2023年01月25日
アイデアよもやま話 No.5487 中国進出企業の相次ぐ撤退に見る今後の中国経済の危うさ!
昨年9月29日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で中国進出企業の相次ぐ撤退に見る今後の中国経済の危うさについて取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

中国東北部、大連、旧満州国の玄関口で日本と関係の深い街です。
ここで30年以上ビジネスを続けている日本の中小企業があります。
松井味噌(兵庫県明石市)です。
中国向けに開発したラーメンスープが人気を呼び、売り上げは中国進出時、1990年の2億円から2021年には80億円に拡大しました。

2021年8月、大連にオープンした「小京都」、東京ドーム13個分の敷地に京都の街並みを再現したという商業施設です。
松井味噌はここにカフェやカレー店など、3つの飲食店を出店、新たなビジネスとして中国での飲食店事業に乗り出しました。
オープン当初は大勢のお客で賑わいましたが、日本色を前面に押し出したのがネット上で炎上騒ぎになりました。
以下はその投稿の一つです。
「日本に侵略された場所にこんな街をつくるのか、過去の痛みを忘れたのか」

こうしてオープンからわずか1週間で「小京都」は営業停止に追い込まれました。
閉鎖から5ヵ月後、2022年2月に再びオープンしましたが、施設名には京都の文字はなく、金石という現地の地名を使った「金石萬港」に変更されていました。
施設も中国国旗や中国風の提灯が並び、広場には漢服を着た女性が伝統楽器を演奏するなど、日本色を排除したのです。

松井味噌は運営会社から中国色を強めるため、中華料理であるラーメン店にするように指示されました。
更に松井味噌の松井健一社長は次のようにおっしゃっています。
「(店名を)「松井拉麺(ラーメン)」にすると言ったら、「「松井」は日本人の典型的なイメージがあって、使わないでくれ」と、いろいろクレームがつくので「味噌拉麺」という店名にしています。」

日本の外食企業では、このところ、新型コロナの影響もあり、居酒屋の「和民」など、中国市場から撤退している企業も少なくありません。
先日は、丸亀製麺が中国にあった全ての店舗を閉鎖しました。
振り回される中国ビジネスですが、今後の事業展開について、松井社長は次のようにおっしゃっています。
「配当の大きさから考えて取るべきリスクだと思います。」
「(中国は)14億人の市場で、日系ではまだ(味噌の会社は)2〜3社残っている気がします。」
「中国市場は一番魅力的だと思います。」
「収益が出たら新しい工場をつくって攻めていきたい。」

日本企業は苦労しながらも頑張っているようですが、日中間に横たわっている“政治リスク”は常に念頭にあるようです。
この取材をした記者の発言を以下にまとめてみました。
・松井社長が最も大きいリスクとして挙げたのは台湾有事である
・事態が動けば、中国で続けられない可能性があると松井社長は深刻な表情で話していた
・国交正常化50年を迎え、中国でも催しは開かれたが、中国メディアの報道は少ない上、祝賀ムードもあまり感じられない
・むしろ、市内には中国の建国記念日にあたる国慶節を祝う巨大な花のモニュメントが目立つ
・習近平国家主席が3期目を目指すとされる中国の最重要行事、共産党大会を控え、国内行事の方が盛り上がっている印象である
・今後の日本との関係性について、中国側はこれ以上の関係悪化は望んでいないと思われる
・8月には日本の秋葉国家安全保障局長が中国の外交トップ、楊潔篪氏(番組放送時)と7時間にわたり会談した他、岸田総理が新型コロナに感染した際には習近平国家主席自ら見舞いの電報を送るなど、歩み寄りの兆しも見せている
・今後は11月にインドネシアで開かれるG20で、約3年ぶりとなる対面での首脳会談が関係改善の糸口となりそうである

