2023年02月11日
プロジェクト管理と日常生活 No.804 『 オフィスビルの“2023年問題”!
昨年9月15日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でオフィスビルの“2023年問題”について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

コロナ禍でテレワークが進む中、東京都内の一等地でもオフィスの空室が増えてきています。
ところが今、大規模なオフィスビル開発が相次ぎ、完成はいずれも来年(2023年)です。
“2023年問題”とも言われ、オフィスビルの増え過ぎが懸念されています。
そうした中、三井不動産は今日、東京・八重洲のJR東京駅前に来年開業するオフィスビルを公開しました。
いったい、どう差別化を図ろうとしているのでしょうか。

来年3月に全面開業する東京ミッドタウン八重洲、地上45階、地下4階のビルの中には飲食店街の他、日本各地に行く高速バス乗り場、都内最大級のターミナルが入っています。
そしてオフィスエリアでは最新の設備が公開されました。
三井不動産の山口周平さんは次のようにおっしゃっています。
「(床に置かれている3台のロボットについて、)こちらはオフィスワーカーさん向けのデリバリーロボットになります。」

通常、大規模オフィスではフードデリバリーを頼むと、ロビーまで取りに行かなければなりませんが、このロボットが注文した人まで運んでくれます。
また管内にある扉は顔認証で開き、エレベーターのボタンはフォログラムで非接触となっています。
また一般的なオフィスにはない設備として、テナントさん専用のフィットネススペースがあり、山口さんは次のようにおっしゃっています。
「都心のど真ん中の24階の高層ビルの中でこういったスペースがあるのはすごい貴重だと思っています。」

その他にも入居企業が自由に使えるラウンジも設ける予定です。
実際に同じような施設があるオフィスビル(東京・中央区)を訪ねると、オフィスワーカーがお昼の休憩時間にジムを利用していました。
ジムの利用者は次のようにおっしゃっています。
「今、昼に来ていますけど、午後、あらためて頭と体をリフレッシュして、会議などに集中出来ると。」

三井不動産は付加価値を付けたオフィスビルを運営することで入居率を高めたい考えです。
ビルディング事業三部の藤井拓也部長は次のようにおっしゃっています。
「ワーカーの方はどんなオフィスだったら行きたくなるのかというのを今まで常々考え続けてきて、それの一つの答えがこちらになっています。」

ただ働き方が変わったことで、最近は都内の一等地でも空室が増えています。
にもかかわらず、オフィスビルの建設が相次ぎ、来年には倍に、いわゆる“2023年問題”です。
更に2025年にも多くの大規模オフィスが相次ぎ竣工します。(こちらを参照)
こうした状況について、専門家でアイビー総研の関大介代表取締役は次のようにおっしゃっています。
「大企業を中心にテレワークが進んでいる中で、大量供給を迎えるというのは実は不動産業界として初めての事態ですので、「立派なビルです」だけでは、これからはテナントを誘致しにくい状況になってくるのかなと思っています。」

供給過剰とも言われる中、開業を迎える東京ミッドタウン八重洲、三井不動産の勝算はあるのでしょうか。
藤井部長は次のようにおっしゃっています。
「コミュニケーションの活性化や、それに基づいたイノベーションの加速だとかはリアルの場でないと実現出来ないものが数多くあると思っておりますので、我々がマーケットを作り出していくという感覚でおります。」

なお、東京ミッドタウン八重洲では上層階にホテルが入る予定で、低層階には小学校も入る予定だといいます。
ですからオフィスだけではない要素を沢山盛り込むことで他のオフィスビルとの差別化を図っているようです。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組を通して、これからのオフィスビルに関して、まず感じたことは以下の3つです。
・新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅勤務などリモートワークの可能性が確認出来たことによる、これからのオフィスビル需要の減少
・こうした中で、都内で2023年、2025年に大量にオフィスビルが供給されるが、何を根拠にこうしたオフィスブル建設が計画されたのか
・もし、新型コロナウイルスの感染拡大によるオフィスビル需要の減少分をカバー出来るだけの需要を見越していないのであれば、供給過多に陥るのではないか

なお、三井不動産は付加価値を付けたオフィスビルを運営することで入居率を高めたい考えといいます。
付加価値として、番組では具体的にはロボット、顔認証、フォログラムなどテクノロジーの活用、およびフィットネススペースといった内容をあげています。
そこで、これからのオフィスビルについて、企業、および個々の従業員に対して包括的な要件を以下にまとめてみました。
・生産性の向上をもたらす要因への取り組み
  AIやロボットなどの活用
  斬新なアイデアが出易い環境づくり
・生産性の向上を阻害する要因への取り組み
AIやロボットなどの活用
  災害時の事業継続マネジメント(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.772 『BCPからBCMへのアップデートの必要性』

そして、個々のオフィスビルを供給する業者さんは一般的に自ら建設するビル内での付加価値に重点を置いて建設されますが、個々の企業がビジネスを遂行するうえで、どのような環境が最も望ましいかという観点もとても重要です。
従って、オフィスビル単体ではなく、地域としての開発という視点がより重要になるのです。
なお、既に森ビルなどの総合ディベロッパーは以前からこうした観点での都市再開発に取り組まれております。

さて、プロジェクト管理の観点からすれば、“2023年問題”は今起きている問題ではないので、厳密には2023年に起きる可能性の大きいリスクと言えます。
そして、現在の経済状況が変わらないまま、仮にこのリスクが解消されたとしても、今度は既存のビルから新たに建設されたオフィスビルに企業は移転した後にその分入居率が落ちてしまいます。
ですから、こうしたリスク対応策として、アイデアよもやま話 No.5497 日本の玄関口、羽田空港エリアが様変わり!でも触れたように、海外企業が進出してきたくなるようなメリットをもたらす何かが求められるのです。
そのためにはやはり総合プロデューサー的な存在が求められるのです。
本来、こうした総合プロデューサーがデザインしたオフィスビル街を事前に積極的に国内外の企業にアピールしたうえでオフィスビルを開発すべきだと思うのです。

 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています