のために、アメリカに限らずどこの国と軍事協定を締結する際には、締結する国が他国からの侵略を受けた場合のみ、日本も参戦するという条件を付けることが求められるのです。

いずれにしても、日本という国家をいかなる場合にも存続させるためには、平和憲法の名のもとに一切の兵器の保持の禁止、あるいは自衛隊は違憲であるといったような“きれいごと”は通用しないのです。
それは、今回のロシアによるウクライナ侵攻でも明らかです。
もし、仮にウクライナが徹底抗戦の意志をかためてロシアに対峙しなければ、更にどこの国からも軍事的な支援が受けられなければ、短期間でウクライナはロシアに占領されていたはずです。
そして、ロシアは更に他の近隣諸国に対しても侵攻していた可能性があるのです。
ですから、日本もウクライナと同様に、万一、他国から侵攻されるような事態になった時に、国民が一致団結して対手国に対峙するという意思をかためることが何よりも重要なのです。
中国やロシアのような覇権主義国家が存続している現状では、否応なくこうした意志、あるいは覚悟が日本国民にも求めれるのです。

 
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