2023年05月03日
アイデアよもやま話 No.5571 テスラの強さの秘密と今後の不透明感!
1月26日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でテスラの強さの秘密と今後の不透明感について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

トヨタがEV(電気自動車)に力を入れる中、その先頭を走るのがイーロン・マスク率いるテスラです。
テスラは昨年の決算を発表し、過去最高益を更新しました。
テスラが発表した決算
 10―12月  36億8700万ドル(59%増)
  1―12月 125億5600万ドル(2.3倍増)

好調に見える業績ですけども、今後も成長を続けることが出来るのか、不透明感が高まっています。
背景にあるのは、テスラが行ってきた値上げです。
平均単価は2年前と比べ約1000万ドル(約12万円)上昇しています。

ところが、テスラの今後を巡っては不安な空気もあります。
実は、テスラは販売のテコ入れのため、年明けから値下げに転換、「モデルY」は20%も値下げしました。(アメリカの場合)
イーロン・マスクCEOは次のようにおっしゃっています。
「現在、生産の2倍のペースで受注が入っている。」

決算の発表会見では手応えを口にしたマスク氏、ただ専門家からは不透明感が高まっているとの指摘もあります。
ブルームバーグ・インテリジェンスのケビン・タイナンさんは次のようにおっしゃっています。
「2023年には需要の落ち込みは更に深刻になると思う。」

世界的に高まる景気減速の懸念で需要は減るうえ、今年からの値下げで利益が目減りする見通しだといいます。
そして、懸念は他にもあります。
テスラ車に乗って2年になるという会社経営者の男性(46歳)は乗り換えを検討するかも知れないと次のようにおっしゃっています。
「一歩先を行ったのがテスラ車なだけであって、技術力は多分日本のメーカーの方が高いと僕は思っているので、どんどん追いつき追い越せで新しい車種が出てきたら、そっちに乗り換えるかも知れないです。」

自動車メーカーがEVに力を入れ始め、テスラのライバルが増加、競争は増々激化しています。
1月26日、スズキも新たなEV戦略、すなわち世界の主要拠点である日本・ヨーロッパ・インドにおけるEVの投入計画を明らかにしました。
1月11日には、インドを皮切りに世界で展開するEVのコンセプトモデル「eVX」を発表、EVに力を入れる方針を明確にしました。
EVでは後発組のスズキが本格参入するということで、日本のほとんどの自動車メーカーがEVを手掛けることになりました。
中国ではEVメーカー、BYDが販売を拡大しています。
圧倒的な勝者であったテスラを追いかける動きが加速しているのです。
こうした中、専門家はテスラの経営トップのマスク氏の言動などが今後の業績に影響を与える可能性があると指摘します。
ケビン氏は次のようにおっしゃっています。
「マスク氏を好む消費者がいる一方で、そうではなくテスラを買わない人もいる。」
「消費者の声は増々強くなっている。」

こうした状況について、BNPパリバ証券の中空麻奈さんは次のようにおっしゃっています。
「(自動車市場は大きな変革期で、その大きな軸はEVですが、主戦場はEVかという問いに対して、)完全にそうかと言われると、まだ迷いがありますね。」
「例えば、水素もそうだし、アンモニアもそうだし、それからまだハイブリッドをつくるという動きもあります。」
「なので絶対そうなのかと言われると、まだ苦しいところがあるんですけど、電気自動車は主戦場になってきているとは思います。」
「(EVに関しては、海外が先行しており、特にテスラの決算は最高益で、順調に収益を伸ばしているのですが、その強さの秘密について、)本当によく売れててすごい強いんですけど、今までテスラ車ってあんまり走ってない時からも利益が出てたと思うんですね。」
「その背景にあったのがここに書いてある「温暖化ガス排出枠」というものなんです。」
「それを売買出来るということで、テスラ社が排出枠を売っていたということですね。」
「それで利益が出ていた。」
「これはなぜかといいますと、欧州って排出権を取引するんですが、電気自動車だとクルマとして動き始めるとCO2を出しませんので、一切排出枠を使わないんですね。」
「他の会社は使う。」
「だからやり取りが生まれたということです。」
「(そこを売却することで利益が出ていたということですが、その先行きについて、)いくつか問題がありまして、他の電気自動車、日本も「参入するよ」って出てましたけれど、みんなが参入すると電気自動車をつくっていたメリットが無くなりますよね。」
「それは1つ、2つ目は、今、排出枠の考え方が変わってきていまして、電気自動車が走る時だけじゃなくて生産から全てを足して、CO2を出した分はチャージしようという話になってきているので、ちょっと変わって来ちゃうんじゃないかなと思います。」
「(そうすると利益をしっかり出せるかどうか、本業のところが重要になってくるという指摘に対して、)おっしゃる通りですね。」
「本当にクルマが売れるのか、電気自動車のシェアは取り続けることが出来るのか。」
「今、テスラは価格を上げたり下げたり、割と自由にそれを付けられますよね。」
「そこがポイントで、ずっとこれが出来るなら、安定的な純利益は確保出来るかなと思うんですが、いろんな問題点が出てきているので要注意というところになります。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組を通してテスラの強さの秘密と今後の不透明感について以下にまとめてみました。
(強さの秘密)
・世界に先駆けて、魅力的なEVづくりを進めてきた
・EVの“CO2排出量ゼロ”を武器に、ほとんど売り上げのない時にもCO2排出権取引を使って利益を上げること出来、その利益をEVの開発・製造の資金に回すことが出来た
・圧倒的なEVのシェアを利用して、EVの価格コントロールにより、利益の安定的な確保を可能にしてきた

(今後の不透明感)
・日本や中国、ヨーロッパの自動車メーカーもEV参入を始め、競争優位状態が弱まりつつある
・特に中国のBYDはテスラを脅かすほど売り上げを伸ばしている
・こうした状況により、価格コントロールがしにくくなりつつある
・燃料電池車やハイブリッド車の今後の行方次第でEVの売り上げ鈍化の懸念がある
・CO2排出枠が生産から廃棄までのライフサイクルに変わることにより、これまでのテスラのメリットが少なくなる

なお、テスラは先進的な生産拠点「ギガテキサス」での操業、更には「完全リサイクルEV工場」を目指しているといいます。(こちらを参照)
ですから、テスラは価格競争力のあるEV生産、および“ゼロエミッション”を目指しており、今後ともEV業界でリーダーシップを握り続ける存在である可能性を秘めているのです。
しかも、マスク氏が率いるスペースXでは火星移住計画を進めています。(こちらを参照)
ですから、この計画の成果が更に先進的な生産拠点の建設に生かされると見込まれます。

一方、EVへの取り組みで出遅れていたトヨタも、取り組んでいるウーブン・シティの実証実験(参照:アイデアよもやま話 No.4917 トヨタ自動車がウーブン・シティの建設に着手!)はクルマの生産から廃棄までのライフサイクルでCO2排出量を評価するような状況において、トヨタの競争力を際立たせることになると見込まれます。

ということで、将来的には月や火星など、他の惑星での暮らし、あるいはEVとリンクした街づくりといったような構想が思い描けそうです。

 
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