1月18日(水)放送の「クローズアップ現代」(テレビ東京)で「2023年宇宙の旅 〜月で暮らす!? 水をめぐる争奪戦〜」をテーマに取り上げていました。(こちらを参照)
そこで、内容の一部は、以前お伝えしたアイデアよもやま話 No.5455 有人宇宙飛行(月面着陸)を目指す「アルテミス計画」の意味するもの!と重複しますが、2回にわたって番組の内容を以下にまとめたかたちでご紹介します。
2回目は月面開発を巡り、求められる国際協調についてです。
(なぜ月を目指すのか)
宇宙飛行士で内閣府宇宙政策委員会 臨時委員でもある山崎直子さんの考え:
・地球上にはさまざまな課題、環境問題、食糧問題があるが、それを地球上だけで解決するのではなく、宇宙の資源を使いながら解決出来る可能性を広げたい。
・火星など遠くに行くためには月を中継地点にしておくことが大事である。
・月で野菜を育てたいし、それを地産地消で食べたい。
・将来は月に寺子屋のような学校が出来て、世界中の留学生が集まって共に学べる場が作れたらいい。
・月開発における日本の技術について、小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」に見られるように、他の天体にピンポイントで着陸する技術は世界的にも注目されている。
・国際宇宙ステーションでも、「こうのとり」のような物資補給船がきちんと国際宇宙ステーションまで近づいていく「ランデブー技術」はアメリカにももう輸出をしている。
・小型化、軽量化の技術が日本にとって大きな強みである。
(月を巡る争奪戦 ‐ 米中の覇権争い)
・月は限りない可能性を秘めており、中国、アメリカ、この2つの国が地球上と同じく月でも覇権を争っている。
アメリカ ペンス副大統領(当時)の発言:
「宇宙開発競争の真っただ中だ。21世紀、月に宇宙飛行士を送る最初の国になる。」
・アメリカは、人類を再び月に送る「アルテミス計画」で世界をリードするため、国際連携を強固にしたいと考えている。
・1月14日、日米協力を迅速に進める新たな宇宙協定に署名したブリンケン国務長官の発言:
「日米は想像を超えた発見をするだろう。月の南極などに探査機を送る計画だ。」
・アメリカが競争相手として強く意識しているのが中国である。
中国 習近平国家主席の発言:
「『宇宙強国』に向け、全力をあげる。」
・中国は、アポロ計画以来、世界のどの国も成し遂げていない月面への探査機の着陸を、この10年ですでに3度成功。2020年には月の土壌を地球に持ち帰ったと発表した。
・アメリカとの宇宙開発競争は今後も激しくなると見られている。
山崎さんの発言:
「今、月面開発はアメリカを中心とするアルテミス計画と、中国、ロシアとの協力体制に分かれてしまっているのが事実です。」
「月に水があるとはいえ、まとまったかたちで利用しやすいかたちであると言われているのが南極など一部の地域です。ですから、そこに早い者勝ちで行った国が占有出来てしまうというリスクがあります。」
(月を巡る争奪戦 - 宇宙条約)
・月や宇宙での争い事を避けるため、以下のような内容の国際ルール「宇宙条約」(1967年発効)がある。
国家による天体の領有の禁止
科学探査の自由
軍事利用の禁止
国際協力のため最大限の情報提供
・しかし、この中には今、注目されている水などの資源の扱いについては入っていない
山崎さんの発言:
「宇宙条約が発効したのは1967年、50年以上前ですから民間の企業が月探査をして資源発掘をするなんて想像も出来なかった時代です。今どうしているかといいますと、アメリカ、ルクセンブルク、アラブ首長国連邦、日本が「国内法」というかたちで、採掘をした民間企業が宇宙資源を使えるようにという許可を出している状態です。」
「宇宙条約の時みたいに多くの国が一つの合意に至るというのが今、非常に難しい状態になっています。とはいえ、やはり平和利用に向けて対話を欠かさないという点が大事です。」