日中国交正常化50周年の中で、中国はハイテクの成長が著しい期間がありましたが、こうした状況について立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は次のようにおっしゃっています。
「最後にまとめさせていただいたのが、米中巨大IT企業の時価総額(こちらを参照)で、米国はGAFA、中国はアリババ、テンセントということですけども、左の2019年4月の数字に着目していただきたいのが、アリババ、テンセントの時価総額はメタ、当時のフェイスブックを超えていたわけですね。」
「それが今や、GAFAの株価はメタ以外は上がりましたけども、アリババ、テンセントは大きく既存している。」
「やはり、背景は米中新冷戦、それから政府の統制強化ということで、やはり中国は政府の政策と意思しだいで全て変わってしまうということが言えるんじゃないでしょうかね。」
「(今、中国の景気減速が懸念されていますが、それも政府が自らしているということになるのではという指摘に対して、)そういうことになりますね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組や関連ネット記事を参考に今後の中国経済の危うさについて以下にまとめてみました。

(融通の利かない政策)
・行き過ぎたゼロコロナ政策の継続(こちらを参照)
⇒ 経済活動の停滞(参照:アイデアよもやま話 No.5329 ゼロコロナ政策で中国経済に変調!
中国での需要鈍化や工場停止によるグローバルサプライチェーンの混乱
⇒ 中国進出企業の中国からの相次ぐ撤退
国民の大きな反発によるゼロコロナ政策の急な転換による社会の混乱
⇒ 多くの国民に反政府の意識を高めさせ、デモなどの示威行動の有効性を認識させた

(共産党政権を脅かす存在を許さない共産党第一主義)
・政府の政策と意思しだいで全てが急変するリスクが高い
・巨大化したIT企業、アリババ、テンセントへの統制強化
 ⇒ アリババ、テンセントの株価暴落

(習近平国家主席は“裸の王様”状態)
・習近平国家主席の3期続投が確定したが、最高指導部の顔ぶれはイエスマンばかり
 ⇒ 習近平国家主席の過ちを誰も指摘出来ないの大きな判断の過ちが見過ごされる

(覇権主義の世界展開)
・南シナ海での相次ぐ違法な人工島の建設(参照:アイデアよもやま話 No.5468今や無法地帯化している国際社会!
・アフリカ諸国や太平洋の島しょ国での覇権拡大(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.766 『中国が南の島しょ国での覇権拡大を進める真の狙いとは』
 ⇒ アメリカの対中脅威の意識を高め、中国への様々な制裁が実施された

(米中両陣営の結束の強化)
・アメリカを中心とする民主主義陣営の結束の強化
・中露陣営の結束の強化(参照:アイデアよもやま話 No.5474 上海協力機構の首脳会談にみる、あなどれない中露陣営の動き!
 ⇒ 米中の新冷戦構造が確立されつつある
グローバル経済から閉鎖経済へのシフトの流れが加速する

こうしてまとめてみると、習近平政権は、以下の観点から見ると、長期的には経済の危うさが高まると思われるのです。
・自らの誤りを認識しても、対外的に認めることが出来ず、状況の変化に速やかに対応出来ない
・覇権主義の世界展開により、民主主義陣営の中国に対する脅威の意識が高まり、民主主義陣営による様々な観点からの中国への制裁が続く
・政府の政策と意思しだいで全てが急変するリスクが高いことから、中国進出企業は生産拠点をインドや東南アジア諸国など他の国にシフトする可能性が高くなる
・同様に中国国内のIT関連を中心とした国際的な大企業も存分に事業に取り組むことが出来ない

残念ながら、習近平政権では習近平国家主席の“世界制覇”を志向する意思が強いので、国連のルール(人権の尊重など)の遵守も民主主義陣営への歩み寄りもほとんど期待出来ません。
ですから、次の政権誕生までは何とか習近平国家主席の暴走を食い止めるべく、民主主義陣営の国々が一丸となって経済的にも軍事的にも中国に優位に立てるかたちで習近平国家主席に対峙することが求められるのです。
そのためにも、ロシアによるウクライナ侵攻を何としてもウクライナに有利になるかたちで終息させることがとても重要なのです。
ですから、日本の現政権にも是非こうした観点からウクライナへの支援を積極的にしていただきたいと思うのです。

 
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