「(もし、例えばどこかの国なり企業が占有してしまった場合、2040年に月面都市を作ろうと掲げたとしても、みんなが平等に利用するということも出来なくなってしまうという指摘に対して、)そうですね。例えば数年前、中国が地球の周りを回る人工衛星を自国の衛星が意図的に破壊をするという実験をして、宇宙ごみをたくさん増やしてしまったことがあります。やはり一国の利益だけで動くと他に大きな損害を与えることもありますので、平和利用に向けて対話が欠かせないと思います。」
・対話をして国際協調、みんなで協力をするということが理想だが、実際は今、国と国の威信をかけた勢力争いになってしまっている。
(地球のために国際協調)
山崎さんの発言:
「(地球の持続可能性について、)宇宙開発はもともと、その成果を地球に還元をするということが大きな目的です。今、地球上の課題としていろいろなイノベーションが求められる時代だからこそ、その解決策の幅を広げるために宇宙も活用しながら解決を図るということはますます大切だと思います。」
「(月には広大な土地があり、そこで研究開発するメリットについて、)国際宇宙ステーションですと10名前後の定員なのですが、これだけ広い土地があるということは、まさに1,000人規模の村が作れるということも大きな利点だと思います。」
「(地球では大きな権力によってなかなかうまく事が運ばなくても、国際宇宙ステーションではアメリカとロシアの宇宙飛行士が一緒に協調していることについて、)歴史を振り返ってみますと、ベトナム戦争の最中にアメリカと旧ソ連が宇宙協力をするという署名をし、そのあと実現させているわけです。ですから、地上のいろいろな関係はありつつも、宇宙という人類共通の目的、フロンティアに向かって対話を絶やさない。そして、協力の糸口を見つけていくということは大切だと思います。逆に宇宙開発だけではないと思います。文化も含めて、いろいろな軸を複数持つということは大切なような気がします。」
「(その中で日本に出来る役割について、)国際宇宙ステーションでアジア唯一の参加国であり、アルテミス計画でもアジアで主要な位置を占めているということで、日本が国際協力を大切にし、そして秩序を大切にしているということを示すことが大きな役割を持っていると思います。」
「(私たちがもう少し現実的に月で暮らすとか、月に行くのを感じられる時期について、)宅配便の話もありましたが、経済的な宅配便の輸送の手段がいかに出来るかということにも関わるのですが、2040年ぐらいにはそうした世の中が出来てきていると。」
「(その時に、まず何をしたいかについて、)やはり月に小さな寺子屋を作りたいですね。」
以上、番組の内容の一部をまとめてみました。
そもそも、なぜ月を目指すのかですが、山崎さんも指摘されているように、その狙いは大きく次の2つであるべきです。
・地球上のさまざまな課題や問題を地球上だけで解決するのではなく、宇宙の資源を使うことにより解決出来る可能性を広げること
・月を火星など他の惑星に行くための中継地点にすること
なお、現在、世界各国は地球全体を“持続可能な社会”にすべく、取り組んでいます。
そうした中、資源の乏しい月での暮らしが常態化出来るようになれば、その技術を地球上での暮らしに適用することによって、地球も“持続可能な社会”として実現出来るようになるというわけです。
そうした意味で、月面都市「ムーンバレー2040」構想の実現はとても大きな意味を持っているのです。
さて、月面開発を巡り、地球上と同様に米中の覇権争いが始まっています。
そうした中、ルールのない中で覇権争いが続けば、いろいろな場面で争いが生じてしまいます。
そこで、地球上と同様に、世界各国を含めて月面開発を巡り、こうした争いを阻止すべく、 実効性のある宇宙条約が求められるというわけです。
なお、現在の「宇宙条約」には水の扱いが入っていないという状況ですから、水以外も含めて早急な見直しが必要となります。
いずれにしても、世界各国が月面開発を巡り、切磋琢磨し、一方で国際協調を深め、新たな国際関係を築けることを期待したいと思います。
そして、1日でも早く、月で“持続可能な社会”を実現させ、その技術を地球の暮らしに適用させることにより、地球においても“持続可能な社会”を実現出来ることを願います。
